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2017.10.07

『お江戸ねこぱんち 赤とんぼ編』(その一)

 めでたくリニューアル第三弾を迎えた『お江戸ねこぱんち』誌。今回も数多くの作品が収録されていますが、ファンタジー色の強い作品も少なからず含まれているのが嬉しいところであります。ファンタジーも非ファンタジーも魅力的な作品の多い今回ですが、特に印象に残った作品を取り上げます。

『平賀源内の猫』(栗城祥子)
 かの平賀源内とその身の回りをする赤毛の少女・文緒、猫の「えれきてる」が様々な事件に挑む連作――今回は源内とは旧知の大奥御年寄・玉沢の強引な依頼で、源内と文緒は大奥に潜入捜査をする羽目になります。
 その依頼とは、大奥の薬棚から盗まれた毒薬とその犯人捜し。周囲から赤毛をからかわれながらも、えれきてるに助けられて大奥で働く文緒ですが……

 正直に申し上げれば、本作には時代ものとして見ればかなり乱暴なところがあります(文緒が源内への人質として大奥に連れ去られ、源内が謎を解けなければ大奥に一生奉公させられるという設定はさすがに……)。
 それでも本作が面白いのは、この大奥での毒薬探しというメインエピソードに、源内が売り出そうとしていたびいどろの鏡、文緒のコンプレックス、そして玉沢の過去と人生哲学といった要素が有機的に結びついて、一つの物語として成立しているからでしょう。前回同様、話作りの巧みさが光る作品です。


『猫ノ目夜話』(ほしのなつみ)
 気がつけば『お江戸猫ぱんち』最古参の本作。剣術道場の跡取りの青年・榛馬と黒猫の夜刀、眼帯(包帯)美少女の輝久のトリオのもののけ退治が今回も描かれることになります。

 化け猫が出没するという噂の空き家にやってきた二人と一匹。しかし夜刀が早速謎の妖に攫われ、後を追った二人は長屋の地下の異空間で、怪事の正体と出会うことに……

 と、書きようによってはかなり怖い話になりそうな展開ですが、登場するもののけがまた実に可愛い。
 結末は予想できるものの、妖の正体にも一ひねりあり、安定の一作です
(ただ、化け猫屋敷ネタは以前にもあったような……)


『猫と召しませ古着市』(須田翔子)
 柳原土手に立ち並ぶ古着屋の中で、猫の紬と一緒に店を続けてきたお染婆さん。いよいよ明日には店を畳もうという彼女が出会ったのは、奉公先のお嬢さんの着物を汚して怒られ、泣いていた少女で……

 と、古着をテーマにした人情ものである本作。満足なものを着ることができず、穴だらけの着物を着た少女に、古着の良さを教えるとお染婆さんがツギを当てて――という物語自体はシンプルなのですが、古着一つ一つに込められた元の持ち主の物語が、少女に元気を与えるという展開が気持ちいい。

 何よりも、穴だらけだった着物が、色とりどりの様々な端切れが当てられた――様々な人々の想いが詰まった着物になっていく様を、ビジュアルとして描いてみせるのが実に良いのです。
 これは漫画でしか見せられない物語、漫画だからこその表現と言うべきでしょう。

 柳原は今で言えば万世橋から浅草橋までの辺り。江戸時代は本作のように古着屋が並んでいたそこが、今では繊維街となっているという事実の陰には、本作のような物語があったのかもしれないと思えば、何だか楽しくなってくるではありませんか。


『お江戸むらさき料理帖』(さかきしん)
 嫁入りすることになったが花嫁修業は全くのキヨ。家代々のならわしで、母からお目付役の猫・むらさきをつけられた彼女ですが、突然むらさきが喋りだし……

 漫画・小説を問わず最近では定番の料理ものの本作ですが、ユニークなのは主人公に料理指南をするのが喋る猫であること。
 わずか8ページの作品のため、内容的にはあっさりとしていますが、絵柄の可愛らしさもあって、妙に印象に残る作品です。


 今回はかなりの充実ぶりのため、残りは次回紹介させていただきます。


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