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2018.04.24

みもり『しゃばけ』第1巻 漫画で甦る人気シリーズの原点


 2001年の第1作刊行以来、ほぼ年1冊ペースで刊行されている『しゃばけ』シリーズ。昨年はミュージカル化されるなど全く勢いに衰えを見せないこのシリーズの、記念すべき第1作が漫画化されました。担当するのは、以前に原作者の未単行本化作品『八百万』の漫画化を担当しているみもりであります。

 江戸有数の薬種問屋の若だんな・一太郎は、子供の頃から身体が弱くて少しのことで寝込み、そのたびに過保護な兄やの仁吉と佐助を騒がせる毎日。
 しかしそんな彼には一つの秘密があります。大妖を祖母に持つ彼は妖怪を見る力を持ち、実は強力な妖である仁吉と佐助をはじめ、様々な妖怪たちが若だんなの周囲には集まってきていたのであります。

 何はともあれ、そんな妖たちに囲まれて賑やかな毎日を送る一太郎は、ある晩何を思ったか一人こっそりと外出するのですが――なんとそこで人殺しを目撃してしまうのでした。
 妖怪たちの助けで何とか犯人から逃れることはできたものの、もしかすると犯人に顔を見られているかもしれない。若だんなを守るため、妖怪たちは犯人の手がかりを探るべく、町に飛び出していくのですが……


 というわけで本作は、冒頭に述べたとおり原作第1弾の『しゃばけ』を極めて忠実に漫画化した作品。分量的には原作の四分の一辺りまでが、この第1巻には収録されています。
 その意味では原作ファンにとっては既にお馴染みの内容であり、新味はないのですが――しかしやはり、漫画として画が付くのは非常に大きな変化として感じられます。

 小説を読みながら頭の中で想像していたものと、こうして漫画としてビジュアル化されたものと――ある部分は重なり、ある部分は異なるのは、まず当たり前ではありますが、しかし本作からはほとんど違和感が感じられないのが嬉しい。
 特に冒頭のナイトシーンなど、江戸時代の暗闇を暗闇として描きつつ、なおその奥に存在するモノを感じさせる仕上がりと言えるのではないでしょうか。

 そしてキャラクターデザインの方も、漫画的なディフォルメは為されてはいるものの、如何にも育ちの良さそうな若だんなや、美形の仁吉とゴツい佐助といったいつもの面々はまず違和感なし。
 何より妖怪たちも、可愛らしい鈴彦姫にどこか抜けた野寺坊と獺、そして何よりも(かなり色男になった気もしますが)その動きも楽しい屏風のぞきと、原作のイメージどおりの賑やかさが嬉しいところであります。

 そしてシリーズのマスコットとも言うべき鳴家たちも、柴田ゆうの挿絵にアレンジを加えつつも、「おっさん顔なのに何故かカワイイ」をしっかりと成立させていて、私は悪くないと思います。
 この辺りのセンスは、長年ファンタジー/ホラー漫画を手がけている作画者ならではのセンスと言うべきかと思います。


 ただ――これは理不尽を承知で申し上げれば――原作に比べて違和感がない、というのは、逆に言えば原作を超えていないということでもあります。
 また、原作のストーリーを忠実に再現しているとはいえ、物語展開がスロースタートで、盛り上がりに欠けているように感じられるのもまた事実です(この巻に収められているのは起承転結の「起」の部分であるだけなおさら)。

 その意味では、原作既読者にとっては、いささか訴求力が薄いようにも感じられるのですが……

 しかし冒頭に述べたとおり、『しゃばけ』シリーズも開幕してからもう20年近くが経過し、原作は膨大な量になっているのは事実。その高い山を前に、シリーズに興味を持った方が最初に手に取る一冊としては、本作は大きな意味を持つかと思います。
 そして何だかんだ言いつつも、私も懐かしさ半分、新鮮さ半分で本作を楽しんだのは間違いない話であります(何しろ、原作を読んだのは相当以前のこともあり……)。

 刊行ペースがかなりかかりそうなのだけが残念ではありますが、妖怪時代小説の草分けの魅力を、この先もしっかりと味わわせていただくつもりです。


『しゃばけ』第1巻(みもり&畠中恵 新潮社バンチコミックス) Amazon
しゃばけ (1) (BUNCH COMICS)


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