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2018.07.28

宇野比呂士『天空の覇者Z』第14巻 出現、最後の超兵器! そして成就する予言

 自分が余命わずかと知り、ヒトラーに従ってZから姿を消すアンジェリーナ。ヒトラーは最後の超兵器M号でツングースに現れた影武者からM号を奪い、レーベンスボルンに突入する。一足早く到着していたZに対し、その力を誇示するヒトラーとM。さらにそこにヴァルキュリア戦隊までもが現れる……

 時間と空間を操るヒトラーの能力をものともせず、流星の剣で両断した天馬。そしてヒトラーが時間を巻き戻すのを防いだのは、その場に現れた最終変身形態のアンジェリーナだったのですが――ヒトラーは苦しい息の下から、彼女が自分の能力を打ち消す「時を加速させる」能力の持ち主であること、そしてそれゆえに彼女の肉体年齢も加速を続け、あと7日あまりで老衰死すると告げます。
 自分だけがそれを止められるとアンジェを誘うヒトラー。以前、イタリアでヒトラーが予言した通りなのか、アンジェは自ら望んだように(理屈はよくわからないものの分身だったらしい)ヒトラーと共にその場から消えるのでした。

 一度は落ち込みながらも、体内のごく僅かな獣性細胞で命をつなぐネモ艦長からネモとヒトラー、そして自分の両親の過去を聞かされ、アンジェを信じろと諭されたことにより立ち上がる天馬。そして溶岩の噴出やZ鉱による重力偏在現象により荒れ狂う地底水流といった難所に窮地に陥ったZも、正式に艦長の座に就いたベイルマンの指揮により突破します(ここで彼女に不信感を抱くクルーの中で、唯一Jのみが彼女の覚悟を感じ取って信じるのがイイのですが……)
 辿り着いたレーベンスボルンは、頭上の氷を通じて日差しが注ぎ、海の中に緑の島々が浮かぶ美しい世界――北極の地下に誕生した世界。前巻の紹介でも触れましたが、本当に極地の地底空洞世界が登場するとは! と感動であります。そしてZのクルーは、純獣性細胞廃絶のために探索を開始するのですが……

 一方、蛹化したヒトラーとともにツングース爆心地に辿り着いたリーフェンシュタール博士ですが、そこに出現したのは巨大な円盤型の空中戦艦――千年王国(ミレニアム)号。Zをはじめとする超兵器の母艦、ヒトラーの旗艦であるこのMに乗るのはヒトラーの「影」、ついに自分が本物になろうと行動を始めた「影」は、リーフェンシュタールたちに照準を合わせるのですが――その爆炎の中から彼女を守り現れたのはヒトラー……?
 「?」というのはその姿が少年と化していたためですが、空間を操って瞬く間にMと戦闘機たちを沈黙させた彼は、リーフェンシュタールとともにMに遷移し、もう用済みとばかりに「影」に制裁を加えると、ただ二人、いやアンジェと三人でレーベンスボルンに向かいます。そしてその中で眠りについたアンジェの精神が訪れたのは「記憶の宮殿」。過去の記憶が集積した空間の中で、封印された過去を知って目覚めた彼女は、リーフェンシュタールを「ママ」と呼ぶのですが……

 そして純獣性細胞を探す天馬たちの前に出現したM。完全に不意を突かれた天馬たちを救うため、ベイルマンはアンジェの存在も構わず、Mに向けてZ砲とG砲を同時発射、巨大なZ砲弾と高速のG砲弾はビリヤードのブレイクショットのように衝突、散弾となったG砲弾が一斉にMに襲いかかる――が、空間を加工して着弾の瞬間になんとMごと消してしまうという、桁外れのヒトラーの力の前に、攻撃は失敗することになります。
 が、さすがにこの行為はヒトラーに――正確には彼の巻き戻る時を中和するアンジェに負担が大きく、真っ向からの空戦に移行することになります。Mから発進した無数の無線誘導による重装甲の空中砲台に対し、砲身を狙って機銃を撃ち込むという神業で天馬が応戦する間に、砲撃戦でMに挑むZですが――そこに四つの機影が! リップフェルト、キルシュナー、マルセイユ、バルクホルン――ヒトラーの子とも言うべきヴァルキュリア戦隊までもが、レーベンスボルンに現れたのであります(どうやって来たのかと思えば、ちゃんと空中母艦があるのですね)。

 しかしもはや抜き身状態の天馬にはそれも小さなこと、一気にヒトラーと決着をつけんとする天馬は――というところで次巻に続きます。


 ついに始まったヒトラーとの決戦。まさかのヒトラー側の空中戦艦(しかも円盤型)Mも出現し、最後まで巨大空中兵器戦が用意されているのも嬉しいところです。

 そして紹介では端折りましたが、ツングースに落下したT鉱隕石と獣性細胞が作り出したはずのレーベンスボルンが何故北極地下にあるのか、という説明や、純獣性細胞の正体(性質)など、理系の説明もきっちりしていたところが、本作の特徴の一つであるなあ……と、改めて感心した次第であります。


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