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2018.03.01

新井隆広『天翔のクアドラブル』第3巻 急展開に次ぐ急展開 絶望の果ての絆と継承

 実は欧州の悪魔を退治するために海を渡った志能便(しのび)であった天正遣欧少年使節団の四人を描く伝奇活劇の第3巻であります。様々な冒険を経てインドのゴアに辿り着いた一行。しかし腥風吹くその地で、あまりに残酷な真実を彼らは知ることになります。

 蔓延る悪魔からヨーロッパを救うため、宣教師ヴァリニャーノに乞われて海を渡った四人の志能便――伊東マンショ・・中浦ジリアン・原マルチノ(とジリアンの妹のしゆん)。
 マレーで生きていた信長主従と出会い、信長の奇怪なカリスマに翻弄された一行は何とか信長を退けたものの、彼らはゴアで再び信長と再会することになります。

 黒死病が蔓延したゴアの地で、無残に殺され、晒される聖職者たち。その虐殺の犯人こそが信長主従だというのですが――しかしかつてはキリスト教を庇護した信長は何故そのような蛮行に走ったのか?
 そしてその信長から、黒死病から人々を、そして余命幾ばくもないマンショを救うためにドラゴンの肝を託されたジリアンは、悩みつつも薬の開発に取り掛かることに……


 と、激動の展開を受けたこの第3巻ですが、しかし更なる、真の激動が少年たちを待ち受けます。

 ついに黒死病の特効薬を完成させたジリアンの前に現れたヴァリニャーノ。しかし彼のとった行動とは意外なものでした。
 意外も意外、あまりにも意外なヴァリニャーノの素顔――史実ではここゴアで一行と別れることになるヴァリニャーノのですが、一応は史実を踏まえた本作において、それが如何なる形で描かれるかと思えば、こう来たかと驚かされます。

 そしてその絶望的な真実に続き、少年たちと信長主従に襲いかかる圧倒的な数の敵の群れ。この窮地を逃れる術は……
 冒頭から少年たちが繰り返してきた「我ら血は四つに違えど、我ら心は一つに同じ」という言葉。その言葉が思いもよらぬ形でリフレインされる展開は圧巻であります。


 そしてさらに急展開、一年後のヨーロッパを舞台に、仲間たちと離れ離れになり復讐鬼と化した千々石ミゲルと、もう一人の戦いが描かれることになります。

 数々の悪魔を斃してきたミゲルが次に向かう地は、悪魔と契約を結び、絶大な力を得たという錬金術師ファウストの館。少女たちを集めて招き入れ、そして再び帰さぬという館で何が起きているのか。
 そしてファウストと行動を共にする悪魔メフィストフェレスの狙いとは……
(信長がメフィストフェレスめいた、と書いたら本当にメフィストフェレスが登場したのは驚きましたが)

 あまりの急展開に面食らいはしますが(ミゲルいきなり老けたなあとか)、しかしここで描かれることになる一つの絆と継承の姿はやはりいい。
 ゴア編のラストから予想はできていたことでしたが、物語に紛れ込んだイレギュラーとも感じられた存在の意味が、こうして明かされるのは、グッとくるものがあります。


 再び四人が集結する日はいつか、そして物語の最後の謎が明かされる日は――最終章の刊行を待つとしましょう。

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