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2018.12.21

『Thunderbolt Fantasy 東離劍遊紀2』 第12話「追命靈狐」

 魑翼によって鬼歿の地に運ばれたものの、自分以外に七殺天凌を触れさせることがなくなったと歓喜に震える婁震戒。しかしその前に敵意に燃える歿王が現れる。一方、喪月之夜の力で衙門の人々を下僕に変えた嘯狂狷に単身挑む浪巫謠は、相手の奇策の前に苦戦を強いられる。そこに駆けつけた殤不患は……

 前回、凜雪鴉の罠(?)にはまり、魑翼によって飛ばされてしまった婁震戒と七殺天凌。たどり着いたのは鬼歿の地、こんな人気のないところ、エサもないし早く帰りたーい、とむくれる七殺天凌ですが、婁震戒はむしろこれでやっと二人きりになれましたねと、うっとりねっとり囁きます。自分にもいつか老いや病が訪れるだろう、その後に別の男の手に姫が渡るなど耐えられない、それならばこの地で二人ひっそりと永遠に手を携えて眠りましょう――と、谷底ダイブ寸前のヤンデレ全開であります。
 さすがの七殺天凌もこれは真剣にヤバいと焦りながら、己の魔力で彼を引き戻そうとしますが、しかし効かない。それもそのはず、婁震戒は魅了の魔力のためではなく、ガチで七殺天凌にぞっこんだったのであります! 想像を絶する基地外によって、よくわからないうちにラスボス退場か、と思われたその時出現したのは、殤不患に片翼を落とされ、浪巫謠と凜雪鴉に角を折られと人間に対して恨み骨髄の竜・歿王。人間殺すドラゴンと化した彼ですが、しかし修羅場に首を突っ込んだのは、あまりに空気を読まない所行というほかありません……(そもそも、竹光持った奴にナメプで重傷を負わされたのを忘れたのか)

 一方、惨劇の連続に、さすがに人っ子一人いなくなったいつもの街。そこを往く浪巫謠の前に現れたのは、小悪党モードの嘯狂狷であります。衙門の人々を喪月之夜でゾンビに変え、勝ち誇る相手に、傷を押して単身立ち向かう浪巫謠ですが――戦いの最中、突然嘯狂狷が喪月之夜を投げて寄越した!? 自らの最大の武器を手放してきた行動に戸惑う浪巫謠ですが、これぞ恐るべき罠であります。
 自分は喪ブの皆さんがどうなろうとも知ったことではない、むしろ積極的に叩きのめし、吹き飛ばして高笑いの嘯狂狷。しかし浪巫謠にとって彼らを見捨てることができるはずもなく、さりとてコントロールに慣れぬ身では喪ブたちを制御不能、自分も気を取られて棒立ち――そんな彼の状況をあざ笑いながら、嘯狂狷は遠距離からガンガン落ちてる剣やら槍やら投げつけ、浪巫謠はズタズタに。そしてついにトドメの槍が浪巫謠に迫る……!

 が、そこに最高のタイミングで駆けつけたのはもちろん殤不患。浪巫謠を救うや喪月之夜を手にした殤不患に対し、同じ手段で苦しめようとする嘯狂狷ですが――殤不患は滅茶苦茶巧みに喪ブをコントロールして攻撃を躱す、そして逆に攻撃を仕掛けまくる! 喧嘩は手数が大事、というのは殤不患の言うとおりですが、まさかここまで見事に喪ブを操ろうとは、誰も想像できるはずがありません。かくて嘯狂狷は喪ブたちにタコ殴り、メガネは吹っ飛び青あざだらけのギャグみたいなビジュアルとなって、見ているこちらも大いに溜飲が下がりました(凜雪鴉も意地を張らなければこんな愉快な場面を見れたのに……)
 人々を自在に動かすほどの将器(っていうのかしらコレ)を持ち、それどころか35本の魔剣まで持っている。それだけの力を持ちながら、何故流浪の身に甘んじているのか、と愕然とする嘯狂狷に対し、それがそうしたいからだ、とある意味鬼のような言葉で返す殤不患。そんな規格外のトラブルメーカーとこれ以上つきあってはいられないと、嘯狂狷は、ダイナマイトみたいな煙幕を張ってその場から逃げ出すのでした。

 そして喪ブを解放し、衙門おじさんの感謝の声を背に立ち去る殤不患と浪巫謠。そこに、もう誰でもいいからひどい目に遭うところを見たい! と禁断症状が出た凜雪鴉も加わり、三人で嘯狂狷を追うことになります。
 そして鬼歿の地では、可哀想な歿王が婁震戒によって暴力の本当の意味を教えられて惨死。さあ邪魔者もなくなりましたし死にましょう、と言い出す婁震戒に対し、焦った七殺天凌が、最強の剣士である殤不患を倒さないと自分を手にするのにふさわしいとはいえないんじゃないかな、と口から出任せを抜かしたおかげで、嫉妬に燃える婁震戒は殤不患打倒を誓って――最終回に続きます。


 というわけで、前作同様、殤不患が反則級の能力を発揮して大活躍、二つ名がサブタイトルになりながらも嘯狂狷はボッコボコにされて、実に気分が良い展開となりました。

 その一方で今回もヤンデレ絶好調の婁震戒。皆にとって最もよい結末は、(殤不患に敗れた末に)彼が七殺天凌を手に谷底に落ちることではないかと思っていましたが、まさか自分からそれをしようとするとは、さすがに驚かされました。
 しかしまさかそのヤンデレの逆恨みで、ラストバトルが勃発することになるとは、そしてそこに悪人を馬鹿にしたくて仕方がない真の最強剣士が居合わせることになるとは――次回、大惨事の予感であります。


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