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2019.02.21

許先哲『鏢人 BLADE OF THE GUARDIANS』第2巻 おしゃべりな賞金稼ぎが黙るとき


 隋朝末期を舞台に、おしゃべりで子連れの賞金稼ぎ・刀馬が死闘を繰り広げる武侠活劇漫画、待望の第2巻であります。刀馬が引き受けた新たな依頼――それは大きな訳ありの仮面の男を長安へ連れて行くこと。そしてただでさえ困難なこの旅は、やがて思いもよらぬ惨劇を招くことに……

 その氏素性はほとんど不明ながら、途方もなく腕が立ち、そしておしゃべりな賞金稼ぎの刀馬。七と呼ぶ子供を連れて西域を放浪する彼は、巨額の賞金をかけられた殺し屋を追って向かった先で朝廷の役人・常貴人と対立、自ら賞金首になるのを承知で、この怪人を平然と切り捨てるのでした。
 そんな刀馬を庇護するのは、彼とは昔なじみの大商人・莫。その莫から、隋を倒すと嘯く知世郎なる仮面の男を長安まで護衛していくよう依頼された刀馬は、七、そして莫の娘のアユアとその伴と共に、東に向かって旅立つことになるのですが……


 というわけで賞金首の賞金稼ぎが、反隋組織の首魁を護衛して旅するという、面倒と厄介事が起きないはずがないこの旅。しかしそんな旅を最初に騒がすのは、追手ではなく、これまた訳ありの連中であります。

 長安の顔役の囲われ者であったのが、間男を作って逃げ出した色気過剰の女・燕子娘と、彼女を連れ戻すことを依頼された曰くありげな長剣の使い手・豎――長安への帰路で邪教徒たちに襲われる二人を見つけた刀馬一行。
 この二人をすぐに助けず、お得意の「商売」を持ちかけた刀馬は、この二人を一行に加わえて旅を続けるのですが――これで都合七人、見るからに只者でない一行なのが、絵面からもビンビン伝わってくるのが、実に楽しいところであります。

 が、そんな刀馬たちの知らぬ間に、彼らを取り巻く情勢は大きく動き出すことになります。
 莫を含めて、西域で大きな勢力を持つ五つの大商人の一族・五大胡商家族――かつてはどの勢力にも屈服せず、中立を保つという信念を持ってきた彼らに対し、隋二代皇帝・煬帝の西域制圧の命を受けた寵臣・裴(世)矩が接触を図ってきたのであります。

 貿易の利と引き換えに、隋に帰服することを求める裴世矩。他の四大家族がこれを受け入れる中、ただ一人拒んだ莫を待つ運命は、この過酷な時代と世界にふさわしい、残酷なものでありました。
 そしてそんなことが起きているとは知らずに旅を続ける刀馬たちの前に現れた五大胡商家族の頭首の一人・和伊玄。裴世矩との取引で、知世郎の命を狙って現れた彼は、かつて自分の許嫁であったはアユアに対し、ある「もの」を差し出して……


 正直なところ、刀馬の痛快な賞金稼ぎ稼業を描いた第1巻に比べると、物語のテンポも、剣戟の描写も、そして何よりも刀馬の活躍もこの第2巻では抑え気味という印象が強くあります。

 それは一つには、物語の背景となる中国史上に残る暴君と言われた二代皇帝・煬帝の国外遠征――そしてそれがこの世界にもたらすものを描くことに頁を割かざるをえなかった、ということあるでしょう。
 それはそれでもちろん物語を進めていく上で不可欠なものではあります。しかしやはりこちらが見たいのは、法も権力も関係なし、己の中の掟に従って生きる刀馬の痛快な大暴れなのですが――という思いは、この巻のラストで叶えられることになります。

 五大胡商家族の頂点に立つという己の野望のために、あまりに残酷かつ非道な行いをして憚らぬ和伊玄。しかしそれが刀馬の逆鱗に触れることになります。
 いつ如何なる時でもへらず口を欠かさず、ひたすら喋りまくる刀馬――そんな彼が言葉を発しなくなった時どうなるか、その恐るべき答えが、ここで示されるのであります。

 人を人とも思わぬ外道たちがドン引きするほどの刀馬のキレっぷりには、世の中には怒らせてはいけない人間がいるものだとつくづく思わされます――が、彼の怒りはまだ点火されたばかり。
 その燃え盛る炎がどこまで大きく広がることになるのか――ある意味物語の本筋以上に、それが気になってしまうのであります。


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