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2017.11.02

さおとめあげは『零鴉 Raven 四国動乱編』第1巻 妖怪+忍者+変身ヒーロー しかし……

 『TIGER & BUNNY』などで知られるアニメ監督・さとうけいいちが原作ということで話題の本作、戦国時代の四国を舞台に、奇しき運命から人間と妖怪の間に立つ者「零鴉(レイヴン)」となった若き忍者の戦いを描く異色の漫画であります。

 時は天正10年(1582年)、戦国時代の動きを全く変えることとなったあの年――故あって八十八箇所を逆打ち巡礼していた咬我忍者の谺は、異形の巨人たちの戦いに巻き込まれて片目を失い、瀕死の重傷を負うこととなります。
 戦っていた片割れであり、讃岐を守護する「黒天狗」の八咫烏に霊体を与えられ、一命を取り留めた谺。八咫烏と戦っていたのが妖怪たちを乱獲し、西洋人に売り渡す陰陽師・星冥党であることを知った彼は、力を失った八咫烏に代わって妖怪のために戦うことを決意するのでした。

 かくて零鴉に変身し、その圧倒的な力で襲い来る陰陽師を撃破していく谺。しかし、その前には宣教師・ルイスや、くノ一のつぐみなど、曰くありげな者たちが現れます。
 さらに、八咫烏が讃岐の「護り手」という使命を持つことから、谺と八咫烏の前には妖怪の掟という難題が……


 というわけで、妖怪もの+忍者もの+変身ヒーローものといったテイストの物語の開幕編であります。

 これは申し上げてよいのかはわかりませんが、さとう監督で鴉と妖怪といえば、どうしても思い出すのは『鴉 KARAS』――妖怪たちを守る「鴉」と名乗る存在を描いたアニメ。
 今のところその『鴉 KARAS』と本作の関わりは全く語られていないのですが(今後もないと思いますが)、どうしても気になってしまうのは人情でしょう。

 もちろんそれはこちらの勝手な想像ではあるので置いておくとしても、戦国時代の四国という、こうした伝奇ものではあまり題材となっていない地を舞台とした物語設定は目を引きます。
 零鴉の「白い鴉天狗」というスタイリッシュなコスチュームもさすがに格好良く、主人公・谺が妖怪に力を貸すことを決意する理由なども面白いのですが……


 しかし、正直に申し上げて、画がそれに追いついていないように感じられます。
 いえ、画そのものというよりも、「漫画」としての描写や構成という点で、わかりにくかったり、流れが滞り気味であったり――この外連味に満ちた物語を描くに、少々苦しい印象が否めないのであります。
(特に第1話冒頭の黒天狗と陰陽師ロボの戦いや、第2話での陰陽師ロボの合体シーンなど……)

 そのため、先に挙げた本作の三つの要素――妖怪もの・忍者もの・変身ヒーローものとしての味わいが、十全に活かし切れていないのが、何とももったいないと感じます。


 もっとも本作はまだ始まったばかり、ここで評価を決めてしまうのは早いのでしょう。

 何よりも、谺=零鴉と陰陽師たちの戦いの行方がどこへ向かうのか、そしてそれとこの天正10年の四国という舞台がどのように関わっていくのか――気になる点は多々あるのですから。


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