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2018.07.26

DOUBLE-S『イサック』第4巻 宿敵大暴走!? 混沌の防衛戦終結


 欧州に渡った日本の銃士・イサックの戦いはまだまだ続き、ローゼンハイム市防衛戦もいよいよ佳境。不倶戴天の敵であるロレンツォの狙撃によりほとんど行動不能となり、スピノラ軍の攻撃を前に追い詰められるイサックたちに生存の目はあるのか。そして事態はあまりにも意外な方向に……

 その凄まじい狙撃の腕によって幾度となくフックスブルク城のプリンツ・ハインリッヒを救い、ついにアルフォンソ王太子とスピノラ将軍を退けたイサック。
 次いでプリンツとともにローゼンハイム市防衛に向かったイサックですが、その前に彼の仇敵であり、欧州に渡った理由であるロレンツォが立ち塞がることになります。

 スピノラ方に加わり、ローゼンハイム市に籠城した人々を次々と狙撃していくロレンツォ。一方のイサックは片腕を負傷して銃の扱いもままならぬ状況ですが、ロレンツォを封じないことには攻撃も防御もできない状況であります。
 そこでイサックを助けるのは、彼と行動をともにしてきた少女・ゼッタ――イサックに代わって彼女が引き金を引いた銃弾はロレンツォを捕らえるのか!?


 という非常に緊迫した場面から始まるこの第4巻ですが――ここで予想外の姿を晒したロレンツォ。詳しくは述べませんが、一ページブチ抜きで描かれたそれは、あまりにも衝撃的というか、一言で言ってキモい。変態以外の何ものでもありません。

 ……何はともあれこの銃弾によって戦意を失い、彼を気に入ったアルフォンソ王太子とともに後方に下がることになったロレンツォ。が、そこに、プリンツの要請に応えて明日の夜にはイギリス軍の援軍が市に到着するとの一報が入ることになります。
 それを知ったスピノラは、援軍到着までに決着をつけるべく、総攻撃を決意。それに対してイサックも背水の陣、いや背火の陣とも言うべき構えで決戦を挑みます。

 一方、アルフォンソに招かれたロレンツォですが、戦場の混沌を求めてやまない彼と、さっさと戦争を終えて遊び暮らしたいと言わんばかりの王太子は水と油。王太子の言葉に怒りを燃やしたロレンツォは……


 これまではイサックが狙撃のみならず武術の腕、そして戦術の冴えで大暴れしてきた本作ですが、この巻をかき回したのは完全にロレンツォ。
 先に述べた変態ぶりだけでも驚かされますが、まさかそれ以上の驚きが待っているとは――いやはや、ある意味、戦いを始め、終わらせたのは彼と言っても過言ではありません。

 正直なところ、設定や描写などは非常にリアルであるだけに(この巻で描かれた、地縁社会と密着した当時の傭兵団の在り方には感心)、一人のキャラクターによって歴史が左右されるかのような展開はどうかなあ、とは思いますが、ここはギリギリ許容範囲と言うべきでしょうか。
 あのイサックと真っ正面から対峙し、そして彼を圧倒するのであれば、これくらいのキャラクターでなければならないのは間違いないのですから。

 そしてひとまず終結したローゼンハイム市防衛戦ですが――しかし二人の対決は終わりません。思わぬ窮地に陥ったプリンツを救うため死地に飛び込むイサックと、待ち受けるロレンツォ。己の義のため、ついに死を覚悟したイサックの刀はロレンツォを捕らえるのか!?
 もうこのまま結末に突入してもおかしくない勢いで次巻に続きます。


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