« 許先哲『鏢人 BLADE OF THE GUARDIANS』第2巻 おしゃべりな賞金稼ぎが黙るとき | トップページ | 平谷美樹『百夜・百鬼夜行帖』 第13章の1『百夜の霍乱』 第13章の2『溶けた黄金』 第13章の3『祈りの滝』 »

2019.02.22

『どろろ』 第七話「絡新婦の巻」

 旅の途中、人間を襲っていた妖怪・絡新婦と遭遇し、傷を負わせた百鬼丸。人間に化けてとある村に潜り込んだ絡新婦は、そこで弥二郎という青年に助けられる。一方、彼女を追って村を訪れた百鬼丸とどろろは、村で人攫いが相次ぐと聞き、絡新婦の仕業と確信するが……

 前回の衝撃からか、口が利けるようになっても相変わらず無言の百鬼丸。そんな百鬼丸を何とか笑わせようとするどろろですが、何だか気色悪い笑い声が聞こえてきたと――思えばそれは二人の頭上から、何と巨大な蜘蛛に捕らえられた男が、何か幻覚でも見ているのか笑い声を上げていたのであります。
 すかさず格好良く義手を抜き払い、二本の刃で蜘蛛の妖怪――絡新婦に切りかかる百鬼丸。しかし絡新婦に傷を負わせたものの、相手の吐いた蜘蛛糸に動きを封じられた百鬼丸は逃走を許してしまうのでした。

 その後、近くの村を訪れ、そこで人攫いが相次いでいると聞くどろろと百鬼丸。人攫いに賞金がかけられていると知ったどろろは、さっきの絡新婦が犯人だろうと、百鬼丸に退治をけしかけます。
 一方、当の絡新婦は、美しい人間の女性に変じて村に入り込んだのですが――力尽きて倒れたところを、弥二郎という青年に見つけられ、小屋に案内されるのでした。

 ここは定番通り、弥二郎を騙してその精気を吸おうとする絡新婦ですが、当の弥二郎はいたってマイペース。名前などないという(正直な)絡新婦に対し、おはぎという名前をつけ、自分も腹が減っているというのに彼女に飯を譲り――しかも虫も人間も同じ一個の命と語る弥二郎に、絡新婦はすっかりペースを乱されてしまいます。
 そんな状況とはつゆ知らず、夜通し歩き回ってへとへとのどろろと百鬼丸は、腹を減らしてどくだみの葉を齧る始末……(黙って齧る百鬼丸が妙にかわいい)

 しかし精気を吸えなければ、絡新婦はどんどん弱っていくばかり。その原因も知らず彼女の身を案じる弥二郎は、医者もいないこの村から、彼女を逃がそうとするのですが――しかし山仕事のための人手集めに血眼の土地の兵によって、村は簡単に出入りできない状態にあります。
 しかしそれでも彼女を連れ出すと語る弥二郎。実は彼こそは人攫い――過酷な山仕事から逃れるために村を密かに離れる者を助けるのが、彼の裏の稼業だったのであります。

 しかし折悪しくというべきか、土地の兵、さらにはどろろと百鬼丸に見つかってしまう二人。何とか村からの抜け道まで逃れた二人ですが、兵が放った矢が弥二郎の身に突き刺さり、怒りに燃えた絡新婦は真の姿を見せると、兵たちに襲いかかります。
 そして兵たちを襲って体力を回復し、百鬼丸と死闘を繰り広げる絡新婦。しかし傷ついた弥二郎に寄り添う絡新婦の魂の色が、妖の赤い色から、白い色に変わっていくのを目の当たりにした百鬼丸は二人を見逃し、そして何となく優しい気分になったどろろの耳には、百鬼丸のわずかな笑いが届くのでした。


 ひたすら重かった前回に比べると、色々な意味でユルかった今回。人を襲う妖怪と、そうとは知らぬ人間が恋におちる(厳密には違うのかもしれませんが、まあその直前でしょう)展開から、これは悲劇に違いないと思いきや、百鬼丸に見逃される――という結末自体は、これはこれで面白いのですが、自分の体を持っているかもしれない妖怪を倒して回る百鬼丸にしては、違和感が残る行動ではあります(まあ、体を持っている鬼神は、間違えても魂の色が白にはならないのだとは思いますが)。

 さらに困ってしまうのは、弥二郎がたまたま人も虫も分け隔てなく接する、この時代には極めて奇特な博愛主義者――なのはまあいいとして、絡新婦の方が、実は人間を食わず殺さぬ程度に精気を吸っていました、という設定。
 さすがに人を食って生きる妖怪を百鬼丸が見逃すわけにはいかない――という、都合の良いエクスキューズに見えてしまったのが、何とも残念なところであります。

 もちろん百鬼丸の目を通じて、妖怪も時に人と同じ魂――というより清らかな魂と言うべきでしょうか――を持つ、ということを描き出すのは、これはこれでなかなか良い展開だとは思うのですが。
(これまで、人間の醜い部分をこれでもかと見せられてきただけに……)



関連記事
 『どろろ』 第一話「醍醐の巻」
 『どろろ』 第二話「万代の巻」
 『どろろ』 第三話「寿海の巻」
 『どろろ』 第四話「妖刀の巻」
 『どろろ』 第五話「守り子唄の巻・上」
 『どろろ』 第六話「守り子唄の巻・下」

関連サイト
 公式サイト

|

« 許先哲『鏢人 BLADE OF THE GUARDIANS』第2巻 おしゃべりな賞金稼ぎが黙るとき | トップページ | 平谷美樹『百夜・百鬼夜行帖』 第13章の1『百夜の霍乱』 第13章の2『溶けた黄金』 第13章の3『祈りの滝』 »

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 『どろろ』 第七話「絡新婦の巻」:

« 許先哲『鏢人 BLADE OF THE GUARDIANS』第2巻 おしゃべりな賞金稼ぎが黙るとき | トップページ | 平谷美樹『百夜・百鬼夜行帖』 第13章の1『百夜の霍乱』 第13章の2『溶けた黄金』 第13章の3『祈りの滝』 »