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2017.10.06

一峰大二『風雲ライオン丸』 巧みなチョイスによる名コミカライズ

 ピープロ作品のコミカライズはこの人、とも言うべき一峰大二による漫画版『風雲ライオン丸』であります。「冒険王」誌及び「別冊冒険王映画テレビマガジン」誌に掲載されたもの(及びサンケイ新聞に連載された若林不二吾版)を収録した角川書店版の単行本をベースに紹介いたします。

 マントルゴッドの地下帝国に兄を殺された弾獅子丸。彼は兄の遺言を胸に、背のロケット噴射でライオン丸に変身、父を探して旅する志乃と三吉姉弟とともに、マントル一族に戦いを挑む……

 というTV版の内容は基本的にそのままに描かれるこの漫画版二作。
 どちらも月刊誌で半年間の連載ということで各6話構成、それぞれ内容はパラレルということも考慮に入れても、全25話のTV版の全話再現は当然不可能なのですが――しかし巧みなエピソードチョイスで、TV版とも独立した作品として楽しめるのはさすがと言うべきでしょう。

 「冒険王」版で描かれるのは、バラチとネズマ(TV版では第1・2話(以下同))/シャゴン(第4話)/ズク(第10話)/ザグロ(第11話)/ズガング(第18話)/トビゲラ(第23話)。
 一方、「別冊冒険王」版ではネズマ(第1話)/ガー(第5話)/ガン(第12話)/ゾリラ(第15話)/ヤゴ(第16話)/トビゲラ(第23話)と、冒頭とラストは仕方がないとはいえ(しかし何故トビゲラかぶり……)、結果としてバラエティに富んだ内容であります。

 この2バージョンのうち、「別冊冒険王」版は、一話あたり約20ページと少なめなこともあり、内容的にはかなりシンプル(黒影豹馬も登場しない)なのですが、第4回までの冒頭8ページを飾るカラーページの迫力が素晴らしい。
 特に第1回の真っ赤な夕日を背景に荒野を走る幌馬車、第2回のガーの鱗粉で溶けていく森、第3回のガンの弾丸で溶かされる老人と家など、凄まじいインパクトであります。

 そしてシンプルと言いつつも、ヤゴの回はTV版を相当忠実に再現。掟のために死んでいく忍者たちを目の当たりにしつつ、恥ずかしくても苦しくても生きていくことが大事なんだと語る獅子丸の姿は、TV版同様、強く印象に残ります。


 一方、「冒険王」版は、一話あたり約30から40ページということもあり、各回の物語の充実度はかなりのもの。内容的にはドラマよりも怪人との攻防戦がメインなのですが、そのアクション描写が実にいい。
 ロケット噴射で軽快な立体機動アクションを見せる獅子丸、岩をぶち破りながら怪人二人をまとめて叩き斬るライオン丸など、TV版では技術的な制約で描けなかった描写が、きっちり格好良いのです(あの微妙だったズガングの逆立ち鎖鎌まで……)。

 その迫力ある描写が最大限に発揮された場面の一つが、ブラックジャガー(漫画版ではジャガーマン)の最期でしょう。TV版同様、ザグロに挑んで倒されるのですが――こちらでは矛のような巨大な刃が脳天に半ばまで食い込んだ上に、散弾攻撃で五体バラバラになるというインパクト満点の最期。
 いやはや、これを読んだ後でTV版を観ると、ずいぶんあっさりと感じられてしまうのが恐ろしいところです。

 そしてもう一つ、この漫画版ならではの迫力ある展開が楽しめるのは最終回であります。
 ついに地下帝国の本拠に突入し、マントルゴッドと対決する獅子丸。宙を舞いながらマントルゴッドの火球を躱す、次第に追い詰められていく獅子丸に、囚われの謎の男の助言で春の短刀と冬の太刀を合わせればほとばしる稲妻!

 そして稲妻による洞窟の崩落を利用してのライオン千じん落としがガーンとモロにマントルゴッドの顔面に炸裂! これ、映像でも観たかった! と言いたくなる、実に痛快なフィニッシュなのです。
 ちなみに囚われの謎の男は志乃と三吉の父。こちらではマントルの秘密を隠していたために捕らえられていたということで
悪魔に魂を売ってはいないようであります。


 この最終回の内容や上記のチョイスからもわかるように、実はこの一峰版はTV版の曇りエピソードをほとんど外しているために、TV版とはまた異なる印象になっているのは事実ではあります。
 それでも『風雲ライオン丸』としての独特の味わいはしっかり残っているのはのは、コミカライズの名手ならではの妙技でしょう。

 TV版の破天荒な世界観と作者の野太い描線がマッチした、名コミカライズであります。


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