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2019.03.09

『どろろ』 第九話「無残帳の巻」


 旅の途中で熱を出して倒れたどろろ。百鬼丸によって寺に運び込まれたどろろは、そこで自分の両親――農民出身の野伏の頭目だった父・火袋と、その妻・お自夜の最期を思い出す。配下に裏切られても最後まで侍と戦った父と、放浪の末にどろろをかばって倒れた母の姿を……

 百鬼丸と相変わらずの旅を続ける中、熱を出して倒れてしまったどろろ。道行く人にたどたどしく呼びかける百鬼丸ですが、なかなか助けは現れず、途方に暮れていたところに声をかけてくれたのは一人の尼僧でした。寺に運び込まれたどろろはやがて目を覚ますのですが――そこに生けられた曼珠沙華に目を留めるます。曼珠沙華は、母が死んだ時に辺り一面に咲いていた花――どろろは両親の、自分の過去を語り始めます。

 農民出身者ばかりで構成され、侍たちだけを襲うという風変わりな野伏の頭目であった父・火袋と、彼に寄り添う母・お自夜。時に侍の逆襲にあって仲間たちの多くを失いながらも、しかしほどなくして再び前にも劣らぬ数の仲間を集める火袋は、力だけでなく、リーダー性も優れた人物だったのでしょう。
 そんな彼の片腕であり、幼いどろろとも顔馴染みだった男・イタチは、そろそろ侍側について立身出世してはどうかと火袋に勧めるのですが――しかし彼の怒りを買ったのみ。その場は引き下がったイタチですが、こういうタイプは絶対後で何かやらかす……

 という予感通り、密かに武士側に通じたイタチの罠にはめられて仲間の多くを失い、自らも足に無数の矢を受けた火袋。命は助けられたものの、傷ついた身一つとなった彼は、妻と子ともども放浪することになります。そしてその途中、戦の邪魔になると百姓の家に火をつけていた侍と遭遇した火袋。その一人がかつて襲った相手であったことから、彼は侍たちと大立ち回りを演じた末に、相打ちの形で倒れるのでした。

 そしてただ二人放浪することとなったお自夜とどろろ。食う物にも事欠く中(どんどんやつれていくお自夜のビジュアルがキツい)、炊き出しが行われていると聞いた二人は、そこに向かうのですが――炊き出しを行っていたのは、すっかり侍の一人となったイタチでありました。兵を集める勧誘のために炊き出しをやっているというイタチに反発するお自夜ですが、それでもどろろに食事をさせようと、もう器がないというにもかかわらず、煮えたぎった粥を手で受けると、どろろに食べさせます。
 しかしそんな無茶が祟ってついに曼珠沙華が咲き乱れる中に倒れたお自夜。彼女はどろろに、いつか戦は終わる、それまで負けるなと語り、ついに息を引き取るのでした……

 そして体調も元に戻り、再び旅に出るどろろ。そんなどろろに対し、尼僧は「年端もいかぬ女の子を連れての旅はさぞかし難儀でしょう」と心配げな顔を見せます。ん、女の子――? と、しれっと秘密を明かされた上に、着替えやら何やらで、そのことを百鬼丸も知ってしまったと悟ったどろろ。真っ赤になって百鬼丸を追いかけるどろろですが、百鬼丸はいつもながらの鉄面皮で……


 というわけで、今回はほぼ全編を使ってのどろろの過去編&正体(?)バレ回。妖怪変化の類は全く登場せずほぼ完全に普通の時代もの、それもかなり地味で重い内容だったのですが――しかしそれだけに何とも言えぬ後味を残します。
 ここで描かれるものは、この時代の一つのリアル――侍たちの華々しい戦いとは無縁の、庶民(の延長線上に立つ者)たちの姿。もちろんそれはこれまでも一貫して描かれてきたものではありますが、しかしバイタリティの固まりのようなどろろも、そんな時代に翻弄されてきた者の一人だったことを、今回の物語ははっきりと描き出すのです。そして以前、自分たちの田畑を持とうとするミオと子供たちに、何故どろろがあれだけの共感を示したのかも。
 もちろんそこにあるのは悲劇だけでなく、どろろが火袋の反骨と、お自夜の愛を受け継ぐ存在であるということでもあるのですが……

 そして個人的に今回印象に残ったのは、どろろをそんな境遇に落とす原因を作った男・イタチであります。自分の立身出世のために仲間を、火袋たちを売った許すべからざる裏切り者であることは間違いないのですが――その行動の節々には、どこか甘さというか、情のようなものが感じられるイタチ。
 お自夜の軽蔑のまなざしにも、どろろの怒りにも平然と構えるその姿はふてぶてしいというよりどこか達観したものが感じられるのですが――さてこの印象が正しいか、間違いなく今後待ち受けている再登場の時にわかることでしょう。

 しかし百鬼丸は――そもそも性別というものを理解しているのやら。


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