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2018.10.22

『つくもがみ貸します』 最終幕「蘇芳」(その二) そしてアニメ版を見終えて

 アニメ版『つくもがみ貸します』の最終幕の紹介の後半と、アニメ版全体のまとめであります。江戸に帰ってきたものの行方不明になった佐太郎を、つくもがみや友人たちの協力でようやく見つけだしたかに見えた清次ですが、思わぬ一撃を喰らって……

 と、意識を取り戻してみればどこかの座敷、そこには佐太郎と叔父もいます。聞いてみれば清次を殴ったのはこの質屋の主人、彼を賊と勘違いしてとのことであります。清次には完全にとばっちりですが、これがきっかけで店を訪れた際に誤って倉に閉じこめられ、誰にも気づかれていなかった二人も助かって一件落着、ではありますが……

 もちろん清次とお紅と佐太郎の関係はまだ解決していません。佐太郎などは、もうこれでお紅とは結ばれたものと有頂天になっていますが――そこに当のお紅が駆けつけます。清次が殴られた際に、急を告げるべく出雲屋へ急いだ野鉄から知らせを聞いたお紅ですが、彼女が飛び込んだのは――清次の腕の中。涙ながらに清次の無事を喜ぶ彼女の耳には、後ろから呼びかける佐太郎の声など入るべくもなかったのでした。

 かくて本当に一件落着した物語。勝三郎と早苗は無事に婚礼を挙げ、幸之助とお花もまあ公認の間柄となり――そして佐太郎はお紅にどうしても七曜を受け取ってもらえず、結局叔父が間に入って七曜を半額の40両で買い取り、それを清次たちに渡す、ということになります。その金で件の借金も完済し、めでたしめでたしであります(佐太郎以外は)。

 そして変わらぬ日々を迎える出雲屋。にぎやかに騒ぎ回るつくもがみを捕まえ、商売に向かう清次ですが、一つだけ変わったことがあります。そう、それは清次がお紅を「姉さん」ではなく、「お紅」と名前で呼ぶようになったこと――そしてお紅の簪を褒める清次の言葉に、お紅も嬉しそうに微笑むのでした。


 というわけでめでたく大団円を迎えた、このアニメ版『つくもがみ貸します』。これまでの紹介のなかでも何度も述べて参りましたが、このアニメ版は、原作のキャラクターや設定、物語を踏まえつつも、そのかなりの部分において、オリジナルの物語、オリジナルのキャラクターが描かれてきました。
 これは言うまでもなく、原作が全5話しかなかったことによるものかと思いますが、しかし原作に極めて忠実な内容の、原作そのままと言ってよいようなアニメがほとんどの昨今を考えれば極めて珍しいことで、むしろ快挙と言ってもよいのではないでしょうか。
(もっとも、原作者のアイディアに拠る部分もあるようですが……)

 もっとも原作ファンの目から見ると、人間とつくもがみの一筋縄ではいかない関係性をベースとした時代ミステリ、という原作の構造からは外れるようなエピソードもあり、ちょっとどうかなあ――と思う点は、正直なところ少なくありませんでした。
 しかしその一方で、このオリジナル展開によって、わずか5話だった――それもその半分以上が蘇芳にまつわる物語であった――原作の世界観を大きく広げて見せてくれたのは、非常に大きな意味があったと感じます。
(以前も書きましたが、半助のキャラクターなど、オリジナルでありつつも、非常に原作的な味わいを出していたと感じます。)

 そしてそんな本作の魅力が最も良い形で結実したのが、この最終幕であることは言うまでもありません。人間とつくもがみ(そしてもちろん人間と人間)の関係性が、最もポジティブな形で昇華したクライマックスの展開は、これまでその関係性を様々な形で描いてきた本作だからこそ描けたものであることは間違いないのですから……
 ちなみにもう一つ嬉しかったのは、清次のお紅の名前呼びが最後の最後であったこと。実は原作ではちょっと違うタイミングだったので、上のつくもがみとの関係性も含めて、よりドラマチックな展開となっていたのは、これは個人的には大いに嬉しかったところであります。


 さて、本作はここでめでたく完結ですが、原作には続編『つくもがみ、遊ぼうよ』が存在します(そして第三作も連載中)。
 清次とお紅の子供(!)世代が主人公となるこの続編では、人間と一線を画していたつくもがみたちもすっかり丸くなり、より賑やかな物語となるのですが――こちらもいつかアニメで観てみたいなあ、と願っているところであります。


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