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2017.09.29

横山光輝『仮面の忍者赤影』第2巻 時代背景を有機的に活かした忍者アクション

 先日ご紹介した漫画版『仮面の忍者赤影』の後半部、第2部「うつぼ忍群の巻」と第3部「決戦うつぼ砦の巻」であります。意外にもと言うべきか、比較的TV版と近い展開であった第1部に対し、こちらはほとんど別物と言ってよい展開となっております。

 金目教とその背後に潜む幻妖斎と霞谷七人衆との戦いに勝利した赤影と青影。その後、木下藤吉郎改め羽柴秀吉が預かる長浜城を守ることとなった赤影たち飛騨忍群に迫る五つの影が――
 と、長浜城を舞台に、赤影・青影ら飛騨忍群と強敵・うつぼ五人衆――不知火典膳・烏左近・不動金剛丸・猫目の陣内・山彦の幻十――の攻防戦を描くのが第2部「うつぼ忍群の巻」であります。

 そして第3部「決戦うつぼ砦の巻」では、うつぼ五人衆を赤影たちに倒され、怒りに燃えるうつぼ忍群頭領・むささび道軒が飛騨忍群の里を襲撃、里を取り戻すために急行した赤影・青影と激闘を繰り広げることになります。

 この漫画版後半部分の敵となるうつぼ忍群ですが、TV版の第2部でまんじ党の中核となる七人衆が名乗っていたのがこの名前。しかしTV版と漫画版で同じなのはほとんどこの名称のみ、という状態です。
 唯一、むささび道軒は、TV版のまんじ党七人衆にも同名の忍者がいたものの、ほとんど完全に別人。また、まんじ党七人衆には不知火「典馬」が、さらにTV版第4部の魔風十三忍に不動金剛丸が登場しますが、こちらも別人であります。

 というわけで、キャラクター面では(少なくとも名称は)TV版とほとんど共通だった第1部に対して、こちらはほとんど別ものとなっているのが、面白いといえば面白いところであります。
(もっとも、TV版のうつぼ忍群は、うつぼ忍群なのかまんじ党なのか今ひとつわかりにくかったのですが……)

 しかし第2部冒頭で、うつぼ忍群に仕事を依頼しに来た侍たちが一人を残して抹殺され、そして依頼を聞いた道軒に最後の一人も――という展開は、TV版第27話での根来忍者への依頼シーンとほとんど同じ。
 さらに第3部の、本拠地である飛騨の里を敵に奪われた赤影たちのレジスタンスという内容は、これはやはりどう考えてもTV版第4部魔風編に重なってきます。

 このあたり、ほとんど別物である漫画版とTV版で部分的に重なるものがあるのは、なかなかに興味深いものがあります。


 と、TV版との異同ばかり述べてしまいましたが、第1部同様、この後半部分が、独立した忍者漫画としてもきっちり面白いのは言うまでもありません。

 第2部の自陣に迫る敵忍者との攻防戦というシチュエーションは、『伊賀の影丸』にも何度かありましたが、しかしあちらが太平の江戸時代が舞台であったのに対して、こちらは戦国時代真っ只中。
 まさしく戦時の只中における城の攻防戦は、全く意味合いが異なってくるわけで、その辺りの緊迫感がこの第2部の最大の魅力でしょう。

 赤影・青影以外にも、白影・黒影・紅影といった飛騨忍群の仲間たちが共に戦う集団戦テイストも、このシチュエーションあってこそのものであることは間違いありません。
(しかし漫画版では白影はここだけの登場なのが残念)

 そして第3部の、以前の敗北に恨みを持つ敵が、自分たちの里もろとも滅ぼしにかかるというのも、こちらはさらに戦国時代ならではのシチュエーションという印象があります。
 以前に倒した敵の残党が逆恨みして……というのは『伊賀の影丸』の「土蜘蛛五人衆の巻」でありましたが、非戦闘員まで含めて根絶やしにかかるという殺伐極まりないやり口は、やはり生きるか死ぬかの時代ならではというほかないでしょう。

 そして(命がかかったものではあるものの)どこかゲーム性の感じられるトーナメントバトルに対し、このレジスタンスは、大義名分があるだけに、より一層赤影と青影の戦いに緊迫感と凄惨さが感じられる――というのは、今回読み直してみての再発見であります。


 いずれにせよ、TV版とは似て非なる物語となりつつ、戦国時代という舞台を、忍者アクションという作品内容に有機的に活かしてみせた本作。
 これまでどうしてもTV版の印象が強すぎたのですが、こうしてみれば第1部も含め、やはり作者ならではの優れた忍者漫画であることは間違いないのであります。


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