「コミック乱ツインズ」2018年5月号(その二)
今月の「コミック乱ツインズ」誌の紹介のその二であります。
『薄墨主水地獄帖』(小島剛夕)
「地獄の入り口を探し求める男」薄墨主水が諸国で出会う事件を描く連作シリーズ、今回は第3話「無明逆手斬り」を収録。
とある港町に夜更けに辿り着いた主水が、早速町の豪商・唐津屋のもとに忍び込んだ盗賊・七助と出会い、見逃してやったと思えば、無頼たちにあわや落花狼藉に遭わされかけていた娘・富由を救うために立ち回りを演じて、と冒頭からスピーディーな展開の今回。
唐津屋の客人となっている父を訪ねて来たものの追い返され、襲われることとなった富由のため、主水の命で再度忍び込んだ七助がそこで見たものは……
タイトルの「無明」とは、上で述べた富由を救った際、相手を斬ったものの目潰しを受けて一時的に失明した主水を指したもの。その主水が、襲い来る唐津屋の刺客に対して、敢えて不利を晒し、逆手抜刀術で挑む場面が本作のクライマックスとなっています。
が、悪役の陰謀が妙に大仕掛けすぎること、何よりも非情の浪人である(ように見える)主水が、口では色々言いつつも盗賊を子分にしたり薄幸の娘のために一肌脱ぐというのは、ちょっと普通の時代劇ヒーローになってしまったかな――という印象があるのが勿体ないところではあります。
『鬼切丸伝』(楠桂)
これまでしばらく戦国時代を舞台としてきた本作ですが、今回は一気に時代は遡り、鬼切丸の少年が生まれてさほど経っていない平安時代を舞台としたエピソード。題材となるのは、かの絶世の美女の末路を題材とした卒塔婆小町であります。
かつて絶世の美女として知られた小野小町。数多の貴族から想いを寄せられながらも決して靡くことのなかった小町は、その一人である深草少将に百夜通ってくることができれば心に従うと語るも、彼はその百夜目に彼女のもとに向かう途中、息絶えてしまうことに。
無念の少将の怨念は小町を老いても死ねぬ体に変え、やがて彼女は仏僧の説法も効かぬ鬼女と化すことに……
と、「卒塔婆小町」と各地の鬼婆伝説をミックスしたかのような内容の今回。妙にその両者がしっくりとはまり、違和感がないのも面白いのですが、鬼小町の真実が語られるクライマックスの一捻りもいい。
本作の一つの見どころは、鬼と人間の複雑な有り様に触れた少年が最後に残す言葉とその表情だと感じますが、今回は人の色恋沙汰に踏み込んでしまった彼のやってられるか感が溢れていて、ちょっとイイ話ながら微笑ましい印象もある、不思議な余韻が残ります。
『用心棒稼業』(やまさき拓味)
老年・壮年・青年の三人の浪人が、用心棒稼業を続けながら、それぞれの目的を果たすため諸国を放浪する姿を描く本作。これまで過去2回では「終活」こと雷音大作、「仇討」こと海坂坐望の過去を踏まえたエピソードが描かれましたが、今回はある意味最も気になる男「鬼輪」の主役回となります。
かつて御公儀探索方鬼輪番の一人でありながら、嫌気がさしてその役目を捨て、気ままな用心棒旅を送っている青年、「鬼輪」こと夏海。スリにあった角兵衛獅子の少女のために、もらったばかりの用心棒代を全て渡してしまうほどのお人好しの彼ですが、しかし鬼輪番たちは「鬼」たることを辞めた彼を見逃すことなく、海上を行く船の上で夏海と大作・坐望に襲いかかることに……
作者のデビュー作である小池一夫原作の『鬼輪番』を連想させる(というかそのまま)のワードの登場で大いに気になっていた「鬼輪」が、やはり鬼輪番、それもいわゆる抜け忍であったことが明かされた今回。その名前は夏海と、作者単独クレジットの『鬼輪番NEO』の主人公と同じなのもグッとくるところであります(もっともあちらとは出生も舞台となる時代も異なる様子)。
そのためと言うべきか、お話的にはラストの一捻りも含め、いわゆる抜け忍もののパターンを踏まえた内容ではありますが、暗い過去に似合わぬ夏海の明るいキャラクターと、二人の仲間との絆が印象に残ります。
そして本作の最大の見どころであるクライマックスの大立ち回りの描写ですが、今回は鬼輪番たちとの海中での死闘を、1ページ2コマを4ページ連続するという手法で描いてみせるのが素晴らしい。海中ゆえ戦いの様子がよく見えないという、一歩間違えれば漫画としては致命的になりかねない手法が、かえって戦いの厳しさと激しい動きを感じさせるのにはただ唸るばかりであります。
次号はその『用心棒稼業』が巻頭カラー。カラーでどのような画を見せてくれるのか、今から楽しみであります。
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