« 木下昌輝『絵金、闇を塗る』 異能の絵師の一代記にして芸術奇譚、そして…… | トップページ | 『つくもがみ貸します』 最終幕「蘇芳」(その二) そしてアニメ版を見終えて »

2018.10.21

『つくもがみ貸します』 最終幕「蘇芳」(その一)

 佐太郎が江戸に戻ってきたことを知った清次とお紅。しかし佐太郎は翌日からまた姿を消してしまったという。清次は佐太郎が探しているのが蘇芳の兄弟の香炉・七曜であることに気付くが、そのことを聞いたお紅は清次に怒りをぶつける。果たして佐太郎はどこに消えたのか、お紅の想いはどこに……

 いよいよ最終幕の今回、アバンで出雲屋に姿を現したのは佐太郎の母。しかし突然佐太郎の行方を尋ねる彼女に、清次もお紅も当惑するほかありません。彼女が語るには、佐太郎は大坂で叔父を頼り、米相場で一山当てて自分の店を持ったとか――そして叔父とともに江戸に帰ってきたのですが、その翌日から姿を消してしまったというのであります。

 さて、佐太郎の帰還に心中穏やかではないものの、何だかんだで佐太郎の行方を捜して奔走した清次は、佐太郎が探しているものが、蘇芳と一緒に焼かれた香炉の残る一つ・七曜であることに思い当たります。
 同じ職人により三つ作られた香炉のうち、蘇芳は行方不明となり(前回発見されましたが)、以前にお紅が佐太郎のために80両で購った三曜は佐太郎が壊し、残るは七曜のみ。佐太郎は過去のけじめをつけるために七曜を探し出し、それを手にしてお紅に会いに来るに違いない! と、お紅に話す清次ですが――そこでお紅の平手打ちが一閃!

 突然のことに目を白黒させる清次に、「急にぶちたくなったから」と言い放つお紅。さらに、いつまで私を姉さんと言ってるの! と激しく追撃をかけてきます。一見とばっちりに思えますが、しかし、江戸に帰ってきたにもかかわらず過去の約束に拘泥して香炉探しを優先する佐太郎も、そんな佐太郎への引け目か遠慮か、お紅を慕いながらも姉と呼ぶ清次も、己の想いに浸っているばかりで肝心のお紅の気持ちは考えないという点では同様と言えるでしょう。
 この辺り、男性視聴者はむしろ佐太郎たちの方に感情移入していたのではないかと思うのですが――そこに思い切り冷や水を浴びせかけるのは、さすがというべきでしょうか。

 それはさておき、当惑が隠せない清次は一度退散すると、お花の茶屋ですっかり顔なじみとなった面々――勝三郎・早苗・幸之助・お花・半助相手に嘆き節ですが、尋常でないニブチンの幸之助を除けば、皆には清次のお紅への気持ちも、お紅が怒っている理由もバレバレ。挙げ句の果てには勝三郎から、第1話でアドバイスした「綺麗だと言っておあげなさい」という言葉を返される始末……
 と、そこに駆けつけた権平から、佐太郎の母が奉行所に届けたことで大事となってしまったと聞かされる清次。しかしなおも佐太郎の手がかりはなし――と、そこで清次とお紅は閃きます。

 それはこれまでの物語で何度も繰り返されてきたこと――つくもがみたちを貸し出しての情報収集。しかし今までと異なるのは、初めて二人がつくもがみに力を貸して欲しいと頼んだこと――そしてつくもがみたちもまた、人間である二人に話しかけられたのを無視せず、手を貸すと答えたことであります。
 そしてそのつくもがみをあちこちに貸し出すように頼まれたのは、先ほど茶店で会っていた面々。二つ返事で引き受けた彼らの手により、つくもがみたちは江戸の方々へ……

 というこのくだり、実に最終回らしく良い展開であります。実はこの清次とお紅がつくもがみに直接語りかけるというのは原作通りですが、しかしそちらではむしろお紅は飴と鞭でつくもがみを動かそうという展開で、つくもがみたちも意気に感じたりせず、表向きは無視したままという形でした。そしてつくもがみたちを貸し出すのも、清次とお紅自身の手で――と、これはオリジナルキャラが大半なことを考えると当然かもしれませんが、しかし大きな違いと言えるでしょう。
 そう、ここで描かれたのは、本作において清次とお紅がこれまで培ってきた絆が生み出したもの。人であれつくもがみであれ、これまでの二人の想いと言葉に応えて、皆が動いてくれたということにほかならないのであります。

 そしてつくもがみたちの聞き込みで、とある質屋の倉に七曜があることを知った清次は、一緒に行くというお紅を留め、連絡係の野鉄(いつも嫌がっているのが、今回はやる気になっているのもいい)とともに質屋に急ぎます。そして倉まで来た清次は、中から助けを求める佐太郎の声を聞くのですが――そこで後ろから何者かの一撃を受け、意識を失ってしまうことに……


 と、Aパート終了のこの場面で、長くなってしまったので次回に続かせていただきます。


『つくもがみ貸します』Blu-ray BOX 下ノ巻(KADOKAWA) Amazon
つくもがみ貸します Blu-ray BOX 下ノ巻


関連サイト
 公式サイト

関連記事
 『つくもがみ貸します』 第一幕「利休鼠」
 『つくもがみ貸します』 第二幕「梔子」
 『つくもがみ貸します』 第三幕「撫子」
 『つくもがみ貸します』 第四幕「焦香」
 『つくもがみ貸します』 第五幕「深川鼠」
 『つくもがみ貸します』 第六幕「碧瑠璃」
 『つくもがみ貸します』 第七幕「裏葉柳」
 『つくもがみ貸します』 第八幕「江戸紫」
 『つくもがみ貸します』 第九幕「秘色」
 『つくもがみ貸します』 第十幕「檳榔子染」
 『つくもがみ貸します』 第十一幕「似せ紫」

 「つくもがみ貸します」 人と妖、男と女の間に
 畠中恵『つくもがみ貸します』(つばさ文庫版) 児童書版で読み返す名作

|

« 木下昌輝『絵金、闇を塗る』 異能の絵師の一代記にして芸術奇譚、そして…… | トップページ | 『つくもがみ貸します』 最終幕「蘇芳」(その二) そしてアニメ版を見終えて »

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 『つくもがみ貸します』 最終幕「蘇芳」(その一):

« 木下昌輝『絵金、闇を塗る』 異能の絵師の一代記にして芸術奇譚、そして…… | トップページ | 『つくもがみ貸します』 最終幕「蘇芳」(その二) そしてアニメ版を見終えて »