« 横田順彌『星影の伝説』 ハレー彗星輝く夜の怪事と愛 | トップページ | 逢坂みえこ『獣医者正宗捕物帳』第1巻 二重のパロディが描く人の情 »

2018.06.02

宇野比呂士『天空の覇者Z』第6巻 Z最大の危機!? 変幻自在の怪物たちの襲撃

 動力炉が暴走し爆発寸前の「聖なる道」の切り離しに苦戦するも、ネモの機転により辛うじて難を逃れたZ。しかしその内部に変幻自在の獣人・ドッペルが出現、捕虜となったベイルマンを狙う。さらにドッペルが持ち込んだ生物兵器・ジェネシスにより艦内は汚染され、天馬たちは絶体絶命の窮地に……

 要塞島での冒険から超兵器同士の空中戦と展開してきた第三部イタリア編もいよいよ最終局面。そしてこの巻では作中きっての異色編、ジェネシス編が始まることになります。

 Zとの戦闘力に圧倒されつつも、Zとアンジェリーナを葬るため、強制ドッキングした「聖なる道」号のT鉱炉を自爆させ、道連れにしようとするベイルマン局長。「聖なる道」のドッキングアームを解除するため乗り込んだ天馬の前に現れたのは、機械人間と化した「おッちゃん」――かつてZ奪取の際に自らの身を擲った反ナチス同盟の闘士でした。
 既に自分の意思を失い、獣性細胞によって金属を同化するサボテンの能力を与えられた上で(この辺りの真面目さが作者らしい)、機械を埋め込まれた戦士と化したおッちゃん。しかし彼に対して天馬はその刃を振るうことができず、代わって銃を向けるギヌメール(もう復活してる)ですが、銃弾すら吸収する相手に窮地に……

 そんな中、T鉱炉の暴走による反重力化でZと「聖なる道」が共に上昇していることに気づいたネモは、Zをわざと横転させて下に合体していた「聖なる道」をZの上側に入れ替えることに成功。「聖なる道」の浮力は自らのアームを破壊し、Zを残して上昇した末に爆発! 間一髪脱出した天馬たち(+ベイルマン)も無事にZに帰還するのでした。

 こうして難を逃れたZは一時の静けさを取り戻し、東に針路をとって航行を続けることになります。天馬とアンジェリーナも天馬号で夜空の散歩と洒落込み、いいムードになるのですが――しかし二人が帰ってみれば艦内では奇怪なカビが繁茂し、それに触れた者は一瞬のうちに体中の養分水分を吸い取られていたのでした。カビに見えたものは獣性細胞、しかしこの細胞は自分の意思を持つように人間に襲いかかるではありませんか。
 時を同じくして、異変を察知して捕虜となったベイルマンの牢に向かったJは、そこで彼女に刃を向ける天馬に遭遇、ブーメラン刀で一撃を食らわせてみれば、彼の眼の前で「天馬」は奇怪な不定形の怪物の本性を見せ、艦内に紛れ込んでしまうのでした。

 この怪物こそは他者に瓜二つに変身する能力を持つ獣人、変幻自在の暗殺者・ドッペル。そして謎の獣性細胞は生物兵器・ジェネシス――ベイルマン暗殺のために送り込まれたドッペルは、大胆不敵にもZの艦橋に現れ、ゲームを提案します。天馬たちはジェネシスがZに蔓延することを防ぎ、ドッペルは一度変身した相手には二度と変身せずに、天馬たちを妨害すると……
 しかし指揮を取るべきネモは閉鎖された感染区域で消息を絶ち、艦内には不安が漂います。状況を打開すべくウェル開発のマリンスーツをまとい、感染区域に潜入した天馬・ウェル・エリカ。しかしそこは壁から天井まで全てが粘菌状のジェネシスに覆われた悪夢のような世界に変わっていたのであります。

 そして突如活性化したジェネシスに襲われ、マリンスーツを破られて肌を露出することとなった天馬たち。火炎放射器の攻撃も効果なく、逃げ惑う一行は、弾薬庫近くに倒れたネモを発見するのですが、彼は心肺停止状態。絶体絶命の中、ジェネシスに追い詰められた一行ですが――しかしネモが感染していなかったことから、ジェネシスが低温下で活動を停止すること、生物の熱を探知して襲いかかることをウェルが見破ります。そして冷却されている弾薬庫に逃げ込んだ一行は、ジェネシスから逃れることに成功するのでした。

 しかしその間もギヌメールらに変身したドッペルによる妨害によって艦内で増殖していくジェネシス。天馬からジェネシスの弱点を聞いたギヌメールはZを上昇させ、氷点下の外気を取り込もうとするのですが――しかし既にウェルに変身したドッペルにより機関部動力部が細工され、さらにギヌメールまでがジェネシスに感染することとなります。
 ネモとギヌメールの治療のため、医療室に急ぐ一行。そこに詰めていたアンジェリーナの前にエリカに変身したドッペルが現れ、彼女を連れ去ろうとした時、天馬が駆けつけて――次巻に続きます。

 これまでの大空を舞台とした豪快かつ勇壮な物語から一転、閉鎖空間ホラーに突入したジェネシス編。連載時はそのあまりの落差に驚いたのですが――このエピソードの意味はかなり後になって知ることになります。
 それはさておき、いまだ滅ぼす手段の見えないジェネシスを如何に倒すのか、そしてこちらも無敵のドッペルの正体を如何に暴くのか――この巻でもその知恵で窮地を切り抜けたウェルの活躍に期待であります。

『天空の覇者Z』第6巻(宇野比呂士 講談社少年マガジンコミックス) Amazon
天空の覇者Z 6 (少年マガジンコミックス)

関連記事
 宇野比呂士『天空の覇者Z』第1巻 幻の名作の始まり――快男児、天空に舞う!
 宇野比呂士『天空の覇者Z』第2巻 天馬vs死神、天馬vs獣人!
 宇野比呂士『天空の覇者Z』第3巻 激突、巨大空中兵器の死闘!
 宇野比呂士『天空の覇者Z』第4巻 流星の剣の目覚めるとき
 宇野比呂士『天空の覇者Z』第5巻 激突! 新生Zvs第三の超兵器

|

« 横田順彌『星影の伝説』 ハレー彗星輝く夜の怪事と愛 | トップページ | 逢坂みえこ『獣医者正宗捕物帳』第1巻 二重のパロディが描く人の情 »

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/13655/66766871

この記事へのトラックバック一覧です: 宇野比呂士『天空の覇者Z』第6巻 Z最大の危機!? 変幻自在の怪物たちの襲撃:

« 横田順彌『星影の伝説』 ハレー彗星輝く夜の怪事と愛 | トップページ | 逢坂みえこ『獣医者正宗捕物帳』第1巻 二重のパロディが描く人の情 »