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2017.09.07

横山光輝『仮面の忍者赤影』第1巻 TV版から独立した忍法合戦の面白さ

 ゆえあってしばらく横山光輝の時代漫画を少しずつ取り上げていきたいと思います。今回はTV特撮番組で大人気となった『仮面の忍者赤影』の漫画版、TV版の金目教編に当たる部分であります。

 時は元亀2年(1571年)、近江の国・江南地方で金目教が流行。この動きに不穏なものを感じた木下藤吉郎の配下・竹中半兵衛は飛騨から腕利きの忍びを呼び寄せた……
 という設定はTV版と同じ、というより本作がTV版の原作という位置づけのため、ある意味当然ではあります。しかしこの漫画版と「あの」TV版でどの程度共通点があるのか――と思えば、これがかなりの部分は共通しているのです。

 味方側は赤影と青影のみと少々寂しいところですが(青影のキャラクターも、赤影より少し年下というところで、対等の口ぶり)、敵方の幻妖斎と霞谷七人衆は健在。
 TV版は鬼念坊・蟇法師・傀儡甚内・悪童子・闇姫・朧一貫・夢堂一ツ目だったものが、こちらでは朧一貫、鬼念坊、悪童子、土蜘蛛、夢堂典膳、ガマ法師、傀儡陣内と、闇姫と土蜘蛛が入れ替わり、夢堂一ツ目と典膳の異同はあるものの(ただし典膳も隻眼)、思った以上の結果であります。

 やっぱり闇姫は伊上キャラなのかなあ……というのはさておき、横山忍者漫画には非常に珍しい「怪獣」――ガマ法師の大ガマが登場するのは興味深いところではあります(しかもTV版ではいつの間にかフェードアウトした蟇法師、漫画版では大ガマを失ってもかなり強い!)
 もっとも、それ以外の超兵器の数々はさすがに登場せず、金目像もある意味「合理的」な仕掛けとなっているのは、これは仕方ないと言うべきだとは思いますが……


 と、TV版との異同ばかり注目してしまいましたが、本作は独立した一個の漫画として読んでも、流石というべきか実に面白いのであります。
 冷静に考えると話の内容はほとんど最初から最後まで忍者同士の忍法合戦、舞台となるエリアもかなり狭いのですが、しかしその忍法合戦が、もう名人芸とでも言いたくなるような呼吸で成り立っているのです。

 一切謎の技で攻撃してくる敵の(技の)正体を如何に割り出すか、そしてその上で如何に現在の状況を生かしつつ反撃を行うか。
 こうしてみるといわゆる能力バトルのパターンですが、それをスピーディーかつダイナミックに展開していく様は、このジャンルの先駆――というより教科書のような完成度であります。

 しかしそれもそのはず、本作の直前まで作者が連載していたのは忍者漫画の金字塔『伊賀の影丸』。
 忍者もののフォーマットを少年漫画に落とし込んだ同作は、終盤は比較的そのフォーマットから離れた内容になっていくのですが、本作ではそこで練り上げられたものを踏まえた上で、忍者同士のバトルを生き生きと描いているのが実に良いのです。

 それでいて、幻妖斎の背後の黒幕に実在の人物を配置することで、きっちりと時代ものとしての目配せもなされているのが、また心憎いのであります(もっとも、この人物の進退は史実とは異なるのですが)。


 どうしてもTV版と比較してしまうものの、しかし忍者ものとしての骨組みと肉付けをしっかりと生かすことで、独自の面白さを描いて見せた本作。
 この辺り、赤影という作品の魅力がどこにあるのか――という点にも関わってくるようにも思いますが、何はともあれ今読んで見ても十分面白い作品であったことを再確認できたのは収穫であります。


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