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2018.03.29

冬目景『黒鉄・改 KUROGANE-KAI』第1巻 帰ってきた鉄面の渡世人

 仮面の渡世人と喋る刀が帰ってきました。1993年に初登場してから、時に掲載誌を移しながら連載を続け、2003年に姿を消した『黒鉄』――その物語を踏まえて、変わらぬ面子のちょっと変わった物語が再び始まります。

 少年ながら人斬りの道に進み、野垂れ死んだ末にとある蘭学者に拾われ、半身が機関仕掛けの仮面の渡世人として蘇った鋼の迅鉄。喋れぬ迅鉄の代わりに喋る刀の鋼丸を相棒に、一人と一刀のあてどもない旅が続く――というのが、前作そして本作の基本設定です。

 さて、この第1巻の冒頭に収録された「序章」は、連載開始前にプレ読切として掲載されたエピソードであります。
 金をもらって人を斬る旅を続けてきた迅鉄が同宿することとなった二人の女性・流以と東雲。同じ旅鴉だという流以は、迅鉄と鋼丸の関係をひと目で見抜いて……

 というこのエピソードは、派手な立ち回りもあり、結末には流以の意外な正体(?)が語られたりとあるものの、どこまでも淡々とした(そして時々フッと力の抜ける)味わいは長いブランクを感じさせぬもの。
 まず『黒鉄』らしい第1話という印象であります。
(それでいて、おや? と思わせる描写もあるのですが――それは後述)


 そしてこの巻のメインとなるエピソード「出立の刻」は、数少ないサブレギュラーである男装の少女渡世人・紅雀の丹が冒頭から登場。
 前作では迅鉄を母の仇として付け狙いつつも、一種の腐れ縁で結ばれていくというキャラクターだった丹ですが、本作では何故か鋼丸を帯びていて――と、いきなり意外な展開に驚かされます。

 実は一月前、何者かに襲われて崖から転落して行方不明となっていた迅鉄。
 残された鋼丸は、偶然そこに通りかかった丹に拾われ行動を共にしていたということなのですが――今度は丹が、謎の集団に襲われていた侍を助け、瀕死の侍から幕府への書状を託されることになります。

 しかも迅鉄を襲った男たちと、この侍を襲った男たちは、どちらも奇妙な刺青していたという共通点が。そして当の迅鉄は、記憶を失って薬草園を営む兄妹に救われていたのですが……

 と、内容的にはある意味定番ながら、迅鉄を記憶喪失にすることで、シリーズの基本設定を再度語り直すという趣向も面白い今回のエピソード。
 しかし個人的に気になったのは、このエピソードで(そして上で述べた「序章」で)描かれた迅鉄と鋼丸の描写に、前作とは異なる点があることであります。

 例えば前作の迅鉄は(少なくとも初期は)鉄仮面を外すことはなく、普通の食事を食べることもなかったのですが、本作においては鉄仮面を外して食事を食べる場面が描かれるのです(そして鉄仮面の下の素顔が描かれる場面も……)。

 そして迅鉄を改造したのと同じ学者によって作り出されたという設定だった鋼丸も、或る刀工が作った妖刀という設定となっており、迅鉄の近くにいなければ喋れない(迅鉄の頭の中に鋼丸の脳もあるため)ということもなくなっております。

 この辺りについては、作者のあとがきに「基本的に前作の設定を引き継ぎつつも改変している部分も多々ございます」とあるように、明確に意識して変更して変更したということなのでしょう。
 いわば本作は、続編というよりもリブート――そう表すべき位置づけの作品なのでしょう。


 もっとも『黒鉄』という作品において、迅鉄や鋼丸の素性は、積極的に物語全体を引っ張っていくような性質のものではない――あくまでも物語の舞台装置の一つであった――という印象があります。
 その設定をあえて変えたことが、このリブートでどのような意味を持つのか――それはまだわかりませんが、この「出立の刻」を見るに、原則として一話完結エピソードでありつつも、その背後に一つに繋がった大きな物語を描こうとしているのではないかと感じられます。

 この巻のラストに収められた新エピソード「底根國の天探女」の第1話では、迅鉄を探す謎の蘭学者が登場。
 一方で、迅鉄や丹を襲った謎の男たちも蘭学に関わって暗躍している様子で――さて、こうした動きが鋼の迅鉄にどのように関わっていくことになるのか。

 再び始まった迅鉄の旅の行く先が、前作以上に楽しみになる展開であります。


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