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2018.10.06

『お江戸ねこぱんち 紅葉狩り編』


 ほおずきから紅葉へ、季節は変わって5ヶ月ぶりの「お江戸ねこぱんち」であります。巻頭カラーは『寄ってらっしゃい猫まわし!』(糸由はんみ)、お馴染みの作家陣に加えて、同誌に初登場の作家も数名というラインナップであります。今回も印象に残った作品を一作ずつ紹介します。

『ぶち丸日件録』(芋畑サリー・キタキ滝)
 『猫師範ぶち丸』で初登場した剣豪猫・ぶち丸が主人公のシリーズの最新作、今回のぶち丸は用心棒はいらんかニャ、と父を亡くした少女・香代の前に現れるのですが――香代が父の幽霊を探していたことから、話はややこしいことになります。
 父を亡くしたことを受け入れられず、父に懐いていた猫ともうまくやっていけない香代のために一肌脱ごうとするぶち丸ですが……

 武術指南から用心棒に商売替えして(?)登場したぶち丸。猫又なら父の幽霊を見れるのでは、という香代に対して、「しがない妖怪だから人の霊は見えないニャ」と答えるすっとぼけぶりがなんとも可笑しいところであります。
 結末も定番の展開かと思いきや――という一捻りが楽しい作品でした。(が、ぶち丸よ、刀を使わなくていいのか……)


『お江戸むらさき料理帖』(さかきしん)
 新妻のキヨと、彼女を鍛える花嫁指南役の猫・むらさきを主人公とした料理漫画の本作、今回の題材は蛸の駿河煮。猫+料理というのは今の時代もののトレンドど真ん中という印象ではありますが、まあとにかくむらさきが可愛いことこの上ない。

 本作の猫は人語を解する猫ですが、そんな猫が普通の猫の顔をしていてもおかしいですし、かといって人間の顔をするのも違和感しかない。本作のむらさきは、その中間を絶妙なラインですり抜けているのが実にいい。
 海苔をパリパリ食べながら(何故か海苔が好きという設定)「蛸…かぁ…」と呟くコマなど、全く緊張感のない表情が絶品なのであります。


『平賀源内の猫』(栗城祥子)
 平賀源内と、彼の身の回りの世話をする少女・文緒、猫のえれきてるのトリオ(?)が活躍する本作――今回は漱石香(歯磨き粉)の宣伝をはじめとして仕事が山積みの源内、行方不明になった鈴木春信の猫・おフク探しを頼まれた文緒、そしておフクを拾った少年・寅吉の三者の姿が描かれることとなります。

 本作の魅力の一つである史実の巧みな取り入れは今回は抑えめの印象ですが、しかし実際に源内が担当したという漱石香の宣伝が、クライマックスで意外な役割を果たすのが面白い。
 それまで並行して描かれてきた三つの物語が一気にクライマックスで交錯する姿はなかなか爽快で、悪役の行動がどうかなあ――というところはあるものの、やはり本作らしい味わいのエピソードでありました。
(本作の源内は、基本的に表立って大きく動かないようでいて、さらりと事態を好転させてみせるのが実に格好良いのであります)


『猫鬼の死にぞこない』(晏芸嘉三)
 瀕死の重傷を負い、片手片足に障害を残しながら、一度危機に陥ればその手足が猫のそれに変化する身となった元隠密・彪真。彼が奇怪な妖魔と対決する姿を描く本作もいよいよ佳境であります。
 前回は普通の(?)人情話的な内容で気になりましたが、今回は以前に登場した猿の妖魔が跋扈する村が再登場。一度は解決したかに見えた事件の真相と、本当の結末が描かれることに……

 と、あのいかにも変装っぽい風貌の胡散臭い学者さん、本当に変装だったのか!? とまことに申し訳ない驚き方をしてしまったのですが、その学者・猿舟の正体と過去の因縁が描かれ、物語はクライマックスに突入。
 猿舟を追う妖魔との戦いの中で、彪真を甦らせ、猫の力を与えた謎の女の正体も明らかになって――と、盛り上がったものの、ほとんど最終回のような内容なのは、これはこれで非常に気になるところではあります。

 それでもこれはこれでしっかりと大団円――それも一抹の切なさと温かさが漂う――であり、まずはよい結末であったかと思います(もちろんまだ謎は残っているわけで、この先の物語も大歓迎なのですが)。


 次号は来春ということで、また数ヶ月空いてしまうのが残念ですが、ゆっくりと刊行を待ちたいと思います。

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