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2018.09.08

『つくもがみ貸します』 第七幕「裏葉柳」

 清次が品物を貸すこととなった料理屋・鶴屋は、幽霊が出る店だった。店の前の持ち主・大久間屋は、かつての大火を機に屋敷を買いたたいて財を成したものの、幽霊が出ると鶴屋を手放したらしい。その幽霊は自分の妻ではと言い出す出雲屋のつくもがみ・裏葉柳だが、清次はあることに気付いて……

 勝三郎から、かつて自分の家で働いていた料理人・徳兵衛が店を出す祝儀代わりに、出雲屋の品を貸してほしいと頼まれた清次。早速、彼の店・鶴屋に品物を貸し出した清次は、帰りしなに徳兵衛の後ろに女性の影を見るのですが――貸し出されたつくもがみたちは、そこで先住のつくもがみから、この家に幽霊がいると聞かされるのでした。
 と、ここで騒ぎ出したのは、出雲屋に最近やってきた香炉のつくもがみ・裏葉柳。元は人間だったという彼は、幽霊が数年前の日本橋の大火が原因で離ればなれとなった妻ではないかと言いだしたのであります。妻は歌舞伎役者の中村菊之丞が女形を演じた時にそっくりな美人だと言うのですが……

 と、日本橋の大火と聞いて清次が思い出すのは、その火事でお紅が焼け出された時のことであります。寺に避難していた彼女を見つけた清次ですが、火傷をおった父の看病と店のことでお紅も暗い表情。そんな彼女に、清次は前回描かれた櫛からスタートした物々交換で手に入れた玉簪を差し出します。目標額である80両の値打ちはあるこの玉簪を売れば、店の再建資金にはなるのですが――それは同時に、お紅が佐太郎の母の試練に失格するということでもあります。しかしお紅は玉簪は売らないと言い出して……(ちなみにこのシーンでお紅の前に寝てたの、彼女の父親だと思うんですが――顔も声も出ず動きもしないのでほとんど物状態)

 そんな中、出雲屋を訪れる徳兵衛。鶴屋を破格の値段で彼に売ってくれたという前の持ち主・大久間屋が店に来るので、もてなしのために品を貸してくれという徳兵衛に、お紅はここぞとばかりにつくもがみの品を押しつけるのでした。一方清次は、店に幽霊がいるのでは、と単刀直入に訪ねるのですが、店にいた女性は自分の妻だと、徳兵衛に一笑に付されます。
 が、その後勝三郎に聞いてみれば、大火の後に長屋から立ち退きを迫られ路頭に迷った徳兵衛は、その時に病がちだった妻を亡くしているとのこと。さらに役者絵を売りに来た浜松屋から、大久間屋が大火の後に日本橋近辺の屋敷を買い叩いて財をなしたこと、そしてそのうちの一軒に幽霊が出たことから、徳兵衛を騙して売りつけたのではないか、と聞かされる清次。と、そこで清次は中村菊之丞の役者絵を見て、鶴屋の幽霊は裏葉柳の妻ではない、と言い出します。

 そして鶴屋に急ぎ、徳兵衛を呼び出す清次。徳兵衛と妻を長屋から追い出したのは大久間屋であり、彼に復讐するために徳兵衛は妻の幽霊が出る鶴屋を買い、そしてそこで大久間屋を毒殺するつもりではないか――そう指摘する清次の言葉を肯定し、徳兵衛は復讐した上で自分も死に、妻のもとに行くことこそが自分の望みであると語ります。
 そんな徳兵衛に対し、過去に生きることよりも、前に進むことを選ぶべきだと懸命に説得する清次。その言葉に徳兵衛の心が動いたのを見て取った清次は、後は自分に任せてほしいと徳兵衛を外に出すと、つくもがみたちに後は好きにしろと語りかけるのでした。

 そしてお墨付きが出たとばかりに、大久間屋をこれでもかと脅かすつくもがみたち。その後の惨状を見た徳兵衛は、妻の幽霊に前に進むことを告げ、幽霊も成仏するのでした。
 さて、清次が鶴屋の幽霊が裏葉柳の妻ではないことを見破ったのは、中村菊之丞の話から。女形を得意としたのは初代の話、当代は荒事専門であることから、裏葉柳が数年前と思いこんでいたのは相当な昔だったと推理したのであります。その話を聞かされて、裏葉柳も(びっくりするくらいの美形姿で)妻を追いかけるために成仏するのでした。


 今回は久々の原作エピソード。日本橋の大火を中心に、清次とお紅の過去(これも原作由来)、徳兵衛と大久間屋の因縁、さらに裏葉柳の物語と、三重に絡めてみせた構成が実に面白いところです。徳兵衛を説得する清次の姿を、一歩間違えれば綺麗事に終わりかねないものを、同じく過去に捕らわれたお紅の存在を描くことにより、文字通り説得力あるものにしていたのもうまいと感じます。

 しかし実は今回、徳兵衛と大久間屋の因縁が原作とは相当異なっております。詳細は伏せますが、徳兵衛が大久間屋を恨んでいるのは共通ながら、原作ではその理由=大久間屋の過去の所業が全く異なり、簡単には白黒付けがたい物語となっていたのですが――こちらではかなりわかりやすい設定となっていたなあ、という印象があります。
 この辺りの人間関係の苦さ、ままならなさが原作の持ち味だっただけに、この辺りは個人的にちょっと残念ではあります。
(あと、大久間屋のキャラデザには絶句)


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