『京の縁結び 縁見屋の娘』(漫画版) 小説から漫画へ――縁見屋再誕
第15回『このミステリーがすごい!』大賞の優秀賞にして時代伝奇小説である『縁見屋の娘』の漫画版(の第1巻)であります。作画を担当するのは『ホムンクルスの娘』『上海白蛇亭奇譚』と昭和初期を舞台とした和風ファンタジーを描いてきた君塚祥――納得の人選であります。
天明年間の京都を舞台に、タイトルどおり口入れ屋「縁見屋」の娘・お輪を主人公として展開する本作。
「縁見屋の娘は男子を産まずに26歳で死ぬ」という祟りによって、三代続いて女性が死に、そして自分もいつかは――と恐れを抱くお輪の前に、謎めいた行者・帰燕が現れたことから始まる、奇怪な因縁とその解放を描く物語であります。
本書には、原作全395ページのうち、160ページ辺りまでと、約四割分が収録されているのですが、基本的な物語展開はほぼ完全に原作のまま。
お輪の悩みと帰燕との出会い、お輪を愛する幼馴染み・徳次との微妙なすれ違い、曾祖父が残した火伏堂に隠された天狗の秘図面の謎、そして縁見屋の過去にまつわる忌まわしい因縁――こうした物語が描かれていくわけですが、その語り口の流れがなかなか良いのです。
たとえ同じ物語を描くにしても、小説と漫画は異なる――というのは当たり前ですが、その差を違和感なく埋めるというのは、簡単なようでいて実に難しい。
特に時代ものにおいては、どうしても説明文が多くなるのは仕方のないことで、しかしそれをそのまま漫画で描くにもいかないわけで――と、こう書いてみれば当然に必要なことではあるのですが、しかしそれをさらりと実現してみせているのには素直に感心いたします。
そしてそれを支えるのは、本作の「画」の力、特にキャラクターのビジュアルの力はないでしょうか。勝ち気そうな中に揺れる想いを秘めたお輪、ひたすら謎めいたイケメンの帰燕、脳天気ながらお輪の想いは本物とわかる徳次(ただ、髪型だけはどうかなあ)……
メインの3人を始めとして、本作のキャラクターのビジュアルには、原作読者として違和感がありません。
原作ではこの先描かれる部分で、お輪の抱く想いにちょっと違和感を感じてしまったのですが、このビジュアルであればそれも納得できる――というのは言いすぎかもしれませんが。
ちなみに違和感といえば、原作初読の際にはミステリとばかり思い込んでいたために、物語の内容に色々と違和感があったのですが、それを知った上でこうして漫画で追体験してみればそれも問題なし。
作中に散りばめられた謎が少しずつ明らかになっていく終盤の展開も面白く、まずは良くできた因縁譚と感じられます。
ただ唯一驚いたのは、どこにも「第1巻」と書かれていないにもかかわらず、物語が思い切り続いている点。
もっとも掲載サイトでは既に単行本収録分の先のエピソードも公開されており、ぜひとも完結まで続けていただきたいと思います。
改めて読み返してみれば、実に漫画映えする物語でもあるだけに……
『京の縁結び 縁見屋の娘』(君塚祥&三好昌子 宝島社このマンガがすごい!Comics) Amazon

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