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2018.06.29

速水時貞『蝶撫の忍』第2巻 さらなる昆虫忍者登場 頂上決戦勃発寸前!?


 覇王の首を巡り、昆虫を模した能力を持つ忍びたちが激突する忍者アクションの第2巻であります。思いも寄らぬ裏切りの前に捕らえられた覇王の首を守る甲賀のくノ一・鱗に
迫る、恐るべき伊賀の拷問。そしてついに姿を現した甲賀と伊賀、それぞれの最強メンバーの動きは……

 幼い頃から甲賀で過酷極まりない修行を重ねた末、生まれついての鋭敏な指先の感覚を極限まで研ぎ澄まし、「蝶」の生態を模した忍法を会得した鱗。やがて織田信長のもとに刺客として送り込まれた彼女は信長に信頼され、彼が本能寺で最期を遂げるまで行動を共にすることになります。
 そして覇王の首を守るため、甲賀に逆らって姿を消した鱗。京の色街に隠れた彼女ですが、甲賀の追っ手はそこにも迫り、客として訪れていた伊賀のDT忍び・斑猫の半坐を巻き込んで激しい戦いが始まることになります。

 死闘の末に辛うじて逃れる二人ですが、しかしその前には鱗の師を含む最強の面々・甲賀十忍衆が出現。その一番手の忍法から辛うじて逃れた鱗の一瞬の隙を突いたのは何と半坐――彼こそは伊賀の頭領・服部半蔵の弟子であり、鱗を捕らえるために接近したのであります。
 半蔵の手により「数珠髭の間」なるおぞましい拷問部屋に送り込まれる鱗。一方、鱗を奪回せんとする十忍衆は伊賀に迫るのですが……


 誰が敵で誰が味方か、油断できないのは戦国の――そして忍者のならい。特に本作のように、昆虫の能力を模した超絶の忍法を用いる忍者たちが跳梁する物語であればなおさらですが――しかしそれでもさすがに驚かされたのは第1巻ラストの半坐の裏切りです。
 確かに伊賀の忍びではあるものの、直情径行でお人好し、DTで美女に弱いという、ある意味非常にわかりやすい人物に見えた彼の行動は、誰一人として信用できぬ本作という物語の一つの象徴とすら感じられるのであります。
(それでもまあ、その直後に――となるのですが、それもまた彼らしい)

 しかしそんなことに感心している間に、鱗は鬼畜エロ漫画みたいな拷問部屋に放り込まれ、色々な意味で風前の灯火。そこから思わぬ――というかやっぱりな救い主によって助け出されたものの、彼女たちを襲うのは今度は伊賀最強の忍びたち――伊賀忍十座。
 面をつけて忍忍言ってる半蔵とその弟、ニョホニョホ笑う「番犬」と、ちょっとどうかと思う面子ではありますが、言うまでもなくその実力は折り紙付きであります、

 そしてもちろん甲賀十忍衆も黙っているはずもなく、ここに鱗と覇王の首を巡り、甲賀対伊賀の頂上決戦が勃発寸前に――いやはや、忍者好きとしてはたまらない展開です。


 何しろこれまで繰り返し述べてきたように、本作に登場する忍者たちは、敵も味方も、甲賀も伊賀も、いずれも昆虫の能力をモチーフとした忍法使いたち。
 蝶、斑猫、華潜、螻蛄、蟻地獄、さらには御器噛まで――モチーフである程度能力の想像がつくものいれば、全くつかないものまで様々ですが、驚くべき「実在の」昆虫たちの能力に基づいた忍法の数々は、問答無用の説得力を持ちます。

 第1巻同様、この巻でも忍者たちが忍法を放つたびに、毎回1ページ近くを使って忍法解説=昆虫の能力解説が行われるのですが、これがお約束とはいえ実に楽しい。
 異能の忍者のトーナメントバトルの始祖というべき山田風太郎の忍法帖においては、しばしば医学知識に基づいた忍法解説が描かれてきました。これが物語に実にもっともらしい説得力を与えていたことを思えば、本作はその直径――実に「忍者もの」らしい「忍者もの」であると言えるのかもしれません。


 さて、秀吉についた甲賀と、家康に仕える伊賀と――本作で描かれる忍者たちによる覇王の首争奪戦は、そのまま信長の後継者争いにまでつながっていくことになります。
 そんな巨大な歴史の流れの中の戦い、権力者同士の天下を巡る争いの中で、ちっぽけな虫の存在などは、まさしく竜車に向かう蟷螂の斧――ただ踏みつぶされるだけしかないのかもしれません。

 しかし一寸の虫にも五分の魂という言葉もあります。甲賀と伊賀の最強メンバー同士のバトルもさることながら、鱗が、半坐が、この先どんな意地を見せてくれるのか、大いに期待したいと感じさせられるのです。

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