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2018.05.16

『修羅天魔 髑髏城の七人 Season極』 新たなる髑髏城――これぞ極みの髑髏城!?

 天魔王率いる関東髑髏党が覇を唱える関東に現れた渡り遊女・極楽太夫。色里・無界の里に腰を落ち着けた彼女には、凄腕の狙撃手というもう一つの顔があった。無界で徳川家康に天魔王暗殺を依頼された極楽。しかしその前に現れた天魔王の素顔は、かつて深い絆で結ばれた信長と瓜二つだった……

 実に1年3ヶ月にわたり、5つのバージョンで公演された劇団☆新感線の『髑髏城の七人』、その最後を飾るSeason極『修羅天魔』を観劇して参りました。
 それまでにも5回上演され、その度に様々な変更が加えられてきた『髑髏城』ですが、しかし今回の『修羅天魔』はその中でも最も大きく変わった――ほとんど新作とも言うべき物語。何しろ、これまで一環して主人公であった捨之介が登場しないのですから!

 上のあらすじにあるように、本作の主人公は、渡り遊女にして凄腕の狙撃手である極楽太夫こと雑賀のお蘭――かつては信長に協力し、その天下獲りを支えてきた人物です。
 これまでの髑髏城において登場してきた極楽太夫は、雑賀出身の銃の達人という裏の顔は同じながら、初めから無界の里の太夫という設定。そしてお蘭の名を持ち、信長と縁を持つ登場人物としては、その無界の里の主・蘭兵衛が別に存在していました。

 そう、本作の極楽太夫(お蘭)は、これまでの捨之介と極楽太夫と蘭兵衛、三人の要素を備え、それを再整理したかのようなキャラクターなのであります。

 それを踏まえて、彼女を取り巻く登場人物たちの人物関係も、これまでとはまた変わった形となります。
 もう一人のヒロインである沙霧や、豪快な傾き者・兵庫といった面々は変わらないものの、蘭兵衛に代わる無界の里の主として若衆太夫の夢三郎が登場。狸穴次郎右衛門こと徳川家康の存在もこれまで以上に大きくなりますし、何よりも新たな七人目が……

 この変更が何をもたらしたか? その最たるものは、本作における重要な背景である織田信長の存在――信長とメインキャラたちの関係性の変化があるでしょう。
 これまで信長を中心に、捨之介・天魔王・蘭兵衛が複雑な関係性を示していた『髑髏城』。それが本作では極楽太夫・天魔王の関係性に絞られることにより、ドラマの軸がより明確になった――そんな印象があります。

 これは個人的な印象ですが、これまでの『髑髏城』では蘭兵衛の存在――というか第二幕での蘭兵衛の変貌が今一つ腑に落ちないところがありました(色々と理由はあったとはいえ、あそこまでやるかなあ、と)。
 今回、その辺りがバッサリとクリアされた――正確には異なるのですがその変更も含めて――のは、大いに好印象であります。

 閑話休題、その信長を頂点とした「三角関係」の明確化は、これまで(私が見たバージョンでは)背景に留まっていた信長の存在が、回想の形とはいえはっきりと前面に登場したことと無関係ではないでしょう。
 かつては雑賀の狙撃手として信長を狙ったお蘭が、信長の「同志」にして最も愛すべき者となったか――それを描く物語は、古田新太の好演もあって素晴らしい説得力であり、そしてそれだけに登場人物たちの因縁の根深さを感じさせてくれるのには感嘆するほかありません。

 さらにこの過去の物語が、第二幕早々で炸裂する意外な「真実」――これまでの物語を根底から覆すようなどんでん返しに繋がっていくのが、またたまらない。
 実はここまで、如何にこれまでの『髑髏城』と異なるかを述べるのに費やしてきましたが、同時に意外なほどに変わらない部分も多い本作。特に物語展開自体はこれまでとほぼ同じなのですが――だからこそ、この展開には、とてつもない衝撃を受けました。

 そしてその「真実」を踏まえて、極楽太夫が如何に行動するのか、どちら側の道を歩むのかという展開も、本作の人物配置――端的に言ってしまえば男と女――だからこそより重く、そして説得力を持って感じられるのであります。
 ……そしてそれがもう一回クルリと裏返るクライマックスの見事さときたら!。


 もちろん本作の魅力はこれだけではありません。また、生歌が存外に少なかったことや、過剰にエキセントリックな演技(それも演出のうちではありますが)で興ざめのキャラがいたことなど、不満点もあります。
 しかしそれでもなお、本作はこれまで30年近くにわたって培われてきたものを踏まえつつ、それを見直すことでまた新しい魅力を与えた新しい『髑髏城の七人』であり――そして、この1年3ヶ月の最後を飾るに相応しい、まさしく「極」であったということは、はっきり言うことができます。

 実に素晴らしい舞台でした。



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