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2018.08.11

賀来ゆうじ『地獄楽』第3巻 明かされゆく島の秘密、そして真の敵!?


 不老不死の仙薬を求め、地獄とも極楽ともいうべき奇怪な孤島に送り込まれた十人の死罪人と、監視役の十人の山田浅ェ門。死罪人同士の、死罪人と浅ェ門との、そして彼らと怪物たちとの殺し合いが繰り広げられた末に、ついにこの島の秘密の一端が姿を現すことになります。そして真の敵たちもまた……

 赦免と引き替えに、不老不死の仙薬を手に入れるために謎の島に送り込まれた死罪人たちと浅ェ門たち。しかし彼らを待っていたものは、人間を花に変える奇怪な蟲たちと、禍々しい姿と力を持つ巨大な怪物たちでありました。
 さらに、一つしかないと思われる仙薬を巡るライバルを消すために、あるいは監視役を潰して自由になるために、互いに潰し合いを始める死罪人たち。死闘の末にこの巻の冒頭の時点で生き残っているのは、5人の死罪人と6人の浅ェ門――実にほぼ半数であります。

 そんな中、この島で初めて、自分たち以外の人間である少女・めいを見つけた画眉丸と佐切、杠と仙汰の一行。めいを捕らえ、彼女を守る奇怪な木人・ほうこを倒した一行は、ほうこの口から、ついにこの島の姿を知ることになります。
 「こたく」と呼ばれ、「えいしゅう」「ほうじょう」「ほうらい」と呼ばれる三つの地域に分かれるこの島。そして島の中心である「ほうらい」には、確かに不老不死の薬「たん」があると、ほうこは語ります。しかしこの島を統べ「たん」を守る存在――「てんせん様」がいるとも。

 その言葉を裏付けるように、島の各地で死罪人と浅ェ門たちに襲いかかる謎の存在。人間と同じ姿と知性を持ちながらも、性別を自在に変え、島の怪物たちをも遙かに上回る力を振るう彼ら(?)によって、次々と生き残りの者たちは倒されていくことになります。
 そしてその「てんせん様」は、仙薬を手に入れ、愛する妻の元に帰るために単独行動に出た画眉丸の前にも出現。持てる力の全てを尽くして戦う画眉丸ですが……


 連載スタート以来、どこに向かっていくのか、何が現れるのかわからない――刻一刻と姿を変える物語として描かれていた本作。
 これまで描かれてきた仙薬たちを求める人間たちのデスゲームはほぼ一段落し、残った面々が仙薬のため、生還のために手を組み始めた状況に入った印象ですが――ここに至り、今まで謎であった島の正体がようやく語られ始めることになります。

 数百年前からここで暮らすという奇怪な木人が語る秘密――その全ての意味がわかるわけではありませんが、少なくとも「たん」は「丹」、「えいしゅう」「ほうじょう」「ほうらい」は瀛州・方丈・蓬莱、そして「てんせん」は「天仙」のことでしょう。
 まさしく仙薬である丹、東方に存在する三神山(あるいは島)と言われる瀛州・方丈・蓬莱、そして最上級の仙人である天仙――それが伝説にいうものと全く同一の存在かはわかりませんが、しかしいずれも仙道・仙界にまつわるものであることは間違いありません。

 しかし伝説にいう仙人が暮らす地は、奇怪な怪物たちが徘徊したりしなければ、人間から咲く奇怪な花も存在しません。ましてや仙人は、その地に入り込んだ者を問答無用で血祭りにあげるような存在でもないでしょう。
 だとしたらこの地は、彼らは一体何なのでしょうか?

 正直なところ、これまで謎だらけだった物語に答えの一端が明かされ、そしてこれまでの怪物たちとは異なる、意志の疎通が可能な敵が登場したことは、本作の魅力を削ぐのではないかと心配していました。
 しかしそれは全くの杞憂――一端が明かされたことで逆に謎は一層深まり、そして恐るべき敵が登場したことで、倒すべき本当の敵が明らかになったのですから。


 しかしこの島のボスとも言うべき存在だけあって、天仙たちは並みの強さではありません。賊王・亜左弔兵衛が、山の民のヌルガイが手も足も出せずに敗れ、画眉丸が死力を尽くしてもなおその上を行く敵であり――そしてその前にまた一人、新たな犠牲者が出てしまうのですから。
 しかもこの巻のラストには彼らが勢揃い。一人一人であれだけの強さであったものが、これだけ揃えばどうなるのか――これまで以上の絶望としか言いようがありません。

 それでも――人間たちも並みの人間ではありません。たとえ天仙たちにとってはちっぽけな存在に見えても、人間にも心がある、意地がある、力がある――死を乗り越え、生を掴もうとする意志がある。
 この巻のラストで同時に描かれるのは、そんな人間たちの再起の姿。ここから人間たちがどのような逆襲を見せるのか、期待するなというほうが無理なのであります。


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