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2017.10.14

仁木英之『くるすの残光 最後の審判』の解説を担当しました

 この12日に発売された仁木英之『くるすの残光 最後の審判』の解説を担当させていただきました。神の力を授けられた切支丹の聖騎士たちと、南光坊天海率いる幕府の切支丹討伐部隊・閻羅衆との最後の戦いが描かれる、シリーズ第5巻にして完結編の文庫化であります。

 島原の乱で討たれ、神の力を秘めた七つの聖遺物を奪われた天草四郎。四郎に異能を与えられ、彼の復活を目指す切支丹の聖騎士たちは、江戸に潜伏して聖遺物奪還を目指すものの、その前に怪僧・南光坊天海が立ち塞がります。
 聖遺物を様々な者に与え、その力で切支丹を滅ぼさんとする天海。かくて、植木職人見習いに身をやつす少年・寅太郎をはじめとする聖騎士たちは、江戸をはじめとする各地で、聖遺物の力を操る者たちと激闘を繰り広げることになります。

 切支丹のみならず、この国の古き神々をも平らげんとする天海との戦いは、山の民や海の民らをも巻き込み、多大な犠牲を払った末に聖騎士たちが勝利を手にしたかに見えたのですが……
 しかし天海が姿を消した後も閻羅衆による弾圧は続き、切支丹たちは解放されるどころか追い詰められる一方。思わぬことから周囲に正体が露見してしまい、追われる身となった寅太郎たちに手を差し伸べたのは、あの由井正雪でした。

 自らも聖遺物を持ち、そして幕府の手からこぼれ落ちる者を救おうとする意思を持つ正雪とともに戦うことになる寅太郎を待つ運命は……


 というわけで、大団円に相応しい展開が次から次へと描かれる本作。シリーズ最終巻ということで、シリーズの総括として解説を書かせていただきました。
 しかしそれだけでなく、作者の作品全体、特に『僕僕先生』『千里伝』『魔神航路』といった作者のファンタジー活劇に通底するものについても触れております。

 その内容についてはこれ以上ここでは書きませんが、これまであまり指摘されたことはない点ではないかなあ――と自画自賛しております。
 そしてもう一つ、本作が伝奇時代小説である意味、作者が伝奇時代小説を書く意味についても、触れさせていただいております。

 ぜひ、お手にとってご覧いただければと思います。


 さて――ここでもう一点、このブログにおいては述べなければならないことがあります。
 実はこのブログでも以前に(単行本刊行時に)本作を取り上げているのですが、その際には、かなり厳しい評価をしておりました。

 実は今回解説を担当させていただくに当たり、その時のことがいささか気になっていたのですが――再読してみれば、これが僕の読みの甘さであったことがはっきりとわかり、これはこれで頭を抱えることに……
 もちろん、その時のブログの文章を修正したりはいたしませんが、こうして解説の機会を与えていただいたことにより、本作の魅力をしっかりと再確認することができて本当に良かった、と思います。

 解説(に限らずこのブログの文章もですが)を書く時には、もちろんあらかじめある程度の先の見通しを持っているわけですが、しかしそれでも実際に文章を書いているうちに、改めて自分の中から湧いてくるものがある……
 それは自分の考えが言語化されたということであり、これまで何度も経験してきたところですが、今回改めてその素晴らしさを再確認した次第です。


 そんな言い訳と自己満足はさておき、この文庫化を機会に、改めて『くるすの残光』の、作者の時代伝奇小説の魅力に触れてくださる方が増えれば――そして少しでもそのお手伝いができれば――これに勝る喜びはありません。
 どうぞよろしくお願いいたします。


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