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2018.04.10

重野なおき『信長の忍び』第13巻 決戦、長篠に戦う女たちと散る男たち


 この4月から第3期『姉川・石山篇』もスタートと勢いが衰えることのない『信長の忍び』、原作の最新巻は前巻から引き続き長篠の戦が描かれることになります。忍びは忍びの、武将は武将の戦いを繰り広げる中、ついに決着の時が……

 父を超えるべく進撃を続ける武田勝頼の攻撃が迫る三河。同盟相手である徳川家康を脅かす武田に対して、ついに信長は決戦を決意することとなります。
 佐久間信盛の偽投降、酒井忠次の鳶ヶ巣山砦奇襲と布石を積み重ね、「その時」を待つ織田・徳川連合軍。その陰で、千鳥(と助蔵)もまた、因縁重なる宿敵である勝頼の忍び・望月千代女との決戦に臨むことに……


 そんなわけで冒頭からいきなりクライマックスの第13巻。以前、千代女には文字通り死ぬような目に遭わされた千鳥ですが、しかし今回は負けるわけにはいかない戦いであります。
 しかしそんな覚悟を固めてもなお、千代女は強い。本当に強い。再びあわやのところまで千鳥が追いつめられた時、彼女を救ったのが誰であったか――意外で、しかしこの人物しかいないというその名を言うまでもないでしょう。

 忍びとして主に向けた想いの強さは互角、戦闘力としては千代女の方が上。しかしそれでも千鳥には千代女に勝る点があります(そもそも、それがあったこそここで再戦に挑むことができたわけで)。
 それはたった一人ではない、強い絆の存在――忍びとしてはもしかしたら不要かもしれないそれが、確かな力となって千鳥を支える展開は、特に物語を冒頭から読んでいる者にはグッとくるものがあります。お前、本当に頑張るなあ……と。

 と、思わず忍者漫画のように(いや、忍者漫画でもありますが)盛り上がってしまう展開ですが、しかし戦はこれからが本番。決戦の地で死闘を繰り広げる男たちの姿が、この先ひたすらに描かれていくことになります。

 鳶ヶ巣山砦争奪戦のくだりのように、そんな死闘の中でもきっちりとギャグが――それも史実に絡めて――描かれるのにはいつものことながら感心させられますが、しかしそんな中でもシリアスにならざるを得ない時がやってきます。
 武田家の猛攻を前に、一歩も引かず、いやむしろ前に出て行く信長と配下たち。その圧倒的な力の前に、ついに武田家を支えてきた猛将たちも一人、また一人散っていくのであります。

 山県昌景、内藤昌豊、馬場信春――武田家四天王と謳われた名将たちの実に三人までもが散っていく姿は、やはりその直前まで本作らしいギャグでデコレートされているものの、最期の瞬間はどこまでも真面目でドラマチックなのもまた、本作らしいと言うべきでしょう。
 特に馬場が勝頼に託したものと、それを受けての勝頼の姿は、織田方と武田方、どちらが主人公サイドかわからなくなるほどで――この辺り、『真田魂』に重なるわけですが――こうして敗者にも光を当てるのが、本作が長らく愛される理由の一つなのでしょう。


 さて、一つの大戦は終わったものの、まだ信長の戦が終わったわけではもちろんありません。
 この先、信長の道を阻まんとする第二次信長包囲網が形作られるわけですが――しかし既に信長が戦の前面に出る時期ではなくなったことは、史実が示すところであります。

 そんなわけでこの巻の後半から描かれるのは、明智光秀の丹波攻略。信長による方面軍構想により、織田家一の出頭人として丹波攻略の主将に命じられた光秀に、ようやく傷の癒えた千鳥と助蔵はつき従うことになるのですが……
 が、ここで鬼のようなナレーションにより「光秀挫折編」というワードが語られることになります。

 言うまでもなく光秀といえば信長を――というわけですが、さてその源流であろうこの戦いがどのように描かれるのか。
 その後の光秀の姿がちらりと描かれた『黒田官兵衛伝』の官兵衛も登場し、相変わらずの目薬屋っぷりを見せるクロスオーバー(と言ってよいのかしら)も楽しい本作、信長同様に、まだまだ勢いは衰えそうにありません。


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