« 久賀理世『倫敦千夜一夜物語 ふたりの城の夢のまた夢』 美しき妹が夢見るもの | トップページ | 松尾清貴『南総里見八犬伝 1 結城合戦始末』(その一) 定番の、しかし抜群に面白い「八犬伝」リライト »

2018.07.21

宇野比呂士『天空の覇者Z』第13巻 最終章突入! 混迷への出撃

 巨大鍾乳洞を抜け、レーベンスボルンに向かうZ。Zに巨大昆虫の群れが襲いかかる中、突如ヒトラーがZ内に姿を現す。自分の獣性細胞を奪おうとするヒトラーに相打ち覚悟で仕掛けるネモだが、その攻撃を新たな能力で無効にするヒトラー。その能力をさらに打ち消す力を見せるアンジェリーナだが……

 ついに残すところあと4巻、冒頭の日本編のエピローグを経て、ここから最終章に突入であります。しかし物語はここからさらに急展開、またもや想像を絶する展開を迎えることになります。

 回復した華奈、和解した西郷を載せて日本上空を行くZ。天馬の誕生日を祝うZ挙げての仮装パーティーにネモも参加しての大騒ぎですが、しかしこれは死闘の前の最後の安らぎであります。レーベンスボルンでの決戦を前に、華奈は西郷とともに日本に残ります。既に甦っていた記憶と天馬への想いを胸に……

 一方、カラクームに置いてけぼりとなったクブリックとリヒトホーフェンは、味方であるはずのキルシュナーとバルクホルンの攻撃を受けて爆炎の中に姿を消し(クブリックはともかく死亡確認されてしまったレッドバロンは……)、ヴァルキュリア隊の任務終了にビビる影武者ヒトラーはカプセルの中に眠る真ヒトラーを抹殺しようとしますが、既にヒトラーは姿を消していたのでした。
 アンジェリーナの覚醒と同時に獣性細胞を暴走させ、自らの獣性細胞に食われたかに見えたヒトラー。サナギのような姿となり、徐々に生命活動が低下していく彼を救うため、リーフェンシュタール博士は、あらゆる生命を作り変える力を持つというレーベンスボルンを目指します。そして影武者ヒトラーも本物を抹殺すべく後を追うのでした。

 そしてZはシベリアの地割れから巨大鍾乳洞に突入、一路地底をレーベンスボルンに向かいます。地上とは異なる生態系が支配するその世界はあたかも空洞地底世界――史実でもヒトラーが地球空洞説を信じていたというのは有名な話ですが、ここでそれを彷彿とさせるレトロ地底世界を出してくるのが実に嬉しい。と、この手の世界の定石どおり、突如襲いくる超巨大昆虫の群れ。羽根のついたムカデとも言うべき姿のこの昆虫は、獣性細胞で構成され、Zや戦闘機の攻撃で粉砕されても、その破片が再生・変形して襲い掛かってくる難敵であります。
 ネモによって士官見習いに徴用されていたベイルマンの機転により、血清ワクチン弾と流星の剣で駆除されていく昆虫。しかし多勢に無勢、包囲された天馬とJが絶体絶命のピンチとなった時、一瞬時間が巻き戻ったかのような感覚が天馬たちを襲い、次の瞬間、昆虫たちが何かに怯えるように一斉にZから逃げていくのですが……

 突如その場に現れたのは獣性細胞の王・ヒトラー――サナギになったのではなかったのか、以前通りの美しい姿で出現したヒトラーは、空間に扉を開き、艦長室のネモとベイルマンの前に出現。ネモを人質に取るようにZの艦長室に現れます。ヒトラーが現れたのはZ奪還のためか? いや、彼が取り戻そうとするのは彼がネモにかつて与えた獣性細胞であります。天馬との戦いで喪った獣性細胞を取り戻そうとネモの体と自分の手を融合させるヒトラーですが――その時、ネモはベイルマンに後事を託すと、自分の体を拳銃で撃った!
 その銃弾こそは血清ワクチン弾、空間歪曲能力を持つヒトラーを倒すためには、自分と一体化した時に、獣性細胞を滅するワクチン弾を打ち込むしかないという、相打ち覚悟の決死の攻撃であります。

 しかし天馬との死闘の中で新たに目覚めたヒトラーの「外側に立つ能力」――それは時間の「扉」を開く力、すなわち時間を巻き戻す能力! 自分に都合の悪い結果は巻き戻して常に正しい選択肢を選び続けることができるという反則級の能力です。その力でワクチン弾を打ち込まれる直前に巻き戻した彼は拳銃を奪うと、ネモから獣性細胞を強奪、ネモは枯れ木のようにその場に倒れるのでした。
 が、そこで天馬が空間操作の暇もない超速度で流星の剣でヒトラーを両断! これも巻き戻して無効化しようとするヒトラーですが、しかし何故か時は戻りません。

 そこに現れたのは、ヒトラーの力とは正反対の力、時間を加速させる力の持ち主――アンジェリーナ。しかしその姿は何故かセクシーなランジェリー――なのはともかく、髪は腰まで届くほど長く、体の各所には宝石を思わせる物質が突出した美しくも奇怪な姿であります。その姿を最終変身形態と呼ぶヒトラーは、自分の窮地にも関わらず彼女の出現を喜ぶように見えるのですが……


 ヒトラー来襲、ネモ死亡(?)、アンジェ変身と急展開の連続に驚かされる最終章序盤。そもそもヒトラーはサナギになったのでは――? と大いに混迷の展開であります。どうもヒトラーとアンジェが揃うとややこしい展開になりますが、さて二人の出会いがどう物語を動かすのか、次巻に続きます。


『天空の覇者Z』第13巻(宇野比呂士 講談社少年マガジンコミックス) Amazon
天空の覇者Z 13 (少年マガジンコミックス)


関連記事
 宇野比呂士『天空の覇者Z』第1巻 幻の名作の始まり――快男児、天空に舞う!
 宇野比呂士『天空の覇者Z』第2巻 天馬vs死神、天馬vs獣人!
 宇野比呂士『天空の覇者Z』第3巻 激突、巨大空中兵器の死闘!
 宇野比呂士『天空の覇者Z』第4巻 流星の剣の目覚めるとき
 宇野比呂士『天空の覇者Z』第5巻 激突! 新生Zvs第三の超兵器
 宇野比呂士『天空の覇者Z』第6巻 Z最大の危機!? 変幻自在の怪物たちの襲撃
 宇野比呂士『天空の覇者Z』第7巻 決戦開始!? 明かされゆく数々の秘密
 宇野比呂士『天空の覇者Z』第8巻 激闘カラクーム砂漠 そして理解不能の事態へ
 宇野比呂士『天空の覇者Z』第9巻 世界変容再び! 運命を超えるための死闘
 宇野比呂士『天空の覇者Z』第10巻 決着、Z対G! そして天馬新たなる旅立ち
 宇野比呂士『天空の覇者Z』第11巻 日本編開幕! 故郷で天馬を待つもの
 宇野比呂士『天空の覇者Z』第12巻 富士に甦る剣、帰ってきた天空の覇者

|

« 久賀理世『倫敦千夜一夜物語 ふたりの城の夢のまた夢』 美しき妹が夢見るもの | トップページ | 松尾清貴『南総里見八犬伝 1 結城合戦始末』(その一) 定番の、しかし抜群に面白い「八犬伝」リライト »

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/13655/66966116

この記事へのトラックバック一覧です: 宇野比呂士『天空の覇者Z』第13巻 最終章突入! 混迷への出撃:

« 久賀理世『倫敦千夜一夜物語 ふたりの城の夢のまた夢』 美しき妹が夢見るもの | トップページ | 松尾清貴『南総里見八犬伝 1 結城合戦始末』(その一) 定番の、しかし抜群に面白い「八犬伝」リライト »