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2019.01.02

平谷美樹『唐金の兵団 鉄の王』 出雲に甦る怨念の系譜


 鉄にまつわる人々の戦いと、伝説の不死者の謎を描く伝奇活劇シリーズの第3弾は、前作同様、歩き蹈鞴衆の少女・多霧を主人公とした物語。出雲を訪れた多霧たちを待ち受ける奇怪な事件と新たな敵とは、そして古代からの怨念とは……

 諸国を巡って製鉄を行う歩き蹈鞴衆の一つ・橘衆の長の長女である多霧。越後山中で、何者かに皆殺しにされた蹈鞴場と、瀕死の重傷を負った青年と出会ったことがきっかけで、彼女と仲間たちは伝説の不死者・無明衆を狙う武士たちの陰謀に巻き込まれることになります。
 その中で母と兄の一人を喪いながらも、仇である女忍・早苗を討った多霧。しかし恐るべき力を持つ無明衆本流によって、恐るべきカタストロフが訪れて……


 という前作に続く本作では、神話の地・出雲で、神代から続く恐るべき怨念の存在が描かれることになります。

 越後での戦いを生き延び、出雲を訪れた多霧と橘衆。しかし彼らの蹈鞴場を、一帯を治める山根家の山廻の侍たちが訪れている時、突如唐金(青銅)の鎧に身を包んだ猪の集団が一行を襲撃し、侍たちは無惨な姿となるのでした。
 ここで侍たちと何者かが争っていること、そして自分たちがその争いに巻き込まれてしまったことを悟った橘衆は、さっそく山で、里で調べを始めるのですが――唐金の鎧の猪だけでなく、同じ鎧をまとった熊や狼までもが、彼らに襲いかかります。

 一方、里では、山根家が地中から出土した唐金の品を集めては鋳つぶしていること、これに反対した唐金吹の岳見屋が誅殺されたことを知る多霧たち。そして岳見屋の者たちが、唐金の蹈鞴衆である八千矛衆と繋がっていたことを知った彼女は、自分たちを襲撃したのが八千矛衆と確信することになります。

 一方、陸奥の橘衆の里で巫女としての修行を積んでた多霧の妹・夷月は、恐るべき魔物の前に多霧たちが窮地に陥る様を予知し、出雲に急ぎます。
 さらに山根家の側について暗躍する無明衆の一員、無明銑之介と兄の兼高。そして彼らの傍らには、不死の肉体を得て蘇った早苗の姿が……


 「甲冑で武装した猪が襲来!!」という、一目見て何事!? と驚かされる帯が極めて印象的な本作。しかしその帯はまだ序の口、その先に現れるのは、唐金をまとった様々な動物たち、そしてそれを操るのは――と、本作は、冒頭からいきなりクライマックスのテンションのまま、一気に突っ走っていくことになります。
 その果てに待ち受けるのは、古代からの秘密を巡る蹈鞴衆と侍たちの死闘――という点では前作と重なる部分も多いように見えますが、しかし本作は敵と味方が入り乱れた末、実に物語のかなりの部分を割いて、激しい攻防戦が繰り広げられることになります。

 そのアクション描写――何よりもゲリラ戦法では右にでる者のない蹈鞴衆たちの戦闘スタイルなど――だけでも大いに魅力的な本作ですが、しかし本作の真の魅力は、その戦いの背後に秘められた超伝奇的「真実」、太古から黒々と蟠る怨念の存在であります。
 と、ここから先は物語の核心に触れてしまうため、あまり多くは語れないのですが、出雲といえば神話の地神々の地と言えば、ある程度は察せられるかもしれません。もっとも、そこに本作ならではのある要素が絡むことによって、状況はより混沌としたものになるのですが……

 そしてその先に繰り広げられるのは、これまでの戦いが前座に過ぎなかったほどの恐るべき敵との戦いであります。
 前作とは若干ベクトルが異なるものの、ここに横溢しているのは、(最近の)作者の時代小説では少し抑え気味だった濃厚な伝奇味。いや、堪能させていただきました。


 そして一つの戦いが、一つの物語が終わった先に残されるのは、幾つもの更なる謎。多霧と橘衆につきまとう無明衆・兼高の目的とは何か。銑之介と多霧の想いの行方は。そして多霧たちの物語は、いつか鉄澤重兵衛の物語と、再び交わることがあるのか――
 この先もまだまだ続くであろう「鉄の王」を巡る冒険の向かう先が、楽しみでなりません。


『唐金の兵団 鉄の王』(平谷美樹 徳間文庫)

平谷 美樹 徳間書店 2018-12-07
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