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2018.08.26

山田秋太郎『墓場の七人』第3巻 急転直下の決着!? それでも繋がっていくもの


 墓場村を守るために集められた七人と、生ける死者・屍人たちの死闘もこの第3巻で急転直下決着。墓場村が待ちわびていた公儀の援兵があろうことか住人皆殺しを宣言するという絶望的な状況の下で、最後の戦いが繰り広げられることとなります。そしてその先に一色と七平太を待つ運命とは……

 屍人から墓場村を守るため、七平太ら村長の子供たちによって集められた、一色・邪魅羅・暮威・由利丸・百山・千両箱・椿團十郎ら七人の猛者。緒戦で屍人を蹴散らしたものの、次なる刺客・がしゃどくろ戦で戦力を消耗した一色たちは、墓場村の住人とともに戦うため、隠された武器を探すために村を離れることになります。
 しかしその間に、屍人の恐るべき秘密――屍人に噛まれた者もまた屍人になるという現象により、村人が次々と屍人になっていくことに……

 という絶体絶命の状態から始まった第3巻。自分の肉親や親しい者たちがゾンビに、というのは定番の展開ではありますが、しかし人間の感情としてそれを乗り越えるのは至難の業であります。
 一体どうやってこの窮地を――と思いきや、これまで唯一その能力を明かしていなかった椿團十郎がとんでもない花道を見せてくれるのにひっくり返ったのですが、さてここからが急展開の連続であります。

 この修羅場に、突如墓場村に現れた公儀からの使者を名乗る男・赤舌。そもそもこの墓場村は幕府の直轄、七人の任務も公儀の援兵が到着する十日後までに村を守ることだったのですが――しかし赤舌は村の鏖殺を宣言、しかもこの事態は村長が招いたこととまで言い放つのでした。
 生き延びたければ二日後に村長の首を差し出せと言い残して一端姿を消した赤舌。この事態に村は真っ二つに割れ、村を守るはずの一色も牢に入れられるという、最悪の展開になってしまうのであります。


 これもゾンビものの定番である、閉鎖空間での立て籠もりからの、人間同士の不信と対立。いずれ必ず描かれるであろうと思っておりましたし、また、これまた定番で公儀の援兵というのも絶対怪しいと思っていたところ、こう組み合わせてくるか、と感心させられます。
 ここで普通のゾンビものであれば、あるいは村長が――ということにもなりかねませんが、しかし本作はあくまでもゾンビに屈せず真っ正面から戦いを挑む者たちの物語。この絶体絶命の状況から、一色との絆によって大きく成長を遂げた七平太の下、墓場の七人と村人たちは一致団結して決戦に臨むことになります。

 しかし敵方には、かつて一色の両親を殺し、村を滅ぼした「傷の男」――屍人の将とも言うべき謎の存在が。かくて戦いは、赤舌と彼の配下の三人の鬼佗番、そして傷の男と、一色たちのバトルへと展開することに……


 と、大いに盛り上がるのですが、ここからの最終決戦がわずか3回で描かれてしまうのが非常に勿体ない。当然ながら――とはあまり言いたくないのですが――一つ一つの戦い、一人一人の見せ場はかなり切り詰められた形となってしまい、戦いの果てに散っていく猛者たちのインパクトが薄れてしまうのが、何とも残念であります。
(これくらいあっさりしていた方が「らしい」、というのはさすがに無理があるでしょう)

 もちろんラスト1話前に、一色に関するとんでもない真実が明かされるという展開は悪くありませんし、そこから七平太に「襷」が渡され、屍人には決してできない、人間だからこそできる勝利の形に繋いでいくという展開も実にいいと思います。
 その意味では本作は、きっちりと描くべき
を描いてはいるのですが――やはり駆け足故の描写不足は否めません。

 もちろんこのような形になるには色々と事情もあるのだとは思いますが、随所に光るものがあっただけに、あと1巻あれば――感じてしまった次第であります。


 ちなみに残念といえば、この第3巻は電子書籍のみの刊行。私個人としては電子書籍中心で作品にアクセスしているので、それはそれでいいのですが、しかし発売日の情報がほとんど全く伝わってこないのには弱りました。
(第3巻の紹介に間が空いてしまったのは、そういう事情が――というのはもちろん言い訳なのですが)


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