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2018.08.27

『つくもがみ貸します』 第四幕「焦香」

 出雲屋に最近顔を出すようになった近江屋の若旦那・幸之助。彼が粋な遊び人として有名なことを知った清次はお紅に近寄らせまいと敵意を燃やし、幸之助の人となりと目的を探るためにつくもがみを宴席に潜り込ませる。しかしそこでつくもがみたちが見たのは、遊び人とは無縁の幸之助の姿だった……

 顔なじみの看板娘・お花がいる馴染みの茶屋で、近頃両国きっての遊び人と名高い近江屋の若旦那・幸之助とすれ違った清次とお紅。その後、幸之助は出雲屋に現れるのですが――何故かお紅に近づくイケメンの若旦那に異様に敵意を燃やす清次は、前々回登場した浜松屋に顔を出した際に、幸之助の人となりを探ります。
 聞けば、幸之助は酒席での金払いもよく人付き合いもいい人物、かといって酒席の女性に手を出すでもなく、金だけ払ってスッと消えてしまう粋さが受けて、行く先々で「煙管の雨が降る」とのこと。しかし一方で、安心させて女性を誑し込むための手管ではないかいう噂もあるというのであります。

 と、お紅一人の出雲屋に現れ、若い娘にはどのような櫛が似合うかなどと尋ねる幸之助。そこに帰ってきた清次がお紅を押しのけて応対するのですが、お紅の脳裏にはかつて自分の前に現れたある男性の思い出が……

 さて、そんな人間たちの様子に興味津々のつくもがみたちですが、五位は幸之助が評判通りの男ではないのではないかと語ります。
 そもそも「煙管の雨が降る」とは、歌舞伎『助六由縁江戸桜』で助六が遊女たちから競って煙管を差し出された時の台詞から来たもの。遊郭などで遊女が気に入った客に自分の煙管を渡し、客もOKであればそれを受け取るというしきたりが由来とのことですが――それはさておき、店で五位を手にした時の幸之助の手つきは、煙管を持ち慣れているとは到底言えなかったというのです。

 そこで幸之助と酒席を共にする浜松屋につくもがみたちを貸し出した清次。酒席を偵察していた五位と野鉄が、粋人とは思えぬ幸之助の態度に、つまらん男だと口走ったら――そこに微妙に良い作画で突然襲いかかる印籠のつくもがみ。しかし躱した野鉄に脚を刈られて転がってった印籠は芸者のおしりに当たって――勘違いした芸者のお姉さんに言い寄られ、目を白黒させた幸之助は、宴席そっちのけで店を飛び出すのでした。

 翌日、道具を返しに来た浜松屋ですが、そこに紛れていたのはあの印籠。焦香と名乗るこの印籠は、幸之助の根も葉もない噂に怒り心頭、実は幸之助は超堅物だとつくもがみたちに語ります。これには興味津々の清次ですが、ここから先は人間には聞かせられないと口をつぐむつくもがみたちに、店を出る羽目になるのですが――そこで幸之助と出会うことになります。
 これまでの非礼を詫びた清次に対して、旦那仲間に付き合いで苦手な酒席に誘われ、角が立たないように金だけ払って先に帰っていたら、こんな評判が立ってしまったと語る幸之助。これでは想い人に声もかけられないと幸之助は嘆くのですが……

 そしてその頃、櫛を磨きながら、お紅は過去の出来事を思い出します。清次とお紅がまだ少し若い頃、店に現れた佐太郎なるイケメンが、店に櫛を持ってきた時のことを。

 と、店に戻ってきた清次と幸之助に、お花に縁談が来ていた(とつくもがみたちから聞いた)と語るお紅。それを聞いて大ショックを受けたのは幸之助であります。そう、彼の意中の女性とはお花――しかしシャイで声をかけられなかった彼は、お花と親しそうな出雲屋に相談しようとしていたのであります。ところが縁談の話を聞かされ、幸之助は一念発起してお花のもとに走って行くのでした。

 しかしこれは実は五位の提案によるつくもがみたちの仕掛け。焦香から真実を聞かされたつくもがみたちは、若旦那を焚きつけるために、わざとお紅にお花に縁談があるなどと空言を聞かせたのであります。煙管は男と女の色恋を焚きつけ、まとめる代物だからな、とキメる五位なのでした。
 ――と、一件落着かと思いきや、ここで浜松屋が、お紅が探す蘇芳の香炉を手に現れます。そう、かつて清次とお紅、佐太郎の前に、佐太郎の母親が持ってきた香炉を……


 またもオリジナルストーリーですが、本作の物語全体に関わる清次とお紅、そして佐太郎と蘇芳の過去が仄めかされるなど、原作を引いた重要な場面も描かれ今回。
 しかし物語の方にはミステリ要素はほとんどなく、清次の一方的な嫉妬と猜疑心が起こした騒動という印象なのがいささか残念であります。

 もっとも、いままでいわば清次たちに利用されていた形のつくもがみたちが、逆に清次たちを利用して――という結末のは実に面白く、本作ならではの人間とつくもがみの関係性が表れていたかな、とも感じます。

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