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2018.07.01

石川ローズ『あをによし、それもよし』第1巻 ミニマリスト、奈良時代を満喫!?


 私も色々なタイムスリップ時代劇に触れてきましたが、これだけユニークな漫画はちょっとないのではないでしょうか。現代のミニマリストが奈良時代にタイムスリップし、「あをによし奈良の都は咲く花の薫ふがごとく今盛りなり」と読んだ小野老と共同生活を始めるというのですから……

 ある日突然、奈良時代にタイムスリップしてしまった現代のサラリーマン・山上。人のいい役人の小野老と出会い、彼の家にやっかいになることになった山上は、物もない、電気もない奈良時代に大いに戸惑――わない。むしろ大喜びなのです。
 実は山上はミニマリスト、物がない生活はむしろ大歓迎、そして衣食住全てが天然素材100%のこの時代は、彼にとっては理想郷なのであります。

 というわけで本作では、大いに奈良時代をエンジョイする山上と、彼の行動がきっかけで何となく出世してしまう老のユルくも楽しい奈良スローライフがコミカルに描かれていくことになります。


 本作のタイトルにも使われている「あをによし(青丹よし)」は「奈良」の枕詞。冒頭に引用した和歌で用いられ、作中で奈良と聞いた山上が思わず呟いてしまったように、「奈良」と言えば「あをによし」と自然に浮かんできます。
 が(これも作中でツッコまれているように)そもそも「あをによし」とは如何なる意味なのか、そしてこの和歌を詠んだのは誰なのか、ご存じない方も多いのではないでしょうか?

 かく言う私が知らなかったのですが、そんな知っているようでほとんど知らない――教科書にほんの少し載っていた程度しかしらない奈良時代の姿を、本作はタイムスリップした現代人の目を通じて浮かび上がらせます。

 それにしてもユニークなのは、普通、現代人が過去の時代にタイムスリップした場合、何とか現代に帰ろうとしたり、あるいは自分にとって都合がいいように歴史を変えようとしたりするものですが――本作の主人公の場合、あっさりと奈良時代に適応し、すっかり安住してしまうことであります。
 その理由に、彼がミニマリストだったから、というロジックを持ち出してくるのがまた実に楽しいのですが、何しろ本作はナンセンスギャグ、そのユルさこそが魅力の一つと言うべきでしょう。

 そしてその山上のツッコミを交えて描かれる奈良時代像は、彼同様にごく一般的な知識しか持ち合わせていない我々現代の読者にとっても「あるある」感満載で、実に楽しいのであります。


 さて、山上という主人公の名の時点でお気付きの方も多いと思いますが、実は主人公こそは、これまた歴史の教科書に必ず載っているあの歌を詠んだ人物、という設定。
 読むだけで気の滅入るほどリアルなあの歌ですが、しかしミニマリスト視点から見ればどうなのか――この巻の時点ではまだ描かれていませんが、大いに楽しみになるところであります。

 そしてもう一つ、タイムスリップ時代劇にはつきものの、もう一人の――もこの巻のラストに登場。
 それがまたとんでもない人物の名を名乗っているのに驚かされますが、図らずもこの人物と対立することになった山上の運命はどうなるのか……

 などと、真剣に心配するようなトーンの作品ではありませんが、こちらも気になるところなのです。

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