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2018.08.19

『つくもがみ貸します』 第三幕「撫子」

 道具を引き取るために訪れた蜂屋家で、勝三郎の許嫁の早苗から母親への不満を聞かされたお紅。何とか早苗と母親の仲を修復したいと考えるお紅だが、清次は早苗から引き取られた簪のつくもがみ・撫子から、お紅が一目惚れをしていると聞かされて気が気ではない状態で……

 婚礼も近い早苗の道具を引き取るため、蜂屋家の屋敷を訪れたお紅。と、ここで早苗の質問という形で、火事が多く地方出身者の多い江戸の人々は道具を持つという習慣がなかった――と、損料屋の客について説明が入ります。こういう形で馴染みのない当時のことが説明されるのはなかなかよいですね。
 それはさておき、今回早苗が大事にしていた道具を売るというのは、母親のおたつが原因の様子。最近、早苗に厳しく接しているようなのですが……
 そういえば、彼女がかつて懸想していた相手がいたことが第1話のエピソードの遠因となったわけですが、早苗はあの時のことは若気の至りの一目惚れだったと既に回想モード。と、そんな彼女に、自分も一目惚れには心当たりがあると漏らすお紅ですが――それを聞いていたのが、早苗の道具の中の簪・撫子であります。彼女はそのことを出雲屋のつくもがみたちと対面した時に漏らしてしまい、清次は心中穏やかではないのですが……

 そこで何も知らぬお紅が、前回触れられた勝三郎の茶会で使うため、早苗に扇子を用意して欲しいと依頼、さらについでのように、早苗と母親の間を取り持ってほしいと無茶振りするのでした。そこで蜂屋家を訪れる清次ですが、今度は早苗の他におたつも現れ、ギクシャクした母娘の関係を目の当たりにする羽目になります。そしてその後少し表に出た早苗に、自分とお紅との関係を語る清次。姉といっても血はつながっておらず、日本橋生まれのお紅の家が大火で焼けてしまい、深川の清次の家に引き取られたと。今回初出の大事な情報ですが、そんな二人の微妙な関係を知らない早苗が、清次もお紅も、それぞれちゃんと結婚するのだろう、などとゴリゴリ清次の精神を削るようなことを言うのですが……
 さて、屋敷に戻ってきた清次の前に再び現れたおたつ。自分が早苗に厳しく当たる(ように見える)理由が、これまで主人のことで手一杯で、これまで早苗に十分に接することが出来なかった分、婚礼前に武家の妻として必要なことを教えたかったから――と、彼女は清次に語ります。これに対して、早苗様もお使いになるうちに婦人向けの道具の良さもわかるでしょう、損料屋はそのための学びの場と思い下さい――などと如才なく答える清次は見事に商売人であります。

 さて、弟が奔走している間、嬉しそうに出かけていくお紅。一目惚れと関係あるのだろうと気になるつくもがみたちは、小芝居でプレッシャーをかけて、唯一自由に移動可能な野鉄をお紅の偵察に送り出します。その後も勝手なおしゃべりを続けるつくもがみたちですが、撫子が何かと話題に上る「蘇芳の人」のことを訪ね、うさぎが説明してしまいます。蘇芳とは高価な香炉であり、その持ち主である日本橋の大店の若旦那のことであると。イケメンで人当たりも良いその若旦那は、お紅に惚れていたにも関わらず、急に彼女の前から消えてしまったと……
 そんなうさぎの無遠慮な語りを耳にして清次は思い切り動揺し、さらにそこに暗い表情でお紅が帰ってきて、店の中はお通夜のような雰囲気に。皆に責められて落ち込んだうさぎは、その晩、自分は(当時の主な用途の)髪を飾るための櫛ではなく、持ち主の母娘が髪を梳かすために使われていたものであり、その際に二人がよく会話していたのが自分がおしゃべりになった理由なのかも、と野鉄に語るのですが――それを聞いていた清次に閃くものがあったようです。

 翌日、蜂屋家を訪れた清次は、おたつと早苗の前で、彼女たちそれぞれの気持ちを語ってしまうというストレートな挙に出るのですが――そこで持参したうさぎの櫛を見せて、その来歴などを語ったことがきっかけで、かつてうさぎの持ち主がそうであったように、母娘は楽しく語らい、お互いの気持ちを通わせるのでした(もちろん、仲立ち役になったうさぎの気持ちも晴れたことでしょう)。
 そしてお紅の一目惚れの相手も、町で見かけた櫛のことだった、とわかって清次も一安心するのでした。


 前回同様、オリジナルエピソードの今回。すれ違う母娘の気持ちとうさぎの抱えた屈託を同時に解決する展開は、いささか直球に過ぎる印象はあるものの、現代とは少々異なる櫛の使い方を軸にした解決はなかなか面白いところ。随所に物語全体に関わる重要な情報が挿入されていたのも印象的に残ります。

 しかし本作、全般的に武家が商人にえらくフレンドリーな印象で、その辺りはもう少し丁寧に描いてもよいのではないか……とはずっと気になっているところではあります。
 あと姉さん、微妙に無神経に見えるので視聴者のヒートを買わないかが心配です。


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