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2017.09.13

和月伸宏『るろうに剣心 明治剣客浪漫譚・北海道編』 第一幕「明治十六年 神谷道場」

 ついに『るろうに剣心』が帰ってきました。18年前(!)の完結時からその構想が語られてきた北海道編――それがついに描かれる日が来たのです。お馴染みの面々に、昨年発表された前後編に登場した少年少女も加えて始まった物語は、ブランクを全く感じさせぬ、快調な滑り出しであります。

 雪白縁との死闘の果て、自らの贖罪の生の在り方を悟り、そして薫と結ばれてひとまずは戦いの生から退いた剣心。それから五年後、一子・剣路が生まれ、神谷活心流道場は盛況と、まずは穏やかな毎日であります。
 そんな中に転がり込んできたのが、共に前科一犯の少年・明日郎と阿爛――というのは昨年掲載された『明日郎前科アリ』で描かれた内容ですが、北海道編は、このエピソードを踏まえて始まることになります。

 『明日郎前科アリ』で志々雄一派の残党に加わり、明日郎に接近してきた少女・旭。実は元々残党の人間ではなく、謎の組織(?)の命を受けて潜入していた彼女ですが――そこから抜けようと組織の人間と言い争っていたところに割って入ったのが、偶然居合わせた明日郎であります。
 当然ただですむはずもなく、警官も集まる大騒動となったところに駆けつけた剣心。志々雄の愛刀・無限刃に突き動かされるように襲いかかる明日郎に対し、剣心は久々にあの刀を手にすることになります。

 そんな騒動の末、神谷道場に迎え入れられることとなった旭。そして混乱の中、組織の人間が落としていった封筒に入っていたのは、既に死んだと思われていたある人物が写った写真でありました。
 その裏に記された「北海道 函館」の文字を手がかりに、剣心たちは北海道に渡ることを決意することになります。

 そしてその函館では、警察の一団を全滅させた「逆賊」に対し、軍隊が投入され……


 と、早くも色々と盛り上がる連載第1回。賑やかで平和な神谷道場の様子、新顔である明日郎たちの活躍(?)、久々の剣心の飛天御剣流に、ラストにはあの男も登場……と、実に「うまい」としか言いようのない展開であります。

 何よりも嬉しいのは、剣心・薫・弥彦が、それぞれに時を重ねながらも、しかし全くあの頃と変わらぬ姿で――それはもちろんビジュアルだけでなく、キャラクター性も含めて――登場してくれたことでしょう。
 彼らに再び会えるのは嬉しい、しかしあの頃と全く変わってしまっていたら――という不安は、かつての愛読者が誰もが一度は抱いたかと思いますが、全くの杞憂でした。

 もっとも、一つだけひっかかったのは、暴走する明日郎に対して、剣心が弥彦から逆刃刀を受け取って立ち向かったことですが――逆刃刀の継承は、過去から現在、そして未来への時代の流れを象徴するものであった(と思われる)だけに、これは少々残念。
 もっともこれは、過去の亡霊は過去の人間が相手をするということだと考えるべきでしょう。何よりも第1話に剣心の活躍が描かれないわけにはいかないですし!

 閑話休題、そんな懐かしさだけではなく、もちろん新たな物語ならではの要素も実に気になるものばかりであります。
 旭を縛ってきた(どうにも後ろ暗いとしか思えない)謎の組織、軍隊まで投入されるような巨大な敵、そして何よりも、全く予想もしなかった形で登場したあの人物……
(特に最後の要素は、まだこの膨らませ方があったか、と感心)


 何はともあれ、物語は動き始めました。
 自分の作品には極めて誠実な作者のこと、本当に色々あってハッピーエンドを迎えた物語を再び語り始めることには、相当悩まれたのではないかと思いますが――しかしそれでも新たな物語が始まったということは、それが安易な続編ではなく、かつての、そしてこれからの読者を決して失望させないものとなることの証とも感じます。

 そしてそこで描かれるものは、間違いなく、重い過去を背負い、苦しい現在を生きつつも、輝く未来を目指すことを止めない人々の姿であると――僕は信じています。


 ちなみにこの北海道編に合わせて、作者の公私にわたるパートナーである黒碕薫による小説『るろうに剣心 神谷道場物語』が掲載される模様。
 今回描かれたのは剣心と薫の婚礼で起きた大騒動ですが、あるキャラの滅多にないような側面が見られてなかなか愉快な内容でした。

 本編では描けなかったようなエピソードを拾っていく内容となるのではないかと思いますが、剣心たちの意外な素顔を描く物語として、こちらも大いに楽しみにしております。

『るろうに剣心 明治剣客浪漫譚・北海道編』(和月伸宏 ジャンプSQ 2017年10月号) Amazon
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