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2019.02.14

『どろろ』 第六話「守り子唄の巻・下」

 深手を負い、ミオたちの寺に戻ってきた百鬼丸。そんな彼を献身的に看護するミオの「仕事」を知ったどろろは複雑な表情を見せるものの、しかし彼女の想いを知り、それを受け止めるのだった。そして再び鬼神に挑む百鬼丸と、彼を追うどろろ。しかし勝利を収めて帰ってきた二人が見たものは……

 前回、アリジゴクの鬼神に挑み、声を取り戻したものの(大ダメージを与えたことで返ってきた?)、代わりに生身に戻った右足を食われた百鬼丸。琵琶丸とどろろに支えられてようやく帰ってきたものの、到底立っていられないような状態の彼を看護するのは、仕事から帰ってきたミオであります。
 そんな彼女の仕事を見てしまったどろろは複雑な表情ですが――しかしミオを慕う孤児たちが真実を知らず、将来はミオを助けて自分たちの田畑を持ちたいと無心に語るのを聞くのでした。

 そしてまた仕事に出かけるミオと出会ってしまい、気まずげな表情を見せるどろろですが――その反応から、自分の仕事を見られていたと察するミオ。しかし彼女はどろろに対して、卑下するでもなくごく自然に、自分自身の想いを語ります。
 それに対して、自分の母ちゃんはどんなにひもじくてもその仕事だけはしなかったと答えるどろろ。そんなどろろの母は偉いと語るミオですが――しかしどろろは、結局母ちゃんは死んでしまったと答えます。そして母ちゃんは偉かったが、ミオも偉いと……

 一方、常人離れした体力で確実に回復していく(さすがは赤子の時にあの状態で生き延びた人は違う)百鬼丸は、木を削って義足を作り、武術の稽古を開始します。一人寺から離れることにした琵琶丸は、そんな百鬼丸の中に鬼神の気配を感じ取るのですが……
 そしてミオが仕事に向かった間に、鬼神退治に向かう百鬼丸。それを知って慌てて後を追ったどろろが見たものは、即席の義足に、孤児たちが戦場で拾ってきた刀の一本を取り付け、巨大な相手に三刀流で見事に雪辱を果たした百鬼丸の姿でした。

 そして再び右足を取り戻し、寺に帰る百鬼丸とどろろ。しかし二人が見たものは、寺の辺りから立ち上る黒い煙――急いで帰ってみれば、そこでは醍醐の兵たちが寺に火を放ち、ミオや孤児たちを無惨に手に掛けていたではありませんか……!
 醍醐と酒井、両方の陣で仕事をしていたミオを間者だと思いこみ、子供たちもろとも惨殺した足軽たち。今また彼らがどろろまで手に掛けようとした時、絶叫を――前回のラストとは全く違う意味の――上げながら、百鬼丸が両手の刃を振るう!

 さながら彼自身が鬼神と化したかのように容赦なく足軽たちをバラバラにしていく百鬼丸。血に塗れた彼の刃が最後に残った隊長格の男に向けられた時――どろろが涙ながらに百鬼丸に呼びかけます。ミオは種籾の袋を遺していったと。それは侍から奪われ続けた彼女が取り返したものであり――ミオは負けてはいないと。兄貴も負けないでくれと。
 その声に我を取り戻し、刀を引いた百鬼丸。彼の口から初めて出た言葉は……


 前話でも触れたとおり、原作では屈指のトラウマ回であったミオのエピソード。残念ながら本作でも彼女の運命は変わりませんでしたが――しかしこちらでは大きな救いがあったと感じます。

 その一つが結末に描かれた種籾(百鬼丸の目には黄金に映るのがもう……)であり、そして百鬼丸が初めて発した言葉であったわけですが――しかしその最たるものは、どろろとの会話でしょう。
 どろろから見れば(その「正体」が漫画と同じであろうことを考えればなおさら)衝撃的だったであろうミオの「仕事」。当然どろろもはじめは当惑を隠せないのですが――しかしミオの語る内容に、自分の母ちゃんと同じように(これはどろろにとって最大のほめ言葉でしょう)偉い、という言葉にミオがどれだけ救われたことか……! 実は原作ではミオとどろろは会っていないのですが、これは素晴らしいifであったといえるでしょう。

 そして本筋と平行して描かれる、醍醐家の人々の姿も印象に残ります。百鬼丸が体を取り戻していくたびに災いに見舞われる――すなわち醍醐家の運命に翳りが差すという凄まじい設定にも毎回感心させられますが、今回印象に残ったのは、百鬼丸の弟に当たる多宝丸の存在であります。
 初登場時は、我が儘一杯に育ったお坊ちゃんという印象の多宝丸でしたが、今回描かれるのは、母の愛に飢えた繊細な少年の姿。その母もまた、決して多宝丸を愛していないなどということはないのですが――しかしそれがさらにやりきれなさを募らせるのです。

 この先、醍醐家の人々がいかなる運命をたどるのか――それはまだわかりませんがミオのように、そこにはなにがしかの救いがあって欲しいと、心から願う次第です。



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 『どろろ』 第二話「万代の巻」
 『どろろ』 第三話「寿海の巻」
 『どろろ』 第四話「妖刀の巻」
 『どろろ』 第五話「守り子唄の巻・上」

関連サイト
 公式サイト

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