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2018.04.11

賀来ゆうじ『地獄楽』第1巻 デスゲームの先にある表裏一体の生と死


 webコミック「ジャンプ+」で連載中の期待の時代アクションの単行本第1巻がついに発売されました。不老不死を巡るデスゲームに参加することとなった元・非情の忍びと女山田浅エ門――奇妙な二人が繰り広げる、先が読めない奇怪な死闘絵巻の開幕であります。

 かつて最強の忍と謳われたものの、ある理由から忍びを抜けようとして捕らえられた男・がらんの画眉丸。首切り・火炙り・牛裂き・釜茹で――あらゆる処刑法に耐えた彼をして恐れさせるほどの腕を持つ娘・山田浅ェ門佐切が、放免と身の安全と引き替えに彼に命じたのは、不老不死の仙薬を手に入れることでした。

 海の彼方にあるという、極楽浄土とも呼ばれる謎の島。しかしそこに渡った者はほとんどが消息を絶ち、唯一帰ってきた者も、体中から生えた植物と一体化した人ならざる姿と化していたのであります。
 不老不死に並々ならぬ感心を寄せる将軍の命を受けた幕府は、死んでも惜しくなく、そして恐るべき腕を持つ者たち――それぞれに壮絶な罪状を持つ死罪人たちを集め、島に送り込もうとしていたのです。

 ふるい落としという名の殺し合いの果てに残ったのは、画眉丸をはじめとする十人の死罪人。そして彼らの目付役兼処刑執行人たる山田浅エ門(の門弟)たちとともに、彼らは地獄とも極楽ともつかぬ地に足を踏み入れるのですが……


 というわけで、宝探し+デスゲームとも言うべきスタイルの本作。その特徴の一つはある種凄まじさすら感じさせるテンポの良さでしょう。
 画眉丸の紹介と物語の導入に一話、佐切の紹介と死罪人選抜に一話というのはまず普通ですが、その次の話では早くも島に上陸、そしてそこで早々に死罪人たちの潰し合いが始まるのですから凄まじい。

 何しろゲームのルールでは、島を出て自由を手に入れられるのは、仙薬を手に入れた者(とその目付役)のみ。だとすれば、仙薬を探す前にまずライバルを潰しておいた方が良い――と考えて行動に移すのは、こういう場に選ばれ、残った極悪人揃いならではと言うべきかもしれません。
 しかし死罪人たちの敵は、互いだけではありません。違反行為があればすぐさま首を落とさんとする山田浅エ門たち、そして何よりも、この島の奇怪な生態系が、最大の敵として彼らに襲いかかるのですから……

 それ故と言うべきか、とにかく本作においては、如何にも強そうな、強烈なキャラクターたちが、次から次へと出た→死んだを繰り返す状況となります。
 ほとんど古龍の武侠小説のようなその展開は、テンポが良いといえば確かに良く、それが物語の先の読めなさと、早く次を読みたいという気持ちに繋がっていくのであります。

 しかしそんなテクニカルな巧さはもちろんですが、そのテンポの良さが示すのは、本作においてより根源的なものと言うべきかもしれません。そう、それは同時に、本作においては、人の命の重みが極めて軽いということを示しているのにほかならないのですから。

 本作の登場人物たちの目的は、不老不死の仙薬を求めること。不老不死――いわば究極の生を求める物語において、あっさりと数多くの死がばら撒かれていくというのは皮肉というほかありませんが、しかしその表裏一体の生と死の在り方こそが、本作が描こうとするものなのでしょう。
 そしてそれを象徴するのが、画眉丸と佐切の二人の存在であります。

 生まれた時から殺人兵器として育てられ、人を殺すことを生業として生きてきた画眉丸と、試し斬りと生肝による薬作りを生業とする家に生まれ、自らも首切り人となった佐切。
 共に人の死の上に生きる存在でありながらも、それでもなお画眉丸は人を殺めず生きる道を求め、そして佐切は己が人を殺める意味を求めようとするのであります。

 個人的にはこの第1巻において何よりも強烈なインパクトを持っていたのは、そんな二人の姿が描かれる第1話と第2話――特に画眉丸が戦う=生き延びようとする理由を描く第1話でした。
 そしてそれは、本作における一種の生死感が、何よりも強烈に表れていたからであったと、今回再確認した次第です。


 それにしても生と死の境は薄皮一枚。誰が生き残り、誰が死ぬかわからない戦いはまだまだ続く――というよりも更に激化することを暗示して、物語は第2巻に続きます。
 その先に何があるのか――二人が自分自身の道と意味を掴むことを祈りたいと思います。


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