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2018.10.24

『Thunderbolt Fantasy 東離劍遊紀2』 第4話「親近敵人」

 毒に苦しむ殤不患の前に現れた凜雪鴉。相変わらずの調子の良さに呆れる殤不患だが、凜雪鴉は治療を申し出ると、解毒には龍の角が必要と診断を下し、浪巫謠とともに鬼歿之地へ向かう。一方、蠍瓔珞の前に現れた嘯狂狷は、彼女に手を組むことを持ちかけ、彼女もそれを受け容れるが……

 蠍瓔珞の毒を受け、辛うじて内功で抑えてはいるものの行動不能状態の殤不患。彼と浪巫謠が潜む洞窟に、突然凜雪鴉が顔を出して――というある意味一触即発の場面から始まった今回。(嘯狂狷のことはおくびにも出さず)殤不患を探すために刑部に潜り込んでいたという凜雪鴉に露骨にイヤな顔を見せる殤不患ですが、もちろん凜雪鴉が気にするはずもなく、グイグイと懐に飛び込んできます。
 友だから手を借りる→以前お前には散々手を借りた→だからお前は私の友 という謎の逆ジャイアン理論で強引に友人面をする凜雪鴉ですが、何と殤不患の毒を解毒しようと言い出すのは何の企みがあってか……。なるほど、彼も煙管からの幻惑香を操る身、その辺りの知識が豊富でも不思議はないのですが。

 そして殤不患の血を吸わせた布に、様々な種類の毒を垂らしてその反応を見る――という化学実験のような調べの末に、毒は陸に棲む獣の牙からにじみ出るもの、と見抜いた凜雪鴉。細かい種類を調べるよりも、同類でより霊格の高い動物――たとえば龍の力を体内に取り入れて制する方が早いという凜雪鴉ですが、龍なぞそうそう簡単にいるはずがありません。怪物犇めく鬼歿之地ならいざ知らず……
 と、その鬼歿之地を通って東離に来る途中、片翼の龍を目撃したという浪巫謠。片翼ゆえ、簡単に躱すことができたというのですが――実はこれは殤不患の仕業。西幽から東離へと鬼歿之地を通っての旅の途中に、空から狙ってくるのが鬱陶しいのでやっちゃったということですが――その他にも食人鬼の村を壊滅させたりと色々とやってくれたおかげで、鬼歿之地もずいぶんと通りやすくなった模様であります。そのおかげで追っ手たちもまた東離に来やすくなってしまったのは、皮肉以外のなにものでもありませんが……

 と、その追っ手である蠍瓔珞は、森で毒草採集の最中に、禍世螟蝗一党の召集の狼煙を目撃することになります。こんなところで一体誰が――といぶかしみながら向かった彼女の前に現れたのは何と嘯狂狷。捕吏であらば悪党の合図を知っていても不思議ではないと嘯く彼は、同じ殤不患を狙う身として、手を組もうと言い出すのでした。
 彼の目的は殤不患の首、蠍瓔珞の目的は魔剣目録――東離にあるよりも、たとえ禍世螟蝗の手にあったとしても魔剣目録は西幽にあった方が良い、自分の管轄で取り返さないと手柄にならないから――と役人の悪い面を固めたような嘯狂狷の言い草に呆れつつも、蠍瓔珞も手を組むことに合意するのでした。

 さて、龍の方ですが――居所はわかったとはいえどうするのかと思ったら、殤不患を東離に残し、素材ゲットのためにわざわざ鬼歿之地までやってきた浪巫謠と凜雪鴉。浪巫謠はともかく、凜雪鴉が自ら足を運んでくるとは、怪しい以外の何物でもありませんが――何はともあれ、彼の操る魑翼(前作で手に入れたのがよっぽど気に入った様子)で鬼歿之地の入り口辺りまで一っ飛びであります。
 そして龍のエリアまで行こうとする二人ですが――そこに立ちふさがるのは、鬼歿之地の瘴気によってゾンビと化した皆さん。容赦無用の相手に、特撮ヒーローのアイテムチックに聆牙を琵琶から剣に変形させて立ち向かう浪巫謠と、彼に煽られつつも、煙管からの火炎放射で攻撃する(すなわち真の実力は見せない)凜雪鴉と、二人は互いの名刺交換代わりに大立ち回りを繰り広げるのでした。

 一方、再び東離で隠れ家にしている納屋に戻ってきた蠍瓔珞ですが――その納屋に運悪く雨宿りに入ってきたのは、前回登場した謎の行脚僧・諦空。口封じのためと楽しそうに諦空の命を奪おうとする蠍瓔珞ですが、諦空は命を差し出すのはやぶさかではないと言いつつ、今回もまたその行為の意味を問います。もちろん蠍瓔珞がそれに満足に答えるはずもないのですが――だとしたら諦空もまた彼女に従うはずもありません。前回受けた毒はどこかへ消えたのか、蠍瓔珞の攻撃を軽々といなし、諦空は消えるのでした。屈辱に震える蠍瓔珞を残して……


 というわけで、今回も話が動いたような動いていないような展開ですが、やはり凜雪鴉と殤不患の絡みは抜群に面白い。全く以て油断のできない凜雪鴉ですが、浪巫謠とまさかのコンビを組んでの鬼歿之地という展開にはさすがに驚かされました。
 一方、ある意味殤不患以上に色々なキャラと絡んでいる印象もある蠍瓔珞は、悪役としての貫目の足りなさがここに来て露呈した印象。さて、そろそろ彼女はあの魔剣の魔力の前に屈してしまう気もしますが――冷静に考えれば(嘯狂狷を除けば)ただ一人の悪役らしい悪役を務めるだけに、まだまだ彼女の苦労は続きそうであります。


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