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2018.02.01

『グレートウォール』 ハリウッド+中国の伝奇怪獣映画!?

 黒色火薬を求めて放浪する傭兵ウィリアムと相棒は、夜営中に謎の怪物に襲われ辛くも生き延びる。翌日、万里の長城の禁軍に捕らえられた二人は、襲ってきたのが怪物・饕餮であること、まもなくその大群が襲いかかることを知るのだった。果たして始まった襲撃の中、禁軍に助太刀するウィリアムだが……

 莫大な資金を投じて怪獣映画を次々と送り出してくれる、私のような人間には大変ありがたいレジェンダリーが、こともあろうに巨匠チャン・イーモウを監督に迎えて製作した伝奇怪獣映画――万里の長城は、実は怪物・饕餮の群れを阻むためのものだった、という途方もないアイディアを大真面目に映像化した作品であります。

 饕餮とは、中国の古代神話に描かれる四凶の一つ――牛のような体に角と牙、人のような顔を持った怪物のこと。古代の青銅器の、獣を正面から開きにしたような独特の紋様・饕餮紋のモチーフとして知られる存在です。
 それを本作においては、太古に北の地に落ちた隕石を起源とし、六十年に一度出現しては大地を埋め尽くす怪物――女王を中心に行動し、現れる度に知恵を付ける強大な怪物として描くのであります。
(しかし北方から来るのであれば、遼や女真はどうしていたのか……)

 主人公は、西方から流れてきた弓の達人の傭兵・ウィリアム(マット・デイモン)。
 長城での宋禁軍と饕餮の攻防戦に巻き込まれた彼が、女武人・リン(ジン・ティエン――『キングコング 髑髏島の巨神』や『パシフィックリム』の続編など、もうレジェンダリーの怪獣映画常連女優さん)やワン軍師(アンディ・ラウ)とともに必死の戦いを繰り広げることになります。

 しかし相手はあくまでも大群――一匹二匹は自慢の矢で倒せても(ウィリアムの矢、作中の他の兵器に比べても異様に強い)キリがありません。そこで古文書に残された饕餮たちの弱点、すなわち磁石が近くにあると女王の指令が届かず、行動が停止するという現象を利用して、ウィリアムたちは反撃に転じようとするのですが……


 というわけで、怪獣の猛威と人類の奮戦・苦戦、そして怪獣の弱点を突いての決死の逆転作戦と、ある意味怪獣ものの定番展開が繰り広げられる本作。
 実質中国映画らしく、凄まじい物量を感じさせる画面や、次々と繰り出される武侠ものライクな面白武器など、期待していたものはまず観れたように思います。

 キャラクター面でも、リンのゲームから抜け出してきたようなビジュアルは素晴らしく、この辺りを正面から映像化してしまうのも、さすがと言うべきでしょう。
(それにしても、あのバンジージャンプ的アタックは命が鴻毛より軽すぎるかと)

 ただ残念だったのは、肝心の饕餮があまり魅力的ではなかったことで――饕餮紋をモチーフにしたデザインは面白いのですが、あまりに数が多すぎる(そして種類が少なすぎる)ために、かえって緊迫感が薄れた印象があります。
 これは『髑髏島の巨神』もそうでしたが、ある意味野獣の群れとさして変わらないように感じられてしまう、とでも言えばよいでしょうか……

 さらに言えば肝心の弱点が早々にわかってしまうのも少々盛り上がりに欠けるところで、終盤の展開もいささか無理がある(あれだけ大きな国なのだから磁石くらい幾らでもあるでしょう)と、減点法で見るとかなり厳しくなってしまう作品ではあります。
(ツイ・ハークのディー判事ものだったら、この辺りは伏せた物語作りをしていたと思う――というのはさておき)

 戦場に生まれてただ金のために戦うことしか知らなかったウィリアムが信の想いを知る――すなわち人間性を獲得していく姿が、ただ命じるままに戦うしかない饕餮と対比されているであろう点はなかなか面白いとは思いますが……


 しかしこれだけの規模で、大真面目に時代伝奇怪獣映画を作ってくれたのはやはり嬉しいお話。

 こうなったらモンスターバースに繋げて、更なる続編を――というのは無茶な希望ですが、この路線の作品もまだまだみたいなあ、と強く感じた次第です。

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