碧也ぴんく『星のとりで 箱館新戦記』第2巻 辿り着いた希望の砦に集う綺羅星
箱館戦争で五稜郭に依って戦った、土方歳三をはじめとする旧幕府軍の男たちを描く『星のとりで』、待望の第2巻であります。蝦夷地に上陸し、五稜郭を目指す旧幕府軍。その中に加わった幼い新選組隊士たちが知ることとなる戦場の現実とは……
鳥羽伏見の戦で大打撃を受け、将軍が恭順の意を示しても、なお闘志を失わなず、北へ北へとその戦場を移していった旧幕府軍の侍たち。
その最中に新選組に加わった四人の隊士――市村鉄之助、田村銀之助、玉置良蔵、上田馬之丞は、元服をしたかしないかの年齢ながら、土方を信じて行動を共にすることになります。
北上の最中、陸軍隊や額兵隊、さらには唐津藩の残存兵などを加えた一行は、仙台を経て、蝦夷地に上陸。鷲ノ木浜から箱館を目指す土方と大鳥圭介は、二手に分かれて進軍することになるのですが……
ついに土方や少年たちが、物語の真の舞台である五稜郭にたどり着くこの第2巻。そこで彼らがいかなる戦いを繰り広げることになるか――実はそれはまだまだ先の話であります。
この巻で描かれるのは、新天地に希望を抱く彼らの姿――自分たちを謀反人ではなく、対等の交戦国として胸を張ってこの北の地に立とうとする、希望に燃える彼らの姿なのです。
そしてまさしく「星のとりで」である五稜郭に集った彼らの姿は、まさしく綺羅星というべき輝きを放ちます。
第1巻でもその俊英ぶりを発揮した星殉太郎、胸に複雑なものを抱えつつも一心に戦う野村利三郎&相馬肇、さらに今回初登場(のはず)の古屋佐久左衛門など――見ているだけで胸躍るような豪傑・英傑ぶりであります。
正直なところ、土方たちに比べれば知名度という点では劣る彼らではありますが、しかし史実でのその姿を見れば、一人一人が物語の主人公になれそうな人間ばかり。
そんな面々の姿を見ることができるだけでも、本作を読む価値はあると――いささか大げさかもしれませんが、思ってしまうのです(特にこの巻では、古屋佐久左衛門と高松凌雲兄弟のキャラの濃さには感心いたします)。
そしてそんな彼らを束ねるのが土方ですが――現時点ではまとめ役に徹しているというか、一歩引いた「大人」の立場で要所要所を締めているという印象。
それはもちろん、物語が少年たちの視点から描かれていることによるところは大きいのだと思いますが――かつての「鬼」の副長が、五稜郭では「慈母」のように慕われていたという、この時期の土方の姿を巧みに浮き彫りにしていると感じられます。
もっともこの巻のラストでは「蜥蜴」呼ばわりされてしまうのですが、それはさておき……
しかし、あくまでも彼らが居るのは戦場であります。箱館に、五稜郭に入る直前の戦いで、少年たちは悲しい別れを経験。さらに一人が病で倒れることになります。
そして、松前藩を説得すべく向かった松前でも戦闘が行われた末、少年たちは思わぬ危機に見舞われることになります。
希望が一転危機に変わる戦場。そこで少年たちが何を見るのか、そしてそんな少年たちに、土方ら大人たちはどのように接するのか?
そして、この先待ち受ける真の「戦争」において、彼らが如何に戦うのか――物語はこれからが本番というべきなのでしょう。
ちなみにこの巻には、番外編として旧幕府軍に参陣する直前の星殉太郎と細谷十太夫の物語が収録されています。
仙台藩において鴉組こと衝撃隊を率いて活躍しつつも、仙台藩降伏を目前に殉太郎とは道を違えた十太夫。なおも華々しい戦いを求めた殉太郎を支え、十太夫は闇に沈む道を選ぶのですが……
しかしついに五稜郭に入ることはなかった彼もまた、綺羅星の一つであったことを浮き彫りにしてみせる本作は、まさしく『星のとりで』という物語の番外編に相応しい内容と感じます。
「星」の陰の闇夜の「鴉」――男と男の熱い友情が胸に響く好編です。
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