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2018.02.27

杉山小弥花 『明治失業忍法帖 じゃじゃ馬主君とリストラ忍者』第11巻 大団円、そして新たな時代と物語へ

 開化の世に夢を膨らませるじゃじゃ馬女学生・菊乃と、元伊賀忍び(?)の清十郎、二人のいささか不穏な恋模様を描いてきた本作も、ついにこの巻にて完結。菊乃に秘め隠してきたもう一つの顔の存在を知られた末、姿を消した清十郎。果たして彼の正体は、そして二人は再会できるのか――!?

 清十郎の実家の旧知行地に足を運んだ際、そこにあった清十郎の手形が、現在の彼のものと異なることを偶然知ってしまった菊乃。清十郎は清十郎ではないのか、それでは彼は本当は何者なのか?
 そんな中、清十郎の方も周囲が大きく動き出します。太政官監部課が清十郎の調査を始め、そして何よりも清十郎の過去を知り、支配する男・杠こと栗栖靱負が出現、清十郎を追い詰めることになります。

 西郷の挙兵により事態は風雲急を告げる中、ついに栗栖に連れ去られる清十郎。菊乃に、清十郎にそれぞれ危機が迫る中、果たして二人の愛の行方は……


 と、何とも気になり過ぎる展開から始まったこの最終巻、前半は本作におけるもう一組のカップルの想いの行方、土佐の楡大尉を頼った菊乃の前に現れる強烈な新キャラ(?)と、ある意味通常運転の展開が続くことになります。

 が、もちろんこれは細かな伏線の積み重ね。後半、ついに清十郎の真実にたどり着いた菊乃は、思わぬ形で彼と再会して――と、ここからが怒涛の盛り上がりであります。

 物語の核心に触れてしまうため、詳細を語るわけにはいかないのが全くもって弱ってしまうのですが、しかし、ここで描かれたある「トリック」があまりにも素晴らしかった、ということはできます。
 これまで、様々な形でほのめかされてきた清十郎の過去。それが本作の後半部の物語を様々な形で引っ張ってきたわけですが、ここで明かされるその真実のどんでん返しぶりが凄まじい。これはよほどの歴史好きでなければ気づかないのでは――と思わされる見事な仕掛けには大きく嘆息させられます。

 元々全編に渡ってミステリ味が強かった本作ですが、ここに至り時代ミステリ史上に残る作品になったのではないか――というのは少々大げさに聞こえるかもしれませんが、これは偽りのない思いであります。
(このトリック、かなり前から考えていたものと思いますが、果たしてどこから思いついたものか……感心)


 しかしもちろん、本作の根本はもどかしい二人のラブロマンス。西南戦争の混沌の中に男たちが飲み込まれていく中、残された菊乃を待つものは――と、こちらもこれまた見事な大団円。全ての因縁に決着をつけた上で物語はこれ以上ない結末を迎えることになります。

 武士たちの最後の戦いが終わり、維新の立役者たちが去った後――真に旧幕が終わり、明治が始まった時、菊乃が問われて答えた言葉は、物語の全てを受け止め、そしてその上で新たな扉を開く、非常に素晴らしいものであり、思わず本当に良かった――とホロリ。
 これまでの巻の紹介でも繰り返し繰り返し述べてまいりましたが、歴史・時代ものと、恋愛・ラブコメものが非常に高いレベルで融合していた本作。その本作の魅力は、最後の最後まで変わることなく、見事に昇華されたと自信を持っていうことができます。

 この後に続く新たな物語、幸福な物語の内容を笑顔で想像することができる――そんな素晴らしい作品でした。

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