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2019.02.05

三好昌子『京の縁結び 縁見屋と運命の子』 再び始まる因果因縁の物語


 『このミステリーがすごい!』大賞優秀賞を受賞した『京の縁結び 縁見屋の娘』の続編――前作のクライマックスから十数年後を舞台に、奇怪な黒い法師に付け狙われる少女・貴和が、縁見屋の息子・燕児とともに、自分たちにまつわる因縁と謎を追う姿が描かれることになります。

 代々男子が生まれず、娘も26歳で亡くなるという奇怪な因縁が伝わる口入れ屋・縁見屋。その娘・お輪が、謎の修験者・帰燕と出会ったことにより、縁見屋の過去に隠された秘密を知り、因縁から開放される様を描いた『縁見屋の娘』――その前作のクライマックス、天明の大火の五年後から、本作は始まることになります。

 母と家路に急ぐ途中、子供をよこせという奇怪な黒い笠の法師に遭遇し、母に庇われて神社に逃げ込んだ5歳の貴和。貴和はそこで出会った不思議な子供・燕児に助けられてその場は逃れることができたのですが――しかしその翌日、彼女の母は絵師の夫と貴和を残し、何処かへ姿を消してしまったのでした。

 それから12年後、貴和は幼馴染である町の薬種問屋「白香堂」の娘・雪乃付きの小間使いに雇わるのですが――そこで燕児と再会することになります。
 実は縁見屋の長男であり、医者を目指して白香堂で学んでいた燕児。しかし数年前、病に倒れた母・お輪の命を救うために火伏堂に詣でた彼は、そこで出会った何者かとの約束で、言葉を一切発しないようになっていたのであります。

 その頃、京では若者が突然倒れ、そのまま命を失うという奇怪な病が相次ぎ、白香堂はその対応に追われることになります。そして病を治すと評判の祈祷師・鞍馬法師こそは、幼い頃に貴和を襲ったあの黒い笠の法師だったのであります。
 さらに、京に出没する辻斬りの濡れ衣を着せられて捕らえられてしまった貴和の父。彼女はその騒動の中で、自分が父とは血が繋がっていないことを知ることになります。

 母はどこに消えたのか、父は何故濡れ衣を着せられたのか。黒い笠の法師は何を求めているのか。そして自分は何者なのか――燕児とともに謎を追う貴和が知った真実とは……


 冒頭に述べたとおり、縁見屋とその娘を巡る奇怪な因果因縁譚であった前作。その内容についてここで詳細には述べませんが、因縁が一つの終わりを迎えた結末からは、続編の登場は正直なところ予想外ではありました。
 果たしてあの結末から、どのような続編が描けるのか――その疑問とともに手に取った本作ですが、なるほどこういう形になるのか、という印象であります。

 縁見屋とは無縁の少女を主人公としつつも、彼女と運命を共にする少年として、縁見屋の息子を設定するというのがまず面白いところですが、やがて明らかになる事件の真相が、本作独自の物語でありつつも、やはり密接に前作と繋がったものであるのに感心させられました。
 内容的には続編というより後日譚と評すべきかもしれませんが、前作に縛られすぎることなく(特に前作のヒロインがそれなりに重要な役どころでありつつも、あくまでも遠景にとどまるのがいい)、それでいて前作読者にはニヤリとできる要素を散りばめつつ、新たな物語を作り出してみせたのは大いに評価できるところです。

 特に主人公を巡る非常に入り組んだ因縁の糸が一つ一つ解けていく終盤の展開は面白く、前作のラストのような史実と結びついたある種派手なクライマックスが待ち受けているわけではないのですが、十分満足できました。


 しかし残念なのは、後半の真実が語られる部分のほとんどが、謎解きというよりも、当事者の口からの説明となっている点であります。
 完全に人知を超える因果因縁の世界の物語であるだけに、人間の頭で謎が解けるものではないのもわかりますが、○○は××だった、という説明が続くのは、物語の構成としてどうなのかな――という印象は、正直なところ強くあります。

 そしてもう一点、これは完全に個人の趣味の問題ではありますが、前作同様大きな意味を持つ生まれ変わりの概念は、個人の人格や人生を上書きしているようでやはり好きになれないところであります。
 実はこの点は前作以上に強く感じられたところで、主人公像などは前作よりも共感できただけに、残念に感じられた次第です。


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