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2019.01.18

速水時貞『蝶撫の忍』第3巻 全面戦争、甲賀と伊賀 十vs十!


 覇王・信長の首を巡る甲賀と伊賀の争奪戦はいよいよヒートアップし、ついに最強の甲賀十忍衆と伊賀忍十座の全面戦争が開戦することになります。次々と命が消えていく中で、鱗と半坐、二人の若き忍びの運命は……

 信長暗殺の命を受けながら、信長と不思議な絆で結ばれ、本能寺の変の直後に甲賀を裏切ったくノ一・鱗。蝶の能力を模した凄まじい忍法を操る彼女を師・服部半蔵の命で謀り、捕らえた半坐ですが、しかし半蔵に欺かれたことを知り、彼も伊賀を離反するのでした。
 そして伊賀忍十座の一人・「蟻地獄」獅子丸を倒したものの、毒に倒れた鱗を救うため、甲賀十忍衆と結び、色里に潜伏した半坐。しかし色里は既に伊賀忍十座に包囲され、半坐は鱗を逃すために単身立ち向かうものの……

 というわけで、自分たちを遙かに上回る力を持つ甲賀と伊賀、双方の最強クラスのメンバーを相手にすることになった鱗と半坐。あまりに分の悪い戦いですが、しかしここで覇王の首の存在が、事態を大きく動かすことになります。
 そう、首の行方は、甲賀も伊賀も(というよりその背後の二人の武将が)等しく求めるもの。だとすれば甲賀と伊賀は不倶戴天の敵、並び立つことなし……

 かくて始まる甲賀十忍衆と伊賀忍十座の全面戦争。既に前の巻の時点で甲賀と伊賀の戦いは始まっていたといえますが、ここに正面衝突、忍者ものの華であるトーナメントバトルが開始されるのですから、もう盛り上がるほかありません。

 そもそも甲賀十忍衆とは、鱗の師である鬼多川無法をはじめ、天牛・蓮柔郎・「泡吹」伊呂波・「華潜」厳臓・「御器噛」巡魅・「ヤゴ」彦左衛門・「羽衣」嘉納菊之介・更紗・「蛍」灯の十人。
 そして伊賀忍十座は、「螻蛄」服部半蔵・「蟻地獄」獅子丸・「蝉」服部針蔵・「蜘蛛」綾乃・「糞転」蘭・「田鼈」燕・亀十郎・「蠅」旻七・百地丹波の面々。

 ここで「」の中身は、それぞれの忍法を象徴する昆虫の名ですがまだ明らかになっていないものも多く、そしてこちらの見落としでなければ、伊賀側は九人しか登場していないように思うのですが、それはさておき……
 やはりこうして一癖も二癖も――いやそれどころではない面々がずらりと並ぶと、やはり大いにワクワクさせられます。

 何よりも本作の最大の特徴である、忍者たちが繰り出す昆虫の能力・性質を模した忍法が、これまで以上に次々と飛び出すのがたまりません。
 自然界で昆虫たちが繰り広げる生存のための激しい争い。それを移し替えたような忍法バトルは、最強の遣い手たちによって、より激しく、より多種多様に繰り広げられるのであります。

 忍法が繰り出されるや、実在の昆虫の驚くべき能力を引いての解説が入るのは本作のパターンですが、その解説もまた、存分に楽しませていただきました。
(ちなみに今回炸裂した真蔵の忍法が期待通りのものだったのも楽しい)


 とはいえ、折角の最強メンバーが、技を見せた後は意外とあっさりと消えていったり(これはまあ、忍者ものの様式美と言えないこともありませんが)、鱗はともかく半坐が今ひとつ埋没してしまった感があったりと、少々もったいない部分はあります。

 それでもやはり、本作の楽しさは唯一無二。物語は終盤に入ってきたようですが、このままの勢いで突き進んでくれることを期待したいと思います。


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