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2019.03.13

『どろろ』 第十話「多宝丸の巻」

 父母が何かを隠していることに苛立つ多宝丸。しかしそのことを尋ねた父に強く撥ね付けられ、傷心のまま遠乗りに出た多宝丸は、湖近くの村で、村人が湖に潜む妖怪の餌食となっていることを知る。妖怪退治を買って出た多宝丸は、妖怪をあと一歩のところまで追い詰めるのだが……

 このところ醍醐領内で相次ぐ天災や兵乱の原因が、地獄堂の魔神たちが次々と倒されていることであると察した醍醐景光。地獄堂で魔神たちに問い糾した彼は、闇の中に朧に浮かぶ百鬼丸の姿を目の当たりにするのでした。一方、そんな父の行動や、首無しの観音像に祈るばかりの母の姿に苛立ちを隠せない多宝丸は、側近の侍・兵庫と陸奥に命じて父の隠密を捕らえ、自白剤を使ってまでその秘密を探ろうとするのですが――辛うじてわかったのは、父が十数年前に生まれた赤子とその産婆を探していたことのみであります。
 しかしそのことを正面から父に問うても、これまで見たことがないような厳しい態度で拒絶されるばかり(それはまあ、お前の兄を生け贄にして、自分とこの地の繁栄を手に入れた、とは言えないわけで)。やり場のない想いに駆られて飛び出した多宝丸ですが、子供の頃から一緒の兵庫と陸奥にはあっさり見つかってしまうのでした。

 と、そんな三人の目に入ってきたのは、醍醐家の侍たちが、とある村の人々に何やら懇願されている姿。侍たちはそれを邪険に押しのけようとするようですが――領主の一族としての責任感に駆られて多宝丸が話を聞いてみれば、湖に巨大な渦が現れては、村人を何人も飲み込んでいるというではありませんか。領民の苦難を見過ごしにはできん、と多宝丸は、尻込みする侍を引き連れて、湖に舟を漕ぎ出します。

 と、突然湖面に現れる渦。事前に湖畔の木に綱を結びつけて備えていた多宝丸たちの舟は踏みとどまったものの、その前に渦の中から出現したのは、巨大な蟹に似た化物――平家蟹の甲羅の口に見える部分が、本当に口になっているといえばいいでしょうか――化物蟹はその巨大な鋏で侍の一人を捕まえて、早速その口で補食しようといたします。
 そこに跳躍一番、切りかかった多宝丸。いくら何でも硬そうな甲羅にそれは無謀では――と思いきや、ばっさりと鋏の一本を両断、なおも蟹にダメージを与えます。どうやらこれまでの剣術自慢も伊達ではなかったようですが、しかし形勢不利と見た蟹は水中に隠れ、舟の下から鋭い足で攻撃をしかけてきます。さすがにこれはこちらが危ういと、陸に撤退する多宝丸でした。

 しかしもちろんこれで退くわけにはいきません。湖を見下ろして考え込んでいた多宝丸は、湖が入り江のような形で区切られているのを見るや、村人や侍たちを指揮して、またたくまに水門を二つ作ると、化物蟹をそこにおびき寄せるのでした。そして湖側の水門を閉め、反対側の水門を開ければ――水はたちまち流れ出し、陸の上に打ち上げられた格好の蟹。そこにとどめをささんと打ち込む多宝丸に、村人たちも大興奮であります。
 しかしあと一歩というところで、鋏で岩を掴んで、閉じた水門に投げつけるというクレバーな行動に出た蟹。多宝丸たちの奮闘むなしく水門は破られ、蟹に逃げられるどころか、多宝丸も押し流されないようにするのがやっとの有様ですが……

 そこにすっかり忘れていた百鬼丸参上! 甲羅の上に飛び乗って腕刀一閃、蟹に止めを刺すのでした。
 彼にとっては見ず知らずの少年に助けられた格好の多宝丸。彼が醍醐の紋の入った守袋を持つことを、そして父が探す赤子の成長した姿であることも知らずに……


 これまで何度か顔を見せてきた百鬼丸の実の弟・多宝丸が完全に主役の今回。よく見ると眉毛とか景光にそっくりな多宝丸ですが(原作とは違い)その性格はむしろ母親似か、真っ直ぐでノーブレスオブリージュを身につけた良い子であります。
 精神性だけでなく、武芸の腕や指導力、カリスマ性と言うことなし、お供の兵庫と陸奥も彼のためなら爆弾背負って蟹の口に特攻する勢いで心酔している多宝丸ですが――そんな彼だからこそ、父の秘密を知り、百鬼丸の存在を知った時、どうなるのか心配にもなります。

 次回、ついに百鬼丸と本格的に対面するらしい多宝丸。ちょうど物語も折り返し地点目前のところで、一体何が起こるのか――重いものが待ち受ける予感がひしひしといたします。

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