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2017.10.08

『お江戸ねこぱんち 赤とんぼ編』(その二)

 『お江戸ねこぱんち』誌、リニューアル第三弾の作品紹介の後編であります。今回もなかなかバラエティに富んだ作品が並びます。

『ねこよめ』(下総國生)
 前号でも印象に残りましたが、今回も絵のうまさという点ではトップクラスの作者による本作は、物語の点でも印象に残る佳品であります。

 子供の頃から出入りしていた屋敷で、木から落ち掛けた猫を助けた植木職人の七蔵。翌朝、彼が一人暮らす長屋で目覚めてみれば、見覚えのない美しい娘が家事をしていたのであります。
 自分は助けてもらった猫の玉だと名乗る彼女の言葉に半信半疑でありつつも、いつしか惹かれていく七蔵ですが……

 この雑誌にはしばしば登場しますが、猫が美女に化けて恩返しにやってくるなどということは、現実世界ではあり得ないお話であります。七蔵もそれを十分に理解した上で、玉が最近姿を見せない屋敷の一人娘と睨み、敢えて突き放すのですが――そこからの一ひねりが、もの悲しくも何とも切ない。
 七蔵の視点からすっぽりと抜け落ちていた存在が悲しくも大きな意味を持って立ち上がってくる結末を読んでから、もう一度タイトルページを見れば、その切なさがさらに強く立ち上がってくる――そんな作品であります。


『のら赤』(桐村海丸)
 すっかり定着した感のある、遊び人の赤助ののんべんだらりとした日常を描くシリーズである本作。しかし、今回描かれるのはなんと赤助の過去であります。

 実は歴とした武士、虹藤家の五男坊だった赤助。その頃から変わらず、のら猫のようにあっちこっちにほっつき歩いていた赤助ですが、ある日、家が藩命で解散(という表現はどうなのかしら)することになって……

 切ない物語も、さらりと良い意味で軽く描く本シリーズらしく、今回も良い意味で物語があるようなないようなエピソードであります。
 そんな中で、赤助と他家に養子に出る兄との会話、そして現在、赤助を可愛がる養父の言葉に、何とも言えぬ味わいがあります。赤助はこれまでも、これからも変わらないのだろうな――そんなことを苦笑まじりに考えさせられるお話。


『猫鬼の死にぞこない』(晏芸嘉三)
 『物見の文士』シリーズを手がけてきた作者の新作は、一種の変身ヒーローもの(!?)とも言うべき異形の主人公の活躍を描く物語の開幕編であります。

 半年前、任務中に猫を助けて爆発に巻き込まれ、片手片足が不具となった元隠密・彪真。若隠居状態の暮らしを退屈混じりに過ごす彪真ですが、そんな彼には不可解な記憶がありました。
 爆発の直後、本来であればとても助からないはずの深手を負っていた彪真。そんな彼の前に現れた猫鬼を名乗る美女・芙蓉は彼にしたのは……

 そんなある日、近所の子供を襲う謎の怪物。子供を救うため、怪物と対峙して窮地に陥った彪馬の中で、異形の力が目覚めることになります。

 突然現れた怪物の正体は、そしてその秘密をも知るらしい芙蓉は何者なのか――第1話ということもあって、冷静に考えるとわからないことだらけの今回。
 それでも、クライマックスで彪馬が見せる姿――異形でありつつも、それでいて人から離れないそのビジュアルなどなかなか格好良く、今後の展開に期待させられます。本誌には珍しい方向性の作品だけに特に……


 というわけで最近では一番の充実度が感じられた今号の『お江戸ねこぱんち』。
 次号の発売は2月1日とのことで少々先ではありますが、逆にいえばそれだけ待てば次の号が読めるということ。その日まで楽しみに待ちたいと思います。


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