野口賢『幕末転生伝 新選組リベリオン』第1巻 転生+タイムスリップの新選組奇譚!?
歴史ものでも転生を題材としたものは既に珍しくはありませんが、その波がついに新選組にも来たか――とサブタイトルを見て思わされた本作。しかし主人公は現代の高校生ではあるものの、どうやら色々と捻った内容である様子。誰がどのように転生したのか、大いに気になる作品です。
超高校生級の空手の実力を持ちながらも、トラブルを起こして今は空手を離れ、定時制高校に通う幸田ヒロユキ。
ある晩、以前叩きのめしたチンピラが担ぎ出してきたMMA(総合格闘技)の実力者・菊池洋平とストリートファイトを繰り広げた彼は、一晩留置場で過ごした末に、罰として担任教師・奥山から神田川のドブさらいのボランティアを命じられるのでした。
不承不承掃除を始めようとしたヒロユキですが、気がつけば昼だったはずの周囲は夜となり、何よりもコンクリート製だった水道橋が木造の橋に。さらに着物姿の娘・ユキに助けを求められたヒロユキは、彼女を追いかけてきたサムライの格好をした連中と戦う羽目になります。
訳の分からぬまま、素手で日本刀と戦うことになったヒロユキ。そこに駆けつけたのはあの菊池――いまは藤堂平助(!)と名乗る彼は、サムライを撃退し、今が幕末であること、自分はヒロユキよりも2年前の時点に飛ばされたことを語るのでした。
ユキが持つ勅諚を狙って襲ってきたというサムライ――水戸天狗党の男たち。しかし彼らを撃退したのも束の間、次いで奇怪な風体と術を使う忍者――彦根鬼忍衆が襲いかかります。
さらに鬼忍衆の魔の手は、小石川の試衛館道場をも襲撃。試衛館の近藤勇らと合流したヒロユキたちは、襲いかかる忍者と対峙するのですが……
冒頭に述べたとおり、現代の高校生が主人公ということで、てっきり彼が幕末に転生して新選組隊士の体に入るのかと思いきや、体ごと幕末に転移したことで「?」となった本作。
これはむしろ転生ものというよりタイムスリップものでは――(事実、連載初回は「幕末時空旅行反逆譚」と冠されていた模様)と感じさせられるのですが、物語が進んでいくに連れて、本作がどうやら確かに転生ものらしい、ということが見えてきます。
忍者と命がけの戦いを繰り広げる中、近藤たちから「斎藤一」と呼ばれるヒロユキ。その言葉に応えるように、彼の中には、出会ったはずもない近藤たちの記憶がかすかに浮かぶことになります。
経験していない記憶、別の名前で呼びかける人々――この物語は、ヒロユキが斎藤一に転生するのではなく、斎藤一がヒロユキに転生していた(彼の前世であった)ようなのです。
そして彼以外の試衛館組――先に触れた菊池以外の面々も、どうもこの時代の人間ではない印象(特に近藤はどう見ても文系の眼鏡少年)。あるいは彼らもまた、同様に新選組隊士が転生し、そしてこの時代にタイムスリップしてきたのだとすれば、これは面白いことになりそうであります。
今では転生ものといえば、現代の人間が過去や異世界に転生するものですが、かつてのそれは、過去や異世界の人間が現代に転生してきたものが大半であった印象があります。本作はかつてのそれにさらにタイムスリップという要素を加えたのだとすれば、類作はほとんどないと言ってよいでしょう。
いや、作中で近藤の妻・つねが、斉藤に対して「今度は勝ちましょう ○○○○に」(敢えて伏せます)と語りかけるところを見れば、さらにややこしいことにもなりそうなのですが……
以前、冲方丁原作でやはり変格の新選組ものである『サンクチュアリ』を発表している作者。あちらは惜しくも中途で物語が終わっていますが、さて本作はどうなるのか――この巻ではまだ顔を出していない試衛館組の土方と源さんのキャラクターも含め、なかなかに気になるところであります。
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