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2018.08.25

殿ヶ谷美由記『だんだらごはん』第3巻 再会、温め直す一と仲間たちの想い


 「食」から描くユニークな新撰組物語の第3巻――といっても新撰組誕生はまだもう少し先、この巻では浪士組として上洛しながら、清河八郎の裏切りによって放り出される形となった試衛館組(と芹沢一派)の姿が描かれることとなります。そして総司と再会した斎藤一は……

 幕府に仕える浪士組として活躍するために京に上った近藤・土方・沖田ら試衛館組。しかしその中には、共に汗を流してきた斎藤一はいません。
 江戸出発直前に事件に巻き込まれ、人を斬った彼は一足先に京に流れてきていたのですが――しかし想いは千々に乱れ、成すべきことも見つからずに彷徨うばかりであります。

 が、そんなある日にうどん屋で総司と出くわした一。しかし総司たちは浪士組を裏切る形で江戸に帰ろうとする清河八郎を斬るべく待ち伏せの最中。初めての人斬りに悩む総司に、思わずため込んだ気持ちをぶつける一ですが……


 と、うどん屋という妙なところで気まずい再会を果たした二人の姿から始まる第3巻。ある意味総司のために人を斬る羽目になり、互いにそれがわだかまりとなって残る二人ですが、それよりも目前の人斬りに悩む総司に怒りを爆発させる一――という二人の微妙なすれ違い方には、不思議なリアリティを感じます。

 そして子供みたいな取っ組み合いを演じる二人は、永倉に見つかって八木邸に連行されて、そのまま一はなし崩し的に一行と共同生活を始めるのですが――しかし当時の彼らは無職。とりあえず八木邸の家事を(もちろん食事の支度を含めて)こなすしかない、というのが哀しくもおかしい。
 それでも何とか芹沢の伝手をたどり、会津候に嘆願書を提出することになった元浪士組の面々の中に、ついに一も加わることに……


 第1巻のラスト以来、約1巻半ぶりに試衛館組と対面することになった一。ずいぶんと久々ですが、それだけに彼が再び「仲間」に戻る――と思っていたのは実は彼だけで、皆の中ではずっと「仲間」だと思っていた、というのもいいのですが――のはなかなか感慨深いものがあります。

 そのくだりも、「茶飯」――朝に米を炊く江戸と異なり、前日の昼に米を炊く京で、前日の冷えたご飯を食べるために茶飯にするという風習(?)を、「冷めたごはんもおいしく変えられる」=過去は変えることができるという象徴に使うというのも、本作らしくて実に良いと思います。
 その一方で、一天万乗の君が、経済的な窮乏から碌なものを食べていない、とビジュアルで見せる展開も面白く、そこから(やっぱり前巻のあの人物だった)松平容保が天下を安んずるためには新たな力が必要、と決意させるのもまたうまいと感じます。

 さて、そんな中で互いの望むところが一致し、めでたい宴席を経て会津藩預かりとなった元浪士組ですが――しかしそれで万事丸くいくわけではありません。
 試衛館組の台頭を面白く思わぬ殿内義雄が、会津藩に認められた彼らに一方的に嫉妬した上に近藤暗殺を計画(!)、それを知ってしまった土方と総司は、殿内粛正を決意、ついに総司も人を斬ることに……


 と、今回も緩急(基本的に前者)を織り交ぜつつも、重い部分はきっちり重い本作。一が初めての思わぬ人斬りの衝撃で刀を抜けなくなってしまった一方で、自ら望んで人を斬った総司はどうなってしまうのか、気になるところであります。
 そして時期的には新撰組結成前夜、ということは、おそらく次の巻辺りではあの人物が――と、まだまだ楽しい展開の合間に、ズンと重い展開が差し挟まれることになりそうであります。

 正直なところ、面白い部分はもちろん多い一方で、殿内の言動の雑さなど、時代ものとして、物語として、粗削りな部分は目に付くきます(松平容保まで月代剃っていないのはもう諦めるとして)。
 それでもなお、やはり「食」を切り口とした青春もの要素多めの新撰組ものというのは珍重すべき存在であり――この先も頑張って欲しいと思います。


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