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2017.10.26

若林不二吾『風雲ライオン丸』 第三の、時代劇画としての風雲ライオン丸

 漫画版『風雲ライオン丸』は、先日紹介した一峰大二版だけではありません。本作はうしおそうじが若林不二吾のペンネームで執筆した作品――TV版の設定・ストーリーを踏まえつつ、繊細かつ迫力あるタッチで描かれた、もう一つの漫画版であります。

 現在ではピープロ社長として語られることがほとんどであるものの(かく言う私もこちらの知識しかなかったのですが)、元々は漫画家として大活躍していたうしおそうじ。
 本作はそのうしおそうじが自らの手で自作を漫画化した作品であります。

 連載媒体はサンケイ新聞、一回一ページという新聞連載漫画にはままある形態ですが、しかし本作のような内容の作品をこの形で描けるのか……? という疑問は、本作を前にすれば愚問であることがわかります。
 毎回一ページをフルに使ってテンポ良く物語を展開させると思えば、時に思い切った大ゴマで決めてみせる。緩急自在に描かれる物語は、今読んでみても実に面白いのであります。

 そして繊細で、かつきっちりと細部まで描き込まれた絵柄は、太い描線の一峰作品とは全く異なる味わい。
 変身ヒーローものである以上に、時代劇画としての空気を色濃く漂わせる画は、こういうコミカライズが見たかった、という気持ちにさせられます。


 さて、そんな本作ですが、先に述べたようなスタイルの連載であるためTV版の忠実な漫画化とは当然いきません。必然的にダイジェストとなります。

 現在、角川書店版の『快傑ライオン丸』第2巻に収録されている前半部分は、TV版の第1話(ネズマ)と第3話(ドカゲ)の物語のミックスに第2話の豹馬登場を絡めてライオン丸誕生を描く内容。
 同じく『風雲ライオン丸』に収録の後半は、第11話(ザグロ)の物語をベースに豹馬の死を描き、並行して第15話のゾリラが最強怪人として開発される様が描かれ、そこから一気に最終話に突入――という展開です。

 これを見ればわかるように、ライオン丸登場までを非常に丹念に描くのが本作の特徴の一つであります。
 開幕しばらく描かれるのは、TV版第1話で描かれた獅子丸の兄・弾影之進の苦闘と敗北。実に獅子丸の登場は開幕20ページほどを過ぎてからというペースなのですから(志乃・三吉兄弟と出会うのは影之進の方が先)。

 そしてライオン丸登場は70ページを過ぎた頃(これまた変身はブラックジャガー(本作ではジャガーマン)の方が早い)。
 上に述べた連載形式のことを思えば、実に二ヶ月以上経ってからの変身というのはずいぶんと思い切ったものですが、そこに至るまでの丹念な描写の積み重ねが、大きなカタルシスを呼ぶのであります。

 そして後半はTV版の内容を踏まえつつも、かなりの部分でオリジナルの展開を用意しているのが嬉しいところです。
 特に、豹馬を斃した後、相棒のズクを獅子丸に倒されて本拠に逃げ帰ったザグロ(ここでアグダーに愛想を尽かされて放置されるのがおかしい)が、怪人軍団を率いて獅子丸に挑むも、アグダーから謀反人扱いされて――というオリジナル展開が面白い。

 一方でその後のゾリラやアグダーとの決戦以降は驚くほど駆け足なのが残念ですが、TV版とは異なるアグダーの真の狙いや、志乃と三吉の父の行方を絡めての結末は悪くありません。特に最終回、一ページぶち抜きで描かれる志乃の美しい姿は強く印象に残ります。


 そんなわけで、総じて『風雲ライオン丸』という物語を再構成して、時代劇画として再構成してみせたという印象の強い本作。
 『風雲ライオン丸』という作品の様々などぎつさを巧みに薄めつつ、しかしその美しく迫力ある画で補ってみせた、第三の『風雲ライオン丸』として満足できる作品です。

 もっとも、この漫画版でも錠之助の印象は薄く、豹馬と立ち会って片目を潰されるという展開は面白いものの、やはり突然出てきた正体不明の男、という印象は否めないのが残念なところ。
 TV版とは異なり、最終決戦に参加できたのが救いですが……(ちなみにこの時、何故か両目が揃っている)


 ちなみに、本作、冒頭のマントルゴッドとアグダーの会話の中で、マントル一族が虫の生命力と人間の知恵を混ぜ合わせて(誰が?)生まれた存在と語られているのが興味深い。
 また、獅子丸のポンチョが母の形見で、ライオン丸もポンチョの導きが作用しているように感じられる描写もあり、サラリと気になる内容が盛り込まれている作品でもあります。

『風雲ライオン丸』(若林不二吾&うしおそうじ カドカワデジタルコミックス『快傑ライオン丸』第2巻・『風雲ライオン丸』所収)
快傑ライオン丸(2) (カドカワデジタルコミックス)風雲ライオン丸 (カドカワデジタルコミックス)


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