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2018.02.21

「コミック乱ツインズ」2018年3月号(その一)

 あまりに連載陣が充実しすぎて、逆にスタメンが揃わないこともあった「コミック乱ツインズ」ですが、今月は巻頭カラーの『鬼役』をはじめ、『軍鶏侍』『仕掛人藤枝梅安』『勘定吟味役異聞』の小説原作4作品が揃い踏みであります。今回も印象に残った作品を一つずつ紹介いたします。

『軍鶏侍』(山本康人&野口卓)
 久々登場の本作、第3回の今回は前後編エピソードの前編。藩主の改革遂行の刃として活躍した軍鶏侍こと岩倉源太夫が、再びその刃を振るうことになります。

 前回の功績により藩より道場を与えられ、剣術指南を行うことになった源太夫。息子夫婦の薦めで若い後妻を娶ることとなり、にわかに慌ただしくなった源太夫ですが――しかし上意により、脱藩した藩士・立川を討つことを命じられることになります。
 問題は立川がかつて道場破りを木剣でまっぷたつに斬り裂いたと言われる達人というだけでなく、彼が新妻の前夫であること。複雑な心境で源太夫は出立することになります。

 一度は引退していたものが、功績を上げて請われて職場復帰、しかも若くて美人で自分の趣味に理解のある新妻まで――と書くと、中年男性の願望充足すぎてちょっと驚かされる本作。とはいえ、結局は上意で人斬りに差し向けられる立場には色々と考えさせられます(個人的には、源太夫が自分より年下だったのにショック)。
 そんな仇し事はさておき、源太夫が軍鶏小屋で新妻の気持ちを確かめる場面の(軍鶏の視点から二人を描くという)画面作りは実に叙情的で美しく、感心いたしました。


『エンジニール 鉄道に挑んだ男たち』(池田邦彦)
 まだまだ続く島不在編。今回登場するのは、米国の機関車メーカーの青年営業マン・清水。日本のためにも新製品を売り込もうとするも、鉄道院に手ひどくはねつけられた彼と出会った雨宮はドイツの島に直訴するよう促します。
 敦賀から大陸に渡る船に急ぐ清水とともに箱根越えの列車に乗った雨宮ですが、そこで思わぬトラブルに巻き込まれることに……

 本作の素晴らしさは、島と雨宮という天才コンビを主役としつつも、鉄道に対する愛情では彼らに勝るとも劣らない、「普通の」人々の姿を描き出すことでしょう。言うまでもなく今回は清水青年がそれに当たりますが、その熱意がある人物を動かすという展開は、お約束とはいえ、そこに至るまでの物語の面白さもあって素直に受け取れます。

 それにしても雨宮氏が清水にアドバイスを与える(?)場面、彼らしい無茶ぶりの中にも熱さがあって実に良かったと思います。


『仕掛人藤枝梅安』(武村勇治&池波正太郎)
 今回から新エピソード「闇の大川橋」がスタート。町の騒動の中で彦さんが出会った御用聞き・豊治郎。腕利きで人柄もいい豊治郎に好感を抱く彦さんですが、その晩、往診帰りの梅安は、大川橋の上で何者かに斬られた豊治郎を看取ることになります。
 その直後、梅安のもとを仕掛けの依頼で訪れる音羽の半右衛門。その相手と、豊治郎の末期の言葉に出てきた名が同じだったのは偶然か……

 というわけで、今回ついに重要キャラである音羽の元締が登場、原作では矮躯の一見好々爺として描かれる人物でありますが、面白いのはその初登場シーン。本作の特徴の一つである、重低音の擬音とともに、戸板一つ挟んで巨大な迫力を感じさせ、開けてみれば! るという描写は、ある意味本作ならではのもので、この手があったか! と膝を打った次第です。


『勘定吟味役異聞』(かどたひろし&上田秀人)
 吉原の公許取り消しを命じる新井白石の命により、吉原との決戦を決意した聡四郎は、完全復活した玄馬とただ二人、吉原に正面から乗り込むことに――と、いよいよ第2章もクライマックスの本作、当然ただですむはずもないのですが、気合いの入りまくった二人に敵はない、と思わせてくれる描写が嬉しい。
 その直前、わずかな動きから聡四郎が相手の企てを見抜く様も見事で、彼も成長しているのだなあ……と感慨深くなります。

 その一方で江戸城の内外では色々と権力亡者たちの醜い動きが描かれることになりますが、注目は初登場の間部詮房。猿楽師出身の彼は、思わずなるほどと感心させられるビジュアルで、これまでとはまたベクトルの異なる奸臣ぶりが印象に残るところです。
(にしても聡四郎はこの頃から大奥、というか月光院と因縁があったのだなあ……)


 長くなりましたので次回に続きます。

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