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2018.06.24

ことだま屋本舗EXステージ『戦国新撰組 結』 新たな魂を吹き込まれた物語

 舞台上で声優が舞台上に映し出される漫画の台詞をアフレコするという、LIVEリーディングイベントを観劇(聴劇?)して参りました。ほぼ一年前に上演されたことだま屋本舗EXステージ『戦国新撰組』の続編・完結編であります。

 朝日曼耀 作画、富沢義彦 原作の原作漫画についてはこれまでこのブログでも紹介して参りましたが、タイトルのとおりと言うべきか、戦国時代にタイムスリップしてしまった新撰組の活躍を描く物語であります。
 突然桶狭間の戦直前の時代に放り出され、全く勝手の異なる戦いの中で幾多の犠牲を出しつつも、徐々に頭角を現していく土方らの姿を、佐久間象山の息子・三浦啓之助の目を通じて描く作品です。

 乱戦のどさくさに紛れて啓之助に信長が射殺され(!)、その後釜に濃姫が座るという場面まで――全3巻の原作のうち、第2巻の中盤までが上演された前回。
 今回はこれを受けて残る後半部分――清洲城に来襲した今川義元との決戦、さらに竹中半兵衛が守る斎藤家との死闘が、敵味方同士に分かれた新撰組隊士たち同士の戦いを交えて描かれることになります。

 LIVEリーディングというイベントは、冒頭に述べたとおり漫画の画を(吹き出しは消して)そのままスクリーンに映し出し、それに声を当てていくというものだけに、内容は必然的に原作に忠実にならざるを得ません。
 それだけに内容的には原作既読者には(当たり前ですが)目新しさはない――はずなのですが、しかし声優の声が付いてみると、物語がまた全く異なったものとなって見えてくるのが面白いところであります。

 漫画を読んでいる時に何となく脳内で再生しているのとは異なり、生きている人間一人一人がそれぞれのキャラクターとして喋る――本作のようなキャラクター数がかなり多い作品では、それがある意味物語の輪郭を明確にしていくものだと、再確認させられました。
 実は原作の方は、正直に申し上げて後半はかなり駆け足になった印象があるのですが、それがこのLIVEリーディングでは、違和感や不足感を感じさせず、むしろ状況が刻一刻と変わっていく緊迫感を醸し出していたのも、この声の力に依るところが大きいのでしょう。

 ちなみに主人公の三浦啓之助役は、前回と異なり酒井広大が演じていたのですが、前回にも勝るとも劣らぬ啓之助っぷり――特にラストにこれまでの自分を捨て、新たな道を撰ぼうと踏み出す場面はなかなかに良かったと思います。

(しかし前回もそうだったと思いますが、RDJをモデルにした今川義元の声を、「あの声優」チックに演じるのはズルくも楽しかったです)


 なお、今回は本編の前に同じ原作者の作品(作画 たみ)『さんばか』を同形式で上演。こちらは寛政年間の江戸を舞台に、戯作者を夢見る少年・菊池久徳と、戯作ファンの三人娘が風呂屋を(主な)舞台に繰り広げるお色気多めの時代コメディであります。

 原作漫画を読んだのはかなり前でしたが、男臭い『戦国新撰組』に比べると、グッと華やかな内容で、女の子たちがわちゃわちゃと騒がしい展開は、これはこれでこの媒体にかなり似合う――という印象。
 映画で言えば本編前の併映の短編といった趣きですが、ちょうど良い塩梅の作品であったと思います。


 何はともあれ、『戦国新撰組』と『さんばか』――漫画で楽しんだ物語をこうして新たな魂を吹き込んだ形で追体験するというのは、なかなか楽しい経験でありました。機会があれば、またぜひ。



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