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2018.11.18

皆川亮二『海王ダンテ』第6巻 オーストラリア編完結 動物軍団大暴走!


 謎の超古代文明の遺産「書」を持つダンテこと若き日のホレイショ・ネルソンの冒険を描く本作、長きに渡ったオーストラリア編もいよいよ完結であります。宿敵ナポリオ(ナポレオン)に「書」を奪われ、砂漠に放り出されたダンテたちの運命は、そしてナポリオに迫るとんでもない敵とは……

 かのキャプテン・クックとともに、囚人たちを護送してオーストラリアに向かったダンテと仲間たち。しかしそこには既にナポリオとフランス軍機械化部隊が上陸し、原住民を収奪して巨大なプラントを作り上げていたのであります。
 さらにそこに動物を自在に操る海賊女王アルビダ、今はダンテの味方となったオルカら、「生命」の書によって復活した死人たちまでもが乱入し、事態は一層混迷の度合いを深めていくことになります。

 しかしナポリオの持つ「構成」の書が生み出したオーバーテクノロジーの前にダンテは屈し、彼は「要素」の書を奪われ、着の身着のままで、イギリス海軍の仲間たちとともに砂漠の真ん中に放り出されて……


 というわけで、これまでダンテを支え、その力の源となってきた――いわば彼を主人公たらしめてきた――「書」を失い、ほとんどそのままの意味で、裸一貫のサバイバルを強いられることとなったダンテ。
 だとすればここで描かれるのは、素の彼に主人公としての力が、資格があるかの問いかけであります。

 その答えがYESかNOか、それは言うまでもないかと思います。ダンテをはじめとして、等身大の人間たちが決死のサバイバルを繰り広げる姿は、「書」というガジェットに頼らない本作の持つ素の魅力――未知の世界に挑む人間の姿を描いているとも言えるのかもしれません。


 ……が、自然の驚異はそんな人間の存在の遙か上を行く、ということを、我々は思わぬ人物から、想像を絶する形で叩き込まれることになります。
 その人物とは海賊王女アルビダ――元は「生命」の書を持つナポリオの兄・ジョゼによって送り込まれた刺客であり、数世紀前から甦った死人である彼女は、現地の動物たちを遊び半分に殺すフランス軍たちに激怒し、動物たちを率いて敵に回ったのであります。

 動物といってもオーストラリアであれば、それほど危険なものはいないのではないか、と思うかもしれませんが、さにあらず。そして何よりも、作者がかつて(現代ものとはいえ)猟銃で完全武装した猿を描いて伝説になったことを思えば、この動物軍団の猛威が想像できるはずであります。
 というわけで、屈強なカンガルーの跳び蹴りとフックが荒れ狂い、エミューとジャイアントモア(?)の突進が地を揺るがせ、自ら弾丸となったハリモグラが宙を舞うという、目を疑うようなバトル……!

 その一方でオルカも単身フランス軍の空中戦艦に潜入、ついに体を持ち、戦闘モードに突入した「構成」の書と、これはこれで実に作者らしいバトルを展開することになって――ダンテたちの参戦が遅いこともあり、あやうく主役交代しかねないほどのインパクトでありました。


 しかしもちろん最後に〆るのはダンテであることは言うまでもありません。アルビダに合わせてか、あの神を思わせる幻影を操っての大活躍は、これまでの苦闘の溜飲を下げるものがあったのですが――しかしその途中で描かれた、ダンテに関するある疑惑は果たして真実なのか、大いに気になるところであります。
 そしてラストには、全く思わぬ人物が再登場し、全てが巨大な悪意の手の上の出来事であったことが明かされるに至っては、ただただ驚くばかり……

 最後までダンテやクックの優等生的な植民地主義への態度が気になったところではありますが(それをほとんど一言で史実に押し込めてしまうのは、これはこれで凄いと思うものの)、やはり冒険活劇としての本作としての面白さを再確認させられたところです。

 次の巻からはエジプトが舞台とのこと、イギリスともナポレオンとも縁の深い地で何が待ち受けるのか――これからの物語が楽しみです。


『海王ダンテ』第6巻 (皆川亮二&泉福朗 小学館ゲッサン少年サンデーコミックス) 

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