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2018.06.27

皆川亮二『海王ダンテ』第5巻 今明かされる二人のルーツ、そしてこれからの戦い


 超古代の英知の結晶たる「書」を巡り、若き日のホレイショ・ネルソン(ダンテ)とナポレオン(ナポリオ)が世界を股に掛けて激突する大冒険活劇の最新巻であります。オーストラリアを舞台に幾度めかの激突を繰り広げる二人。その戦いのルーツとは果たして……

 かのジェームズ・クックとともに、任務でオーストラリアに向かったダンテと仲間たち。しかしそこで待ち受けていたのは、一足先にオーストラリアに上陸し、無法の限りを尽くすナポリオたちフランス軍と、ナポリオの兄・ジョゼによって送り込まれた海賊女王アルビダでありました。
 かつての敵にして今は頼もしき友であるオルカとともに辛うじて難敵たちとの戦いをくぐり抜けたダンテ。しかし魔導器を用いた代償は、彼の体に奇怪な痣として残ることになります。

 ダンテとナポリオに超人的な知識と力を与える「書」と魔導器。それはかつて彼らがまだ幼かった頃――コルシカ島に共に暮らす頃に出会ったものでした。
 育ての親であるコロンバス牧師の下、平和に暮らしてきたダンテ。しかしある日、ダンテはコロンバスが密かに隠してきた二冊の「書」のうち、「要素」と魔導器を託されることとなります。

 何者かが現れることを強く恐れるコロンバスは、ダンテに書の主たる資格があることを見届け、南極に眠るというもう一冊の「書」である「生命」を封印するように語るのですが――時すでに遅し。
 コロンバスとは因縁を持つらしい海賊の一団がコルシカ島を襲撃し、略奪と虐殺を繰り広げることとなります。コロンバスも殺され、その混乱の中で、ナポリオも「構成」の書を手にし、その主となるのでした。

 怒りに燃えて魔導器の力を解放したダンテによって海賊は撃退されたものの、「書」を狙う者たちはいずれまた現れるに違いない。これ以上故郷を巻き込まないため、そして(特にナポリオは)「書」の力を広い世界で試すため――ダンテはコロンバスの友人であるイギリスのネルソン家を頼り、そしてナポリオはフランス軍に潜り込むことになります。
 そんな二人の姿を、ジョゼが意味ありげに見つめるとも知らず……


 物語の始まりの時点において、既にそれぞれ「書」の持ち主として登場し、南極で「生命」の書の争奪戦を繰り広げたダンテとナポリオ。そんな二人の過去はこれまで断片的に語られてきましたが、ここでようやく物語冒頭と繋がることになります。
 ジョゼをして「できすぎ」と言わしめる優等生のダンテと、才に優れながらも鬱屈を抱えるナポリオ――と、少年時代から全く変わらない二人の腐れ縁は愉快ですが、しかしそんな二人の日常が一瞬にして奪われる様は、なかなかに痛ましいものがあります。

 もっとも、過去を描くといっても、実は謎はほとんど明かされていないのも事実であります。コロンバスはどこで「書」を手に入れ、何故海賊に追われていたのか。いやそもそも、何故彼は「書」の力と「生命」の書の危険性を知っていたのか。
 前巻においてクックが語るところによれば、「書」はピサロが新大陸から持ち帰り、博物館に収められていたはずなのですが……

 さらに言えばこれらの秘密をジョゼがあらかじめ知っていたかに見えるのも不審でありますし、個人的にはどうもダンテ自身にまだ秘密があるようなのが気になるのですが――いずれにせよ、かえって謎は深まってしまった印象があります。
 これは、見事に作者の掌の上で踊らされてしまっているのだと思いますが――もちろんそれは望むところであります。


 さて、こうして過去の物語は語られたものの、現在の戦いが終わったわけではありません。
 アボリジニの人々が恐れ、「構成」の書が求める「毒」とは何か――それがまだわからぬまま(これはまず間違いなく○○○だと思いますが)、フランス軍の奇襲と囚人たちの反乱の前に、ダンテたちが捕らわれ、さらなる窮地に追い込まれることとなります。

 全てを奪われ、絶望的な状況に陥ったダンテたちを救う者は誰か――この漫画における「大の男どもを千切っては投げ」枠となった感のあるアルビダ様の動向も含めて、先の展開が大いに気になるところです。


 それにしても――ナポリオによって機械仕掛けの体を与えられ、「総司令官」と呼ばれるようになった「構成」の書(の意志)。これ、どう考えてもナポリオが捨てられるフラグのような……


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